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さぁ、踊りましょう!
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「なんでもいいけど……ジョージの護衛はウィルがしてくれるのよね?」
「もちろん!俺が乱入するころには、リリーがしてくれるだろ?」
「えっ?」
「ほら、任せてくれって言わないと、姫さんと戦わせないぞ?」
「……わかりました。では、先にウィル様が護衛をお願いします」
んーっと言いながら戻ってくる。私はキョロキョロと見渡し、木剣を探す。
「探し物はこちらですか? お姫様」
茶化しながら、ウィルが渡してくるので睨んで受取った。ジョージの方を見ると、集まった兵たちを見て不安そうだ。
ジョージの背丈に合わせて屈んでニッコリと笑いかける。
「大丈夫だよ。心配しないで」
「でも……」
「大丈夫。よく見ていて」
私は、ゆっくりと立ち上がり、ジョージに背を向ける。そこから、自身でもわかるように気持ちを切り替えた。木剣をひと凪ぎしたあと、集まった兵の方へ歩き始める。
近衛たちは知っている。微笑みかけながら、ゆっくり近づく私に木剣を向けた。何が起こっているのかわからない警備隊に向け、ウィルの隊の誰かが、「抜剣!」と叫ぶ。驚くように私に向かって木剣を構えた。余裕があるのか、また誰かが「展開!」と叫ぶと固まっていた兵たちが動いて持ち場に広がる。半円に取り囲まれる私を呼ぶ声が後ろから聞こえてきた。心配と恐怖だろう。震える声に振り向きもせず、私は姿勢を低く構えた。
「さぁ、踊りましょう!」
一言声をかけた瞬間には、「突撃!」の声に反応した兵たちが私めがけて木剣や木槍で狙ってくる。
久しぶりの実践に思わず口元が緩んでしまう。
……私って、つくづくこちら側の人間だなって思うわ!
執務室で座って執務をこなしていたときのことを思い出しながら、利き足にグッと力を入れて集まってくる兵士の中へと突っ込んでいく。どうなるのか知っている近衛たちは、私が突入した瞬間、後ろへ下がったようだ。
……今回の指揮官はなかなか頭を使う人なのね。公都にいた頃、ウィルの隊はほとんどが突っ込んできていたけど、ちゃんと考えられているわ。
私に群がる兵たちをひらりひらりと躱し、ときおり木剣で突いたりはらったりをしながら、私の回りの兵の意識を刈り取っていく。
「さすがですね?」
聞きなれたリリーの声が聞こえたとき、群がっていた兵たちが一気に広がっていく。足元に倒れていた兵さえも引きずって下がっていくので、その場に残ったのはリリーと私だけになった。
「リリーとは初めてだよね?」
「そうですね。アンナ様が初めてこの地に来た日のことは未だに忘れません」
「飲んだくればかりで、最悪だったわよね?」
「えぇ、そうでした。その内の一人だったので、ぐうの音も出ませんが、あの大男をその細腕で倒してしまった日のことは1日たりとも忘れたことはありませんよ?」
「単純に力押しされれば負けちゃうんだよね。戦い方を知らない人が相手でよかった!」
「……おしゃべりは、ここまでです。あの日以上の高揚をください!」
「それは、無理な話ね!」
その瞬間には、つばぜり合いが始まる。圧倒的に力不足の私は押されていくし、バカな警備隊ではないので、私の逃げ道をどこもかしこも潰していく。
「リリーやるじゃん!」
「……」
「まぁ、俺ほどじゃないけど」
ウィルの話相手にはならないようで、リリーは私から目を話さず、グッと抑え込むように剣に体重をかけてくる。
……いい判断だわ。足を動かせば、私は倒れてしまう。別に構わないけど、それじゃあ、反撃もしにくい。うまくいくかわからないけど……。
剣の切っ先を下に向け、下に滑らせていく。驚いたリリーは慌てて上に引き上げようとするが、私はリリーの剣が緩んだ隙に軽く蹴り、剣の腹を向けた。そこに片足を乗せる。慌てて剣先をあげたいリリーには悪いが、剣をあげるのと同時に私もあげてもらう。私が宙で1回転してから、地面をすぐさま蹴って肩をリリーの腹へぶつけた。
「うぐ……」
「さすがに固いわね!」
後ろに数歩よろけたところで、私はさらに詰め寄って足をひっかける。そのまま後ろに倒れるリリーに剣の柄で思いっきり腹を殴る。女の私では、鍛え抜かれた体躯のリリーを気絶させるのは難しい。さらに剣を足で蹴って取り上げ、首元に切っ先を向けた。どうすることも出来ないリリーは降参するしかないようだ。
「できるやつが一人とは限らないよなぁ?」
そう言って後ろから切りかかってきた人物がいる。今、この訓練場で最強をほしいままにしているだろうウィルだ。
「背中を襲うなんて卑怯だと思わない?」
「それは試合だったらだろう?」
「戦場ではそんな言い訳をしている暇はないってことね!」
ニヤッと笑う様子が雰囲気から伝わってくる。ウィルも本気で戦うつもりなのだろう。私も口角をあげ、振り上げられた木剣を止める。ウィルもどうやら力で私に勝とうとしているようだ。技術が互角なら、単純に力で相対すれば、負けは必須。
それをわかっているような雰囲気を出しているウィルには、次の手を見抜いているのかもしれない。
私はウィルの剣を流して、まともに切り合わないようする。向こうの思惑とは違うが、私の行動も予想済みのようで、早いながらも重い攻撃を私にしてきた。
スカートが邪魔ね!
私はウィルと距離を取り、スカートの裾を太腿のあたりまで切り裂く。
これなら、もう少しだけ早く動けるようになるわ!
窮屈だったスカートの枷がなくなった今、ウィルと距離をあけ、次の一手をお互い頭の中で考えた。
「もちろん!俺が乱入するころには、リリーがしてくれるだろ?」
「えっ?」
「ほら、任せてくれって言わないと、姫さんと戦わせないぞ?」
「……わかりました。では、先にウィル様が護衛をお願いします」
んーっと言いながら戻ってくる。私はキョロキョロと見渡し、木剣を探す。
「探し物はこちらですか? お姫様」
茶化しながら、ウィルが渡してくるので睨んで受取った。ジョージの方を見ると、集まった兵たちを見て不安そうだ。
ジョージの背丈に合わせて屈んでニッコリと笑いかける。
「大丈夫だよ。心配しないで」
「でも……」
「大丈夫。よく見ていて」
私は、ゆっくりと立ち上がり、ジョージに背を向ける。そこから、自身でもわかるように気持ちを切り替えた。木剣をひと凪ぎしたあと、集まった兵の方へ歩き始める。
近衛たちは知っている。微笑みかけながら、ゆっくり近づく私に木剣を向けた。何が起こっているのかわからない警備隊に向け、ウィルの隊の誰かが、「抜剣!」と叫ぶ。驚くように私に向かって木剣を構えた。余裕があるのか、また誰かが「展開!」と叫ぶと固まっていた兵たちが動いて持ち場に広がる。半円に取り囲まれる私を呼ぶ声が後ろから聞こえてきた。心配と恐怖だろう。震える声に振り向きもせず、私は姿勢を低く構えた。
「さぁ、踊りましょう!」
一言声をかけた瞬間には、「突撃!」の声に反応した兵たちが私めがけて木剣や木槍で狙ってくる。
久しぶりの実践に思わず口元が緩んでしまう。
……私って、つくづくこちら側の人間だなって思うわ!
執務室で座って執務をこなしていたときのことを思い出しながら、利き足にグッと力を入れて集まってくる兵士の中へと突っ込んでいく。どうなるのか知っている近衛たちは、私が突入した瞬間、後ろへ下がったようだ。
……今回の指揮官はなかなか頭を使う人なのね。公都にいた頃、ウィルの隊はほとんどが突っ込んできていたけど、ちゃんと考えられているわ。
私に群がる兵たちをひらりひらりと躱し、ときおり木剣で突いたりはらったりをしながら、私の回りの兵の意識を刈り取っていく。
「さすがですね?」
聞きなれたリリーの声が聞こえたとき、群がっていた兵たちが一気に広がっていく。足元に倒れていた兵さえも引きずって下がっていくので、その場に残ったのはリリーと私だけになった。
「リリーとは初めてだよね?」
「そうですね。アンナ様が初めてこの地に来た日のことは未だに忘れません」
「飲んだくればかりで、最悪だったわよね?」
「えぇ、そうでした。その内の一人だったので、ぐうの音も出ませんが、あの大男をその細腕で倒してしまった日のことは1日たりとも忘れたことはありませんよ?」
「単純に力押しされれば負けちゃうんだよね。戦い方を知らない人が相手でよかった!」
「……おしゃべりは、ここまでです。あの日以上の高揚をください!」
「それは、無理な話ね!」
その瞬間には、つばぜり合いが始まる。圧倒的に力不足の私は押されていくし、バカな警備隊ではないので、私の逃げ道をどこもかしこも潰していく。
「リリーやるじゃん!」
「……」
「まぁ、俺ほどじゃないけど」
ウィルの話相手にはならないようで、リリーは私から目を話さず、グッと抑え込むように剣に体重をかけてくる。
……いい判断だわ。足を動かせば、私は倒れてしまう。別に構わないけど、それじゃあ、反撃もしにくい。うまくいくかわからないけど……。
剣の切っ先を下に向け、下に滑らせていく。驚いたリリーは慌てて上に引き上げようとするが、私はリリーの剣が緩んだ隙に軽く蹴り、剣の腹を向けた。そこに片足を乗せる。慌てて剣先をあげたいリリーには悪いが、剣をあげるのと同時に私もあげてもらう。私が宙で1回転してから、地面をすぐさま蹴って肩をリリーの腹へぶつけた。
「うぐ……」
「さすがに固いわね!」
後ろに数歩よろけたところで、私はさらに詰め寄って足をひっかける。そのまま後ろに倒れるリリーに剣の柄で思いっきり腹を殴る。女の私では、鍛え抜かれた体躯のリリーを気絶させるのは難しい。さらに剣を足で蹴って取り上げ、首元に切っ先を向けた。どうすることも出来ないリリーは降参するしかないようだ。
「できるやつが一人とは限らないよなぁ?」
そう言って後ろから切りかかってきた人物がいる。今、この訓練場で最強をほしいままにしているだろうウィルだ。
「背中を襲うなんて卑怯だと思わない?」
「それは試合だったらだろう?」
「戦場ではそんな言い訳をしている暇はないってことね!」
ニヤッと笑う様子が雰囲気から伝わってくる。ウィルも本気で戦うつもりなのだろう。私も口角をあげ、振り上げられた木剣を止める。ウィルもどうやら力で私に勝とうとしているようだ。技術が互角なら、単純に力で相対すれば、負けは必須。
それをわかっているような雰囲気を出しているウィルには、次の手を見抜いているのかもしれない。
私はウィルの剣を流して、まともに切り合わないようする。向こうの思惑とは違うが、私の行動も予想済みのようで、早いながらも重い攻撃を私にしてきた。
スカートが邪魔ね!
私はウィルと距離を取り、スカートの裾を太腿のあたりまで切り裂く。
これなら、もう少しだけ早く動けるようになるわ!
窮屈だったスカートの枷がなくなった今、ウィルと距離をあけ、次の一手をお互い頭の中で考えた。
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