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1章
【27】装備を揃えましょう
しおりを挟む平日の稽古。変わったのは、午後に槍の練習が追加されたのと、夕方にテルティアと共にカシウスも参加するようになった。
ルーシに敵わないのが悔しいのかロジィさんを独占して練習してる。
アタシはと言うと、ニコラなしで火ィ吹くの危ない、従魔は主人に攻撃出来ないって通説があるらしいからルーシとも稽古できない。
まぁ、出来たとしてもルーシと戦いたくわないけど。
ルーシとアタシを交互に相手してたらロジィさんだけ疲弊しちゃうから、アタシは平日おやすみ。よしよし。
休日、前回よりもセド達は早く遣ってきた。
午後イチで街に出るために昼食を一緒にしたいらしい。
今後はもっと早く来て午前から参加しようかって話してる。
「何処のお店に行くか決めてらっしゃるのですか?」
とセド。
「カタスティマ・ジューイットに行こうと思います」
「おお、それは楽しみです」
冒険者達、特にセドが食いついた。
「有名なの?」
とテルティア。
「有名もなにも、ジューイットと言えば希代の名工アルベリヒ・ジューイットから続く名工だよ」
「へぇ」
「貴族御用達で敷居が高くってね。値も張るって話だからワタシ達みたいな冒険者じゃ寄り付けないお店よ」
「そうでもないと思うよ。店主は気さくな女性だし、オーダーメードでなければ兵士でも手の届く位の値段だよ。ねぇ、ロジィ」
「そうですね。防具の既製品は少ないですが、武器なら色々揃っておりますし、当代は腕も優れておりますよ」
「それは楽しみですね」
カタスティマ・ジューイットは中央広場の北側にあるらしい。
そこまで、ガイウス邸の馬車2台とセド達の馬車で向かう。
到着まで時間があるので、
「テルティアが羨ましいがるといけないから彼女の前では自重してね」
そんな前置きからニコラの魔法講習が始まった。
「魔法ってただ、精霊にこんな事したいってお願いしているだけなの。その対価が魔力なのね」
見た感じだとお願いしている素振りはないけどなぁ。
「体力と同じで、魔力も減ると疲れが出るのだけれど、ちょっと分かりにくいのよね。なまじ体力と気力が残ってると無理してるのも分からず枯渇して、最悪死ぬ事もあるから、違和感を感じたら直ぐに使用を中止しなさいね」
結構リスキーね。だからみんな使わないのかしら。
「ルーシの適性が低かったのは魔力が少ないって事だから、気を付けないとすぐに枯渇してしまうわ」
大それた魔法も使おうと思えば使えるけど、キャパオーバーな事したら即死って思っておいた方がいいらしい。
「で、魔力も大事だけど、絶対的に必要なのは想像力ね。生み出したいモノをはっきりイメージ出来ないと精霊は何もしてくれないわ。見てて」
ニコラは右の人差し指を立てた。
「プアトシャハリアライェティドルタクヒルイブラクラジャイグニス『ライト』」
指先に明かりが灯る。
「こんな感じ。この魔法はあまり魔力を必要としないけど、灯っている間ずっと魔力を消費するから、必要なければ消すようにしなさい。消す時は念じれば消えるわ」
明かりが消えた。
呪文は精霊語ってので「お願いイグニス『ライト』」って言ってるんだって。イグニスは光の精霊の名前。
厳密には「魔力を対価に想像を具現願う」みたいなセリフらしいけど、どんな時でもセリフは一緒だから翻訳覚えてなくったって問題ないらしい。
『ライト』は術名と言うより、合図でしかないから自分がイメージしやすければなんだっていい。『ファイヤー』って言って水だす事も可能。ただ、水を想像しながら水の精霊にお願いして『ファイヤー』って言うのもややこしくない?こんがらかったら作動しないしって感じみたいね。
「やってみて」
檻の中に居た時から見ては居たもの、武器とかよりも断然馴染みがある。
そんなもの、覚えの良いルーシが真似できないはずもないと。
ルーシが教わったのは明かりを灯すのと、マッチ位の火を着けるのと、コップに水を溜める魔法の3つ。
言うところの生活魔法ってヤツ。
暑い時に風吹かせたり、氷で冷やしたりとかもあるけど、時間がないのと魔力量が心配だからって後々ねって事になった。
光がイグニスで、火がサラマンデルで、水がニンフ。
全部精霊って言ってたけど、妖精ってのも居るんじゃなかったっけ。
「妖精は教えてくれないの?ってナナチャが言ってるけど」
「妖精は教えないわ」
ニコラがちょっと強めに言う。
「妖精って一般的には悪魔って呼ばれているのね。それは優しい振りして魔力を吸い取って行くからなの」
精霊より曖昧な想像でも具現化してくれて、見た目以上の威力も備えてくれるけど、その分対価も多いんですって。
しかも呪文が精霊の時とちょっと違って、それを少しでも間違えると調子に乗って対価以上の魔力を持ってくらしい。
例えば、さっきの『ライト』位の魔法でも一瞬で即死レベルに枯渇したりもあるとか。
「見てみたいな」
ルーシがボソッと言う。
「ダメよ。見たら遣りたくなるでしょ。あなたなら見ただけで遣れて仕舞うだろうから」
ルーシならそうね。じっくり見れば誰でも出来そうな節あるし。
見せる事で想像しやすくなるのはどの子も一緒で、親がそうやって教えるのが一般的だそう。
ルーシには親が居ないからそういう事言って欲しくなかったのだけれど、まぁ、裕福だったり高貴な家では講師をつけるのが常識らしいから、ルーシは高貴な存在だからって事にしとこうかしら。
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