転生竜と賢者の石な少年

ツワ木とろ

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1章

【8】パルイ村

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「このままだと着く頃には真っ暗ね」

 既にだいぶ急いで走らせてると思われる衝撃とスピード。

 亡くなった方々を埋葬し、倒れた馬車から大事な物と少々の食料を積み直してからその場を離れた。
 埋葬と言っても直ぐ掘り返してちゃんとした墓地に埋葬し直すからって事で、浅めに土を掘って虫が着かないように布にくるんで埋めてた。
 なんでも、埋葬には魔法もスキルも使わないのが礼儀らしくって持ち合わせのシャベル2本で掘ってたからそれなりな時間が掛かってしまった。

「もっと急いだ方がいいな。日没には着きたい。リネット頼む」
「了解」

 セドリックに言われ、荷台のリネットが床に手を着ける。

「あ、いけない。 ロジバールさん、ルーシ、これからスキル使うからスッゴく馬車が弾むわよ」
「壊れてしまいそうな物はこの箱の中にしまって下さい」
 ニコラが木箱の蓋をあける。
ポーションの入った小瓶と藁が入っている。

「私はこれだけお願い致します」

 ロジバールさんが託したのは煙草の箱を2つ重ねた位の大きさの上等な箱が2つ。

「それじゃぁ、しっかり掴まっててね」

 リネットが再度床に手を着くと馬車速度が爆上がりした。
 たしか、触れた物を軽くするスキルだったわね。
 弾むって表現は的を射ている。揺れるってもんじゃないわ。
 みんな必死にしがみついてて、よく振り落とされなかったと思うし、馬車旅に慣れてるからってよく酔わなかったと思う。

 とんでもない揺れを我慢したお陰で、日没直後のうっすら明るい間に村に到着する事が出来た。
 入り口で馬車を停めると村人が集まって来くる。

「この前の冒険者さんか。どうしたんだ?」

 口ひげを蓄えたガタイの良い、青年団長みたいな男が声を掛けてきた。
 もうスピードで馬車が駆けつければ、何かあった事くらいは察するわよね。

「一旦降りるから、ナナチャの首にこれ巻いて」

 渡されたのは短い縄。
 首輪しろってのね。わかったわ。

「15キロ程先でモンスターの群れに遭遇しました」

 馬車を降りてセドリックは声を張った。
 村人たちはどよめいてる‥‥喜んでる?

「やったぁ!」
「これで村も潤うぞ」

 モンスターが歓迎されるなんて不思議ね。セドリック達はそんな素振り見せなかったのに。

「喜ぶにはまだ早いです!」

 よりいっそう声を張った。

「皆さんはダンジョンの周囲何キロまでモンスターが徘徊するかご存知ですか?」

 誰も答えない。

「平均10キロだと言われています」
「15キロ先だったんだろ?じゃぁ大丈夫じゃないか」
「俺達はモンスターを見たのであって、ダンジョンを確認した訳ではありません。もし遭遇した所が領域の端だったとしたら、パルイ村は圏内に入ります」

 なるほど、半径10キロって事ね。
 あのコボルトが村に来たらパニックになるわね。

「ギルドには報告済みなので、3、4日で兵隊が来るでしょうが、それまでに襲われない様に夜通し警戒する事をおすすめします!」

 村人はやっとざわついた。

「無駄になる可能性は?」

 団長は組んでる腕を上下組み換えた。

「あります。圏外かもしれませんが、俺は今回のダンジョン領域は15キロあってもおかしくないと思ってます」
「何でそう思うんだ?」
「通常、ダンジョン外に現れるモンスターはゴブリンです。それは、1番弱い種類が追いやられてるからだと言われています。それが、今回はコボルトでした。という事は強力なダンジョンが出現したのだと考えられ、その場合領域が平均以上あってもおかしくありません」
「ゴブリンとコボルトのどっちが強いかなんて俺たちにゃわかんねぇし、何せ喋り方が堅苦しくて難しい。もっと簡単に説明してくれ。」
「‥‥経験と勘です」
「お前の信頼度は?」
「Eランクから始めたパーティーがAランクになるまで戦って来た事でしょうか」
「‥‥ん、わかった。」

 結局最後は心意気?
 男の会話って感じで好きよ。アタシはそういうの。

「冒険者なんだったら、お前達が守ってくれないのかよ」

 群がってるどっかからの発言。誰が喋ったのかわからない。
 どこにでもそういう男らしくない奴は居るのね。

「それは依頼かしら?」

 ヴィオラが言った。
彼女、そういう男、嫌いそう。

「わたし達は依頼の遂行中なの。今受けている依頼が最優先だし、この村を守るのを生業にしてる訳じゃない。立ち寄って知らせてる事自体只の善意よ。あなた達の村でしょ?自分達で守るって気迫見せなさいよ。その方が断然カッコいいわ」

 スタイル良くて、美人なのに幼さの残る顔をした若い娘。ヴィオラって絶対男受けいいわよね。
 そんな女にイラっとさせられた後に発破掛けられて、尚且カッコいいとか言われたら、みんな鼓舞されちゃうわ。
 男って単純。
 女性陣には響いて無いっぽいけど。

「馬を休ませたいので、今晩滞在させて下さい。その間は我々も警備に協力します」
「おう、ありがとう。また村長宅に泊まってもらう事になると思う。おれも着いてくから、もう一度村長に話してもらいたい」
「儂ならここに居るよ」

 おばあちゃんが現れた。
 足が丈夫なのね、腰がひん曲がってるのに杖は使ってない。

「話は聞いてたよ。儂の家で休むといいさ。人数が増えてるね。夕食は孫に手伝って貰うかね」

 口調はキリッとしてるのに、柔らかい雰囲気のおばあちゃんだ。

 村全体平屋で、村長の家が1番大きそう。
 入ると間取りの大半が居間だった。
集会場も兼ねてるみたい。

「知らせてくれてありがとね」

 村長が囲炉裏で沸かしたお湯でお茶を淹れてくれてる。

「先日お世話になりましたから」
「世話はしたが、対価を頂いたからねぇ。恩を着る必要はないて」

 玄関入ったら土間で奥が台所。お孫さんが料理している背中が見える。

「若い連中は浮かれとるが、お主らはどう思う?」
「今回のダンジョンは調査次第ですが、危険なダンジョンだとなると封印されると思います」
「封印にはどれくらい時間がかかるんだい?」
「規模によりますが、1ヶ月から1年位でしょうか」

 淹れてくれたお茶は烏龍茶みたいな色をしている。
 村長がお茶をすすったのでセドリックは一呼吸入れてから話を続けた。

「その間は人の往来が増えるでしょうが」
「その後は閑古鳥が鳴くねぇ」
「‥‥はい」
「もし、この村が領域ってのの中にあるのだとしたら?」
「封印されるまで避難するか、村を移すかになると思います」
「裕福な村じゃ無いからどちらも難儀だねぇ」

 村長がため息を付く。

「お主達に依頼したいのじゃが、兵隊が来るまでの間の警護を。
報酬は相談なんじゃが」
「‥‥実は今護衛の依頼を受けてまして、依頼主を危険にさらす訳にはいかないのです」
「そんはそうじゃのう。無理強いも出来んて」

 セドリックの視線で村長は誰が護衛対象なのか察したみたい。

「私の事は気にしないで下さい。緊急事態ですし。身を守る術は持ち合わせてますので」
「‥‥分かりました。みんな受けてもいいかい?」

 セドリックが見渡すとみんな頷いた。

「交渉も任せるわ」

 ニコラが言う。

「では、お引き受けするに当たって条件と報酬についてお話したいのですが」

 セドリックが村長に向き直って話を進める。

「ああ、そうじゃね。聞かせておくれ」

 村長がちょっと身構えた様に感じた。

「警護にあたるのは4人。それを二手に分けて交代で休息を取りながら行いたいです」
「ああ。それでいいよ。いざと言う時、全員寝不足じゃもともこもないしのぉ」
「はい。で、報酬の方ですが」

 村長がさっきよりも身構える。足下見られるかも知れないものね。

「滞在中の宿と食事を賄って頂きたいのと、もしモンスター現れてそれを退治した場合、魔石は回収させて下さい」

 村長の顔が拍子抜けしてる。

「‥‥そんなんで良いのかい?」
「はい。何も起こらなければ毎食ご馳走して頂くだけになりますから。妥当だと思います。」
「それはありがたい。正直、吹っ掛けられる事も覚悟してたからねぇ」
「でしたらお願いしたい事があるんですけど‥‥」

 リネットが割り込む。

「なんじゃい?聞いてから決めるで構わないかい?」
「はい。有ればで構わないんですが、この子の着る服と靴をお下がりして頂けませんか?」

 ルーシの肩に手を置く。

「それなら孫のお古があるじゃろうて。持って越させよう」
「ありがとうございます」

 ローブの下は今だにすっぽんぽんだもんね。
 リネット、ナイス。

「ついでにもう一つ良いですか?」

 今度はヴィオラ。

「それも聞いてからでいいかい?」
「リュックを下さい。このウサギが入る位のを」

 アタシ? 鳥籠の次はリュックに入れられるの?

「ああいいよ。服と一緒に持って越させよう」

 たしかにリュックに入ってれば翼隠れてじろじろ見られないわね。
頭は出してれば退屈しないだろうし、何よりかわいいかも。

「後出ししてごめんなさい」
「なんの。それでも安価じゃよ」

 村長が頭を下げる。

「それでは成立と言う事で、食事を頂いてから開始します。まずは俺とニコラ。日が登ったら交代。リネットは空から見廻る様にしてくれ。後は6時間交代を基本にリネットがなるべく日中になる様に俺と調整しよう」

 夜は空から見回らないのね。暗いもんね。
 そしたらアタシも参加しようかしら。夜目効くし。

   「ルーシ、伝えてくれる?」
「ナナチャもやるって。暗くても見えるから夜飛ぶって」
「それだと助かるな。リネットと交代で頼む」
「うん」
   「なんかあったら起こすから、ルーシは寝ててね」
   「うん。頑張ってね」
「それじゃぁ、夕食頂こうか」

 芋とスープとピクルス。質素だけど美味しい屋内ご飯。
 これからもこう言う食事をルーシにさせてあげたいわね。
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