うちの幼馴染がデレすぎてて俺の理性はもう限界。でも毎日が最高に甘いからもうどうでもいいや

静内燕

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第3話 ドキドキの急接近と、壊れかけのフィルター💖

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 葵に抱きしめられたまま、俺は身動きが取れずにいた。夕日が部屋の窓から差し込み、プラチナブロンドの髪をオレンジ色に染めている。その髪から漂う甘いシャンプーの香りが、俺の冷静な判断力を奪っていく。

「葵、そろそろ離れろって。苦しいだろ」

 俺は精一杯の冷静さを装って言った。実際は苦しいどころか、心臓が爆発しそうだった。

「やだ! だって、ゆーたの体温、すごく落ち着くんだもん。それに、こうしてくっついてると、ゆーたの心臓の音も聞こえるよ」

 葵は俺の胸に顔をずらすと、かすかに聞こえる俺の心臓の音に耳を傾けている。その仕草は、純粋無垢な子供のようで、反論の余地がなかった。

(落ち着くのは俺の方だよ……こんなに近くに美少女がいるのに、心臓がバクバク言ってるのは俺の方だ……!)

 俺の心臓は、まさに今、葵のデレデレ攻撃によって、通常運転を逸脱している。俺の「幼馴染フィルター」は、もう機能不全を起こし始めていた。

「ねえ、ゆーた」

 葵が顔を上げ、俺のヘーゼルカラーの瞳を真っ直ぐに見つめる。その瞳は、夕日の光を受けて、一層キラキラと輝いていた。

「葵ね、ずっと前から思ってたことがあるんだ」

「なんだよ」

「ゆーたは、葵にとって、世界で一番大切な存在だよ」

 その言葉は、まるで夕焼け空に響く鐘の音のように、俺の心に深く刻まれた。葵の言葉には、一片の嘘偽りもない、純粋な愛情が込められているのが分かった。

「私、ゆーたがいないと、何もできないもん。だから、ずっと、ずっと、ゆーたの隣にいたい」

 葵は、さらに俺の腕にギュッと力を込めた。その言葉は、俺の長年培ってきた「家族愛」という名のフィルターを、完全に破壊するに足るだけの力を持っていた。

(ずっと隣にいたい……それは、もう幼馴染とかそういうレベルの話じゃないだろ!)

 俺の脳裏に、幼い頃の葵の姿がフラッシュバックした。泣き虫で、俺の後ろに隠れてばかりいた小さな葵。それが、いつの間にかこんなにも美しく成長し、そして俺に、こんなにも真っ直ぐな愛情を向けてくれている。

 俺は、葵の頭にそっと手を置いた。プラチナブロンドの柔らかな髪が、俺の指先に触れる。

「……お前なぁ」

 俺は、それ以上言葉を続けることができなかった。

 葵を抱きしめたまま、俺たちはしばらくの時間を過ごした。夕日が沈み、部屋が薄暗くなってきた頃、葵は俺からゆっくりと体を離した。

「あ、もうこんな時間だ……」

 葵は、少し残念そうな顔をしたが、すぐに笑顔を取り戻した。

「ゆーた、今日は来てくれてありがとう! ケーキも美味しく食べてもらえて、葵、すっごく嬉しかった!」

 その笑顔は、まるで、俺の心に直接語りかけるような、そんな温かさを持っていた。

(俺は、今まで、こいつのこんな真っ直ぐな愛情に、どうして気づかなかったんだろう……?)

 俺の心の中で、「幼馴染フィルター」が、完全に音を立てて崩れ去るのを感じた。鈍感だと思っていたのは、俺自身だった。

 帰り道、俺と葵は、いつも通り腕を絡めて歩いた。しかし、俺の心の中は、いつもとは全く違っていた。

 葵の腕が俺の腕に触れるたびに、電流が走ったような感覚がする。プラチナブロンドの髪が、風に揺れて俺の頬をくすぐるたびに、心がざわつく。そして、隣から聞こえる葵の楽しそうな声が、俺の鼓膜を優しく震わせる。

(これが……これが、恋、なのか……?)

 俺は、自分の感情が、幼馴染としての愛情ではないことに、ようやく気づき始めていた。彼女が他の男子生徒と話しているのを見るだけで、胸の奥がチクリと痛む。彼女が笑顔を向けるのは、いつも俺だけであってほしいと、そう願ってしまう。

「ねぇ、ゆーた。今度のお休み、どこに行こうか?」

 葵が、上目遣いで俺に尋ねる。そのヘーゼルカラーの瞳は、期待に満ちて輝いていた。

「葵は、ゆーたと一緒なら、どこでも楽しいもん!」

 その言葉に、俺の心臓は再び大きく鳴った。

(どこでもいい……どこでもいいから、お前と二人きりでいたい)

 俺は、自分の抱き始めた感情に、戸惑いを覚えた。しかし、それは決して嫌な感情ではなかった。むしろ、心の奥底が温かくなるような、そんな優しい感情だった。

「……動物園、とかどうだ? 昔、お前、パンダ見たいって言ってたろ」

 俺がそう言うと、葵の顔がパッと輝いた。

「ほんと!? パンダ! わーい! ゆーた、覚えててくれたんだ!」

 葵は、まるで子供のように跳ね上がると、俺の腕にさらに強く抱きついてきた。

(覚えてるに決まってるだろ。お前が言ったこと、俺は全部覚えてるんだ)

 俺は、心の中でそう呟いた。俺の「幼馴染フィルター」は、もう完全に消滅していた。その代わりに、俺の心の中には、葵への「恋」という、新しい感情が芽生え始めていた。

 家に帰り、自分の部屋に戻っても、俺の頭の中は葵のことでいっぱいだった。机に突っ伏し、今日あった出来事を反芻する。

(俺、葵のこと……好きなのか?)

 改めて、自分の感情と向き合ってみる。

 葵が他の男子と話しているのを見ると嫉妬する。 葵が俺に甘えてくるのは、正直、めちゃくちゃ嬉しい。 葵の笑顔を見るだけで、心が温かくなる。

 ……どう考えても、これは「恋」だ。

 幼馴染という長年の関係性に胡坐をかいて、この感情にずっと蓋をしてきた。だが、もう蓋は完全に吹き飛んでしまった。

(俺は、葵のことが……)

 そこまで考えた時、スマホが震えた。葵からのメッセージだ。

『ゆーた、今日は本当にありがとう! ケーキ、喜んでくれて嬉しかったよ! また一緒に食べようね!』

 そして、その後に添付されていたのは、彼女が焼いたチョコレートケーキの写真と、満面の笑顔でピースサインをする葵自身の自撮り写真だった。

 髪は、入浴後なのか、少し濡れていて、それが彼女の白い肌を際立たせていた。瞳は、スマホのライトを反射してキラキラと輝いている。そして、その笑顔は、まさに天使のそれだった。

(くそっ……俺の心臓、まだ限界超えてなかったのかよ……!)

 俺は、自撮り写真の葵の可愛さに、心臓を鷲掴みにされたような衝撃を受けた。スマホを握りしめたまま、ベッドに倒れ込む。

(もう、無理だ……。俺は、もう「幼馴染」の壁を越えてしまった)

 俺の心の中は恋という感情で、今までになく満たされていた。
 葵は俺にとって、もはや「家族」ではない。

 俺の「唯一無二の」――。
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