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1章
【12】王都到着
しおりを挟むマディナから王都までの道のりは馬車の往来が頻繁に有るから道も広いし、ブロックで整備されてて今までで1番快適だった。
行き交う人の中には人相の悪い輩も居るには居たので警戒する時もあったけど、何事もなく無事に王都に到着した。
遠くからでも存在感があるのは、さすが王都って感じね。
二等辺三角形を寝かせた様な形の山を切り出して建てられた都らしくって、5メールはある街壁よりも上に城壁や町並みが見える。
こっちからでは分からないけど、城より北側はもっと急勾配らしいわ。
目測だけど、奥行き500メートルの大堀が王都全体を囲んでて、100メートル幅の石橋が掛かってる。そんなおっきな橋が9本あるらしい。
橋を渡って1キロでやっと門にたどり着く。
その辺りまでは小麦畑や風車が多く見られた。
ロジバールさんの通行証で難なく南門から入って、大通りを真っ直ぐ北に進む。
きつくはないけどずっと上り坂。
通りには商店が多く並んでいて、食材扱ってるお店は日持ちするようなものばかりならんですわ。
どんどん坂を登ると品揃えも変わってくる。
果物とか生野菜とか増えて、値段も上がって来たなぁと思った頃、中央広場に着いた。
「あれが王都中央教会よ。もしかしたら今後行くかも知れないわね」
だだっ広い広場の北側をニコラは指差している。
マディナの教会とはだいぶ毛色が違っている。
これぞ由緒正しき教会って感じ。
正面に2棟の搭が建ってて、奥は見える限りの憶測だけど、縦に長く延びてて先に円形の建物が在るんだと思うわ。
飛んでみればすぐ分かるんだけど、街中を飛び回るのは基本禁止みたい。
アタシは見た目獣だから関係ないだろうけど、逆に問答無用で攻撃されそうだから飛ぶのは辞めとく。
広場から西に4キロ位行くと100メートル幅の川がある。
その側にギルドがあるんだけど、
「先にロジバールさんを送ってからまた来よう」
とのこと。
木造3階建。ちょっとだけ奥行の方が長い四角形をしている。
とりあえず、また来るから後で観察しましょ。
川を越えて更に西に進むと、また広場に着いた。
さっきより小さな広場。ここが西町公園ね。
「ここからは案内致します」
そう言ってロジバールさんがヴィオラと席を代わった。
公園の北東にある広めの道を行く。
「この先は道幅が狭くなってますので、お気をつけ下さい。」
馬車がギリギリすれ違えるかって幅の南西に延びてる小道に入る。
さっきの川に近づいてってるけど。通りやすい道を選んで遠回りしたのかしら。
「着きました。ここでございます」
まぁなんて立派なお屋敷。門から玄関まで30メートルはあるわ。
「ありがとうございました。この証書を出せば報酬を受け取れる手はずになっております」
セドリックに横形の封筒を渡して、ロジバールさんは馬車を降りた。
「不謹慎ではございますが、楽しい旅路でございました」
「こちらこそ。良くしていただいて、ありがとうございました」
みんな馬車から降りて挨拶する。
「もし宜しければ中にお招きしたいのでお待ち頂けますか?主人の許可を取って参ります」
「お気遣いなく。ギルドに向かうので、こちらで失礼します」
「そうですか、かしこまりました。南に少し行くと右に別れ道がございます。その道を進めば先程の通りに出ますので。そちらが1番広い道かと存じます」
「分かりました。その道で行こうと思います」
「ロジバール!!」
セドリックとロジバールさんが握手して、そろそろ頃合いねって時に玄関から大声がした。
見ると、金髪サラサラロングヘアーを波立たせ、全速力で少女が向かってくる。
「お嬢様!危ないですよ」
その後ろをモスグリーンな髪を編んで纏めてる、ザ・メイドって女性が追う。
エプロンの腰ひもがやけに長くてヒラヒラしてる。
「おお、お嬢様」
勢い良く抱きついて来た少女をロジバールさんは優しく受け止める。
「只今帰りました」
「ロジィ、お帰りなさい。心配してたのよ。危険な目に会ったとか」
「お嬢様の耳にも入っていましたか。でも、大丈夫でございました。こちらの方々が助けて下さったので」
「そうでしたの。皆様、ありがとうございます」
「こちらは当家のご息女、テルティア様にございます」
ロジバールは順々にみんなをそのテルティアお嬢様に紹介していく。
「あ、ウサギ」
「そちらはルーシ殿と従魔のナナチャにございます」
「可愛い。ルーシちゃん、撫でてもいい?」
「うん」
「ルーシ殿は先日受紋を終えたそうなので、お嬢様よりほんの少しお兄さんになりますよ」
「え‥‥ そうなんだ」
見えないって顔してる。
年上に?それとも男の子に?
「ロジバール、帰ったんだね。」
また玄関から声がする。
今度は金髪美青年と、黒髪美少年。それに茶髪の太っちょだ。
歩いて向かってくる。
美青年と美少年は身なりからしてテルティアの家族かな。
茶髪太っちょは執事っぽいスーツ。
襟や袖から体毛が溢れ出してる。
30才位の温厚そうと言うかノロマっぽい顔してるけど、アタシのウサギとしての勘がなんだか危険と言っているわ。
「お帰り」
「ガイウス様。只今帰りました。お迎え痛み入ります」
「我が家の大事なロジィが1ヶ月ぶりに帰って来たんだ、出迎えもするさ」
ガイウスって人、口調が軽いし、ジェスチャーが大きい。
若く見えるけど、笑顔で浮き彫りになる小じわが以外と歳行ってそう。
「そちらは手紙にあった方々かい?」
「左様でございます」
「皆さん、ウチのロジバールを救って下さってありがとうございます。
僕はガイウス・サンペリエと申します」
ガイウスさんの名字を聞いた途端、みんなの背筋が伸びた。
「公爵様であらせられますか?」
「そうですが、畏まらないで下さい。この屋敷に滞在中は公爵ではなく商人ですので、忌憚なく接して下さい」
そう言えば、この国、『サンペリエ王国』って名前だって言ってたっけ。
王族じゃないの。そりゃ畏まるわよ。
「ふん。どうせ恩賞目的で助けたんだろ」
「こらカシウス!口を慎みなさい。申し訳ありません。息子は今、反抗期みたいで」
黒髪美少年はカシウスって言うのね。
反抗期ねぇ、確かにひねくれた悪ガキって感じがするわね。
あ、子供好きのリネットのスイッチが入ったみたい。
「カシウス君て言うの?」
カシウスの前に立って顔を覗き込む。
「何だよお前‥‥」
身長は同じくらい。リネット方がちょっと高いかな。
「私はリネット。よろしくね。初対面でこんな事言うのは失礼だけど、君も失礼だったからいいよね?」
リネットは優しい表情で、めちゃめちゃ面と向かってる。
「憎まれ口は誰も得しないよ?君もね。そんな口叩いてると男がすたるわよ?」
カシウスの方が目をそらしちゃってる。
「‥‥悪かったよ」
「うん。やっぱり素直でいい子だった」
彼も彼女の包容力に遣られた系ね。リネットのその力は羨ましいわ。
ガイウスさんは息子が若干素直に謝ってるを見て、目を見張ってる。
「ふふふ。ホント可愛い。」
なんだかんだずっとアタシを撫でてるテルティア。
リュックインしてるのがツボらしい。
リュックに入ってると只のウサギにしか見えないしね。
「ねぇ、お父様」
「なんだい?テルティア」
「皆さんを今夜、食事に招待して下さらない?」
「それは良いね。お礼を兼ねて。皆さんどうですか?」
アタシなら偉い人との食事なんて食べた気しないから遠慮しちゃうな。
「お気持ちは嬉しいのですが、この後ギルドにルーシを送るので」
「今日、ルーシともお別れなんですよ」
そうよね。アタシ達もお別れなのよね。
「ルーシ君はお仲間じゃないのですか?」
「ルーシを送る途中でロジバールさんと出会ったんです」
「そうなんだ‥‥ ルーシ君はこの後どこかに行ってしまわれるの?」
「ワタシ共には分かりません。ルーシにも分からないわ。なにせギルドに行ってみないと」
「どうして?」
「テルティア、人には言えない、言いたくない事もあるんだよ。特に仕事がらみだと守秘義務があったりするんだから。むやみに疑問を投げつけない様にしなさい」
テルティアが黙る。よく言われるのかしら。『私、気になります』ッ娘なんでしょうね。
「ガイウス様、ギルド長様に明日までルーシ殿を皆様と居られる様、計らって頂けませんでしょうか」
ロジバールさんが提案する。
「それは良いね。直ぐに使いを出そう」
口調もそうだけど、腰も軽そうようね。
「そうなったら私達も嬉しいです」
「僕に命令されたんじゃ、あの人苦虫をかじったみたいな顔するぞ。」
ガイウスがいたずらっ子な笑みをする。
「では、後程伺います」
「その馬車ではこの辺の道は狭いでしょう。ウチから迎えを出しますよ。」
セドリック達の馬車って馬2頭で引く仕様だからおっきめなのよね。
「ありがとうございます。それでしたら、宿が東町公園に近いので、そちらでお願いします」
「畏まりました。私がお迎えに参ります」
「ナナチャ、また後でね」
彼女、そんなにアタシの事気に入ったのかしら?
出来たらガイウスさんとカシウスにもナゼナゼして貰いたいなぁ。
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