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2章
【52】カシウスの受紋
しおりを挟む涼しい季節に入った頃、カシウスの誕生会が行われた。
貴族界隈では、受紋の前に祝うのが恒例。
下手な加護授かっちゃったら、お祝い気分じゃなくなっちゃうからって配慮らしいわ。
テルティアの時は休日の間に受紋だったから2日連続で祝ったけど、カシウスの場合は一週間前に開催して、平日最終日の夜に加護を授かる。
「ルー兄も居てよ‥‥」
カシウスがテルティアと同じ様にガイウスさんからプレゼントされた、カナリア石のペンダントをいじりながら言う。
不安なのが恥ずかしいのね。
「それはいいね」
ガイウスさんも賛成する。
「それなら夕方までに帰って来て、ルーシを送り届けますね」
とセド。
「いや、翌日パーティーに出席して頂くから、皆さんも泊まって行けばいいよ」
受紋は家族が付き添うのが定番だから、みんなちょっと遠慮気味だ。
「カシウス、いいよね?」
「うん。リネット達も居てよ」
「2人がいいのなら俺達も同伴させて頂きます」
「‥‥」
ニコラが内心ワクワクしてるのが分かっちゃう。
なんだかんだ、もう1年も一緒に行動してるものね。
当日、真夜中間近。受紋まで後わずか。
みんなでリビングに集まり、その時を待つ。
カシウスはソファの真ん中に座り、左右にテルティアとルーシ。
大人は各々椅子に座ってる。
「ビビってるの?」
「そんな事ないし!」
テルティアに茶化されカシウスが声をあげる。
ビビってるわね。
上に兄弟が居る子は幼い頃に見てるから恐怖心が芽生えてしまうとか。
「そろそろね」
リネットがソファの後ろに回りカシウスを抱きしめる。
「怖くないからね。すぐ終わるよ」
「うぅぅぅぐっ‥‥ くはっ!」
カシウスが唸り出す。
ルーシの時もそうだったけど、徐々にってのがない。
一気にメーター振り切った痛みが来るみたい。
カシウスが首に回されたリネットの腕を握りしめる。
「あぁぁぁ!」
強く握られてるんでしょう、リネットの顔も痛みに耐えてる。
テルティアとルーシには体を擦ってあげる位しか出来ない。
当人以外誰しもがそう。
「大丈夫よ。もうすぐだからね」
カシウスの両手の甲が光り出す。
「両手‥‥ 『二つ持ち』」
ニコラが呟く。
光が消えるのと連動する様にカシウスも落ち着いた。
「リネット、ごめん‥‥」
カシウスに握り絞められていたリネットの腕は鬱血して変色してる。
「大丈夫。すぐ治るから」
リネットはそう言うとヴィオラがスッと差し出したポーションを飲んだ。
すると腕の痣は無かったかのようにキレイになる。
「ほらね」
それでもカシウスは申し訳なさそうな顔をしている。
疲労も見てとれるわね。
「カシウス、お疲れ様。確認はいつでも出来るから今日の所は休むかい?」
ガイウスさんがカシウスの前でしゃがむ。
「ううん。大丈夫。今やるよ」
「それじゃぁ、わたし達は席はずした方が良くない?」
とヴィオラ。
「いいよ。大丈夫」
「そうだね。一緒に立ち会って貰っといてそこはダメなんて無いよ」
カシウスもガイウスさんも承諾してくれてるからいいけど、スキルってデリケートな話だったわね。
「‥‥」
カシウスが左の紋章に軽く触れ、目を閉じると触れられた紋章がうっすら光る。
「‥‥最後に投げた物を手元に戻す」
カシウスが紋章から感じ取った概要を口にする。
申し訳ないけど、凄いスキルとは思えない。
「紋章見せて貰ってもいい?」
カシウスが頷いたのでニコラが手を取り、紋章を覗く。
「『投擲の紋』ね。ポピュラーでは無いけど、兵士か冒険者では珍しく無いんじゃないかしら」
「冒険者に向いてるって事?」
「向いてると思うけど、突出してるは思えないわね」
冒険者になりたいカシウスと、そう思わないガイウスさんの両方ともいい顔をしていない。
どっちの思いも加味したから、あんな見解を口にしたのかしら。
まぁ、カシウスの方はルーシともっと一緒に居たいだけって気はするけど。
「もう1つの方はどうなのかしら。それ次第かもね」
『二つ持ち』自体珍しい事‥‥ らしい。
アタシの周りは二つ持ちばかりだから良く分からないけど。
「‥‥故郷の象徴」
カシウスが右の紋章を確める。
フワッとし過ぎじゃない?『象徴』ってスキルとして成り立ってるのかしら。
これにはニコラも困惑してる。
「あ、これ伯父様と同じ紋章よ!」
テルティアがガイウスさんを見る。
「‥‥『王家の痣』だね‥‥」
とガイウスさん。
ただ、それ以上は語ろうとしない。
「歴代の国王に多く見られる紋章です。スキルは抽象的で理解出来ないモノが多い様ですが、後継選出への影響力は大きいです」
代わりにロジバールさんが説明してくれた。
「凄い!カシウス、王様になるかも知れないのね!」
テルティアがはしゃぐ。
ガイウスは何だか複雑な表情で黙っちゃってるわ。
どうしてだろう。
そんな感じで確認だけして今日はお開きになった。
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