27 / 99
第27話 幸せな時間
しおりを挟む
という事で、ご飯とビーフ、ソースを程よくスプーンにのっけて璃緒の前へ。璃緒はご機嫌そうに「いただきます」といってパクっと口にした。仮にも俺が口をつけたものなのに──大丈夫なのかな?
それから、食事を再開。
あっという間に食べ終わってしまった。話は弾まなかったけど、こうして一緒になんだか交際してるみたいだ。カップルみたいな。
それから、デザートのお菓子までついてきた。
サクッとした食感に、ふんわりといちごの香りが漂ってくる。小さいけど、上品な味がする高級品というイメージ。
「そういえば、この後どうする?」
「上野公園を歩きながら、お散歩して色々話すというのはどうですか?」
「ああ、あの公園? いいよ、楽しそう」
散歩か──いろいろ景色を見ながら話せるといいな。
そして、席を立ち会計となる。
璃緒がクレジットカードを出して支払い。本当にご馳走になってしまった。今度、何かで埋め合わせしないとな。
「美味しかったですね、ごちそうさまです」
「いえいえ、気に入っていただいて何よりです」
上野公園を二人で歩く。大都会の中の、物静かな雰囲気の公園。夏休み後という事もあり、土日にもかかわらず人はそこまでいない。時折近所の老人らしき人とすれ違うくらいだ。
蓮が浮いているため池の周りの道を、2人で歩いていく。隣には──璃緒。
ドキドキするな……ずっと黙っているわけにはいかないのはわかってる。気まずいし。
「子供のころ、家族でよくここに来たんです。あっちの湯島星良軒でビーフシチューとかハンバーグあたりを食べて、それからこのため池を散歩したりしていました」
「そ、そ、そうなんですか──」
璃緒は楽しそうにここに来た時の思い出を話す。まずい──こっちが話をして璃緒を楽しませないと。エスコートっていうんだっけ?
「え、え──それで神社にお参りしたり、動物園に行ったり。兄弟でです。今となっては懐かしい思い出です。兄弟たちは──みんな住川グループに入って跡継ぎになるために毎日遅くまで仕事ですから」
「お、お忙しいんですね……」
でも、彼女なんかできたことがない俺にとって何気ない会話というのがとても難しい。
ほとんど会話が続かない──。まあ、友達なんかいなくて学校でも周囲とほとんど話さなかったから当然だよな。いきなり女の子を楽しませるトークなんてできるわけがない。
諦めかけたその時、目の前に手が差し出された。視線を上げると、そこには璃緒の姿。
「手、握りませんか?」
「ああ……いいよ」
恥ずかしそうな璃緒の表情。璃緒の顔が、ほんのりと赤くなってる。こっちも恥ずかしい。
そして、璃緒がぎゅっと手を握ってきた。あれ……握手ってそっち??
指同士を絡めあう、いわゆる「恋人つなぎ」というやつだ。普通の握手に比べて、璃緒の指が当てっている。
なめらかでやわらかい、女の子特有の感触。とても気持ちが良くて、ずっと握っていたいくらいだ。
「じゃあ、今度は私がからすみさんに質問していいですか?」
「い、いいですよ」
「からすみさんは──ネフィリムさんと組む前までは1人だったみたいですとね?」
「ま、まあそうだけど」
「ソロプレイなのは、何か理由でもあるんですか?」
「理由も何も、友達なんていなかったし──だからダンジョンを配信するときも自然と一人だった。いつもボッチだったそれに不自然はなかった」
異世界から帰った時──どこか燃え尽きた感があったな。どうすればいいか考えて、気が付けば一人で潜ってた感じかな。
幼馴染の加奈もいたけど、すでにパーティーを組んでいて入りずらかった。
「そうだったんですか? からすみさんって、正義感が強くて人が良くて、もっと人に好かれるタイプだと思ってたんですよ」
驚いたのか、両手で口を覆って言葉を返してきた。流石に買いかぶりすぎだよ。ずっと友達なんていなかったし。
「そんなことないって、璃緒と違って──好かれるなんてなかったから」
璃緒は──俺と対極ともいえる存在だ。人から好かれて、明るくて、とっても美人。
隣りにいる資格さえ、疑ってしまうほど。
そんな璃緒がこんなに俺のことを評価してくれている。嬉しいんだけど、勘違いされているような気がして恥ずかしい。
璃緒の姿が眩しくて、思わず目をそらしてしまう。俺は──璃緒が思っているような人間じゃないんだ。
そんなことを考えていると、璃緒が俺の前に立った。そして、俺の両手を掴んで顔を近づけてくる。
「みんな、からすみさんの魅力に気づいていないんですよ。私知ってますから、からすみさんがそれだけいい人で──魅力的だっていう事」
強気な表情。そこまで面と言われると、こっちも恥ずかしい。
「あ、ありがとう」
「いっしょに配信して──からすみさんのいいところとか、魅力的なところとかいっぱい伝えますから。安心してください!!」
自信満々の表情。そこまで言われると、答えないわけにはいかない。
「ありがとうございます。その時はよろしくお願いしますね」
それからも、2人で楽しい時間を過ごす。
泣いている子供がいる、迷子かなと思い近づいた。
「大丈夫?」
それから、食事を再開。
あっという間に食べ終わってしまった。話は弾まなかったけど、こうして一緒になんだか交際してるみたいだ。カップルみたいな。
それから、デザートのお菓子までついてきた。
サクッとした食感に、ふんわりといちごの香りが漂ってくる。小さいけど、上品な味がする高級品というイメージ。
「そういえば、この後どうする?」
「上野公園を歩きながら、お散歩して色々話すというのはどうですか?」
「ああ、あの公園? いいよ、楽しそう」
散歩か──いろいろ景色を見ながら話せるといいな。
そして、席を立ち会計となる。
璃緒がクレジットカードを出して支払い。本当にご馳走になってしまった。今度、何かで埋め合わせしないとな。
「美味しかったですね、ごちそうさまです」
「いえいえ、気に入っていただいて何よりです」
上野公園を二人で歩く。大都会の中の、物静かな雰囲気の公園。夏休み後という事もあり、土日にもかかわらず人はそこまでいない。時折近所の老人らしき人とすれ違うくらいだ。
蓮が浮いているため池の周りの道を、2人で歩いていく。隣には──璃緒。
ドキドキするな……ずっと黙っているわけにはいかないのはわかってる。気まずいし。
「子供のころ、家族でよくここに来たんです。あっちの湯島星良軒でビーフシチューとかハンバーグあたりを食べて、それからこのため池を散歩したりしていました」
「そ、そ、そうなんですか──」
璃緒は楽しそうにここに来た時の思い出を話す。まずい──こっちが話をして璃緒を楽しませないと。エスコートっていうんだっけ?
「え、え──それで神社にお参りしたり、動物園に行ったり。兄弟でです。今となっては懐かしい思い出です。兄弟たちは──みんな住川グループに入って跡継ぎになるために毎日遅くまで仕事ですから」
「お、お忙しいんですね……」
でも、彼女なんかできたことがない俺にとって何気ない会話というのがとても難しい。
ほとんど会話が続かない──。まあ、友達なんかいなくて学校でも周囲とほとんど話さなかったから当然だよな。いきなり女の子を楽しませるトークなんてできるわけがない。
諦めかけたその時、目の前に手が差し出された。視線を上げると、そこには璃緒の姿。
「手、握りませんか?」
「ああ……いいよ」
恥ずかしそうな璃緒の表情。璃緒の顔が、ほんのりと赤くなってる。こっちも恥ずかしい。
そして、璃緒がぎゅっと手を握ってきた。あれ……握手ってそっち??
指同士を絡めあう、いわゆる「恋人つなぎ」というやつだ。普通の握手に比べて、璃緒の指が当てっている。
なめらかでやわらかい、女の子特有の感触。とても気持ちが良くて、ずっと握っていたいくらいだ。
「じゃあ、今度は私がからすみさんに質問していいですか?」
「い、いいですよ」
「からすみさんは──ネフィリムさんと組む前までは1人だったみたいですとね?」
「ま、まあそうだけど」
「ソロプレイなのは、何か理由でもあるんですか?」
「理由も何も、友達なんていなかったし──だからダンジョンを配信するときも自然と一人だった。いつもボッチだったそれに不自然はなかった」
異世界から帰った時──どこか燃え尽きた感があったな。どうすればいいか考えて、気が付けば一人で潜ってた感じかな。
幼馴染の加奈もいたけど、すでにパーティーを組んでいて入りずらかった。
「そうだったんですか? からすみさんって、正義感が強くて人が良くて、もっと人に好かれるタイプだと思ってたんですよ」
驚いたのか、両手で口を覆って言葉を返してきた。流石に買いかぶりすぎだよ。ずっと友達なんていなかったし。
「そんなことないって、璃緒と違って──好かれるなんてなかったから」
璃緒は──俺と対極ともいえる存在だ。人から好かれて、明るくて、とっても美人。
隣りにいる資格さえ、疑ってしまうほど。
そんな璃緒がこんなに俺のことを評価してくれている。嬉しいんだけど、勘違いされているような気がして恥ずかしい。
璃緒の姿が眩しくて、思わず目をそらしてしまう。俺は──璃緒が思っているような人間じゃないんだ。
そんなことを考えていると、璃緒が俺の前に立った。そして、俺の両手を掴んで顔を近づけてくる。
「みんな、からすみさんの魅力に気づいていないんですよ。私知ってますから、からすみさんがそれだけいい人で──魅力的だっていう事」
強気な表情。そこまで面と言われると、こっちも恥ずかしい。
「あ、ありがとう」
「いっしょに配信して──からすみさんのいいところとか、魅力的なところとかいっぱい伝えますから。安心してください!!」
自信満々の表情。そこまで言われると、答えないわけにはいかない。
「ありがとうございます。その時はよろしくお願いしますね」
それからも、2人で楽しい時間を過ごす。
泣いている子供がいる、迷子かなと思い近づいた。
「大丈夫?」
21
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる