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3章
【85】新たな魔女
しおりを挟む船の1室でメルヴィルさん、エミリー、ナミル、コリティスの4人が輪になって手を繋いでいる。
他人に聞かれない様に精神世界でミーティング中。
グフリアとルーシとアタシは、全員意識が飛んでるわけにも行かないしミーティングに参加する必要もないので見守っている。
「教会内では言いづらかったんだけどさ。」
とグフリアが切り出す。
「ルーシもみそぎなんだろ?」
みそぎに付いては公表されない。
ルーシに関しては悪さしてみそぎしてる訳じゃないから隠してないけど、言いふらしてもない。
でも知ってるって事は噂にはなってるのか。
「そうだよ。」
ルーシは素直に答える。
アタシだったら聞こえ悪いから下手に隠したり言い訳したりしただろうな。
「ティチーノ達もそうなんだよな。会ったりするのかい?」
ルーシ『も』って言ったのはティチ達の事を知ってたからか。
「全然会わないよ。」
みそぎが決まってから1度も会っていない。
ビッグスさん達と行動しているはずだけど、どうしてるのかなぁ。
「そっか。1度田舎に戻るって言ってパーティー抜けてった矢先にみそぎ何て聞いたもんだから心配してるんだよな。」
「グフリアが最後に会った後、直ぐくらいにボク達も会った以来だね。」
「ならどうしてそうなったのか知ってたりするかい?」
魔女認定された男が、ティチーノ達の育った孤児院の院長だってまでは知らないのか。
彼女達に落ち度はないけど、アタシ達が軽々しく話しちゃっていい事じゃない気がするわね。
「ボクが話していい事じゃないみたい。」
アタシの思いがルーシに伝わったみたいね。
「そうかい。。」
「でも、ティチもディオも巻き込まれただけで悪い事はしてないよ!」
グフリアが少し黙って考えている。
「ティチーノが悪事を働くとは思えないし、あいつの性格じゃ確かに巻き込まれたって方がピンと来るな。」
何だか安心した様な笑顔でグフリアは言った。
「みそぎが終わったら、またティチはヴァルキュリルに戻るのかな。
ヴァルキュリルとはグフリアが団長を務める冒険者クランの事。
「それは本人次第じゃないかい?いつみそぎってのが終わるのか知らないけど。」
「後1年半位だったと思うよ。」
ティチ達の方がルーシよりも1年長かったはず。
「長いな。そうなんとティチの方が尻込みしそうだね。 もしおの娘に会う事あったら、あたいとクランはいつ戻って来ても来なくても気にしないよって伝えておいてくれるかい?」
「うん。わかった。」
メルヴィルさん達のミーティングが終わったみたいで意識が戻って来てる。
「戻ったら忙しくなりそうね。。」
メルヴィルさんがため息をついてる。
王都に戻ってからルーシとアタシは暇だった。
メルヴィルさんがホントに忙しかったのかは戻ってから会ってないので分からない。
でも、イプノシーが異端者なのは間違いないだろうし、それが教会内に入り込んでたって事実が発覚してるんだもん忙しくない訳がないか。
「いやー、痛快だったにゃ。」
久々の出動は王都内で垂れ込みがあったので歩いて向かう。
その間にナミル達が聴聞会での事を話してくれた。
「宣教はネイプ様の担当ですからねえ。不祥事みたいなもんですから、もうタジタジでしたねえ。」
メルヴィル司教がネイプ司教をひっぱたいたんだとか。
司教が軽いにしても催眠に掛かって居たのもそうだし、顔を合わせた程度でもイプノシーが司教に接触していたって事実が水面下で大問題になってるらしい。
こりゃ魔女認定確定か?
「申請なんてとっくにしてるでしょうから、認定されてたらそろそろ御触れが出るんじゃないですかねえ。」
王都の西側、ガイウス邸の近く。そこもなかなか立派なお家だった。
今日は情報提供者に直接話を聞くって言うアタシ達的には初めてのケース。
廻りに気取られない様にという相手の要望で、教会人っぽくないアタシ達に白羽の矢がたったらしい。
「奥様に良くして頂いてるアナクリティスと申します。今日はお茶にお招き頂きましたので参りました。」
とナミル。
アナクリティスって偽名が審問官が来たって合図になってる。
メイドさんに案内されて中へ。
リビングには中年期前半て感じの身なりの良い女性が1人。
きつい性格をしてそうな面持ち。偏見だけど。
「いらっしゃい。」
この家の奥様らしい彼女は使用人さん達がお茶の支度を済ませ全員退室させるまでは友人の振りをして終始にこやかだった。
「流石に若すぎてビックリしたわ。貴女達本当に審問官?」
邪魔者が居なくなると少し横柄な口調になる。
アタシ、こう言う人嫌い。
「内容は話せませんが実績はありますよ。任に着いてから日が浅いのは否めませんが。」
コリティスは普通な口調で答える。
ナミルも表情を変えずにいるけど、2人とも丹田で組んだ手に少なからず力が入ってる。
「そうなの。」
詳しくは知らないけど貴族の奥様なのか?
「早速ですが本題に入っても宜しいですか?」
「ええ。そうして頂戴。」
奥様曰く、最近旦那さんの様子がおかしいらしい。
突然秘書を雇い出して以来帰宅時間はまばらになり、帰って来ない日もあるとか。
かと思えば凄く早く帰って来る時もあり、その時は秘書同伴で部屋に閉じ籠ってしまう。
1番おかしくなったと思うのは奥様への態度に素っ気なさが加わった事何だとか。
それってさぁ。。ただの不倫なんじゃないの?
ナミルとコリティスが見合って肩を竦める。
たぶんアタシと同じ事思ったんだと思われる。
「只今帰ったよ。いらっしゃい。」
偶然今日は旦那さんが早く帰って来た。
秘書も同伴だ。
「そいつよ!そいつが魔女よ早く捕まえて!」
話をした事で思い出しムカつきでもしちゃってたのか奥様が凄い剣幕で秘書を指差さす。
「おい、いきなり何を言い出すんだ?」
困惑する旦那と秘書。
「あのお、ちょっとお話伺ってもいいですか?」
思ってたのと違がっててアタシ達も困惑気味。
秘書が端正な顔立ちの青年だったのよね。
同性同士で不倫したって構わないけども。
アタシ達が審問官だって知ると旦那さんと秘書さんは膝まづく。
聖職者への敬意を感じる。奥様と違って。
崩して貰って話を聞くと、不倫は間違いだった。
旦那さんは貴族じゃなく商人で、商売の手を広げる為に元々親交のあった秘書を雇って準備をしていたんだとか。
奥様への態度が変わったのは、忙しくしている彼に対して横柄な態度を取るわ浪費するわでうんざりしてたんですって。
「なるほど。お話を聞く限り私達の出番はなさそうですね。」
「何言ってるのよ。嘘を付いてるに決まってるじゃない!ちゃんと調べなさいよ。」
奥様は味方がいなくてヒステリックになっちゃった。
「あなたが魔女だとか言い出すから素性を打ち明けなければならなくなったんですよ?バラさなければ調べ様もあったでしょうに。」
「こんな事で呼ばないで頂けますか?」
ナミルもコリティスも丁寧に喋るけど刺々しい。
「何よ貴女達!無礼じゃない!」
「やめないか!無礼なのはお前の方だ!」
ああ、旦那さんが凄くまともぉ
「もし2人が貴女に不義を働いて居たとしても、それは神への不義理ではないので戒めはしても罰しはしません。」
「なによそれ。使えないわね。」
「今の言葉は聞かなかった事にしますが、これ以上暴言を吐かれるのであれば虚偽で我々を翻弄した上に神を冒涜したと見なして拷問に処します。」
アタシの知る限りこの国の審問官が拷問する事はない。軟禁はするけどね。
あったとしてもこんな事位ではまず行われないでしょう。
そう言うイメージが付いているのを逆手に取って脅してるのだ。
「そ、それはご容赦頂けませんでしょうか。私から良く言い聞かせますので。」
言葉に詰まった奥様の代わりに旦那さんが答える。
「そうして下さい。私共は失礼させて頂きます。」
「ちょ、帰るの?このまま私が殺されたらどうするのよ」
あぁ、この人ダメだわぁ。って顔をみんなした。
「もしそうなったら真っ先に疑われるのはこのお二人なのでそれはないと思いますよ。」
「もし話し合っても埒が明かない様でしたら教会にお越しください。調停のお手伝いをさせて頂きますので。」
調停って離婚調停?そんな事も教会はやってるのね。
玄関で旦那さんと秘書さんが深く頭を下げて見送ってくれた。
「なんだかにゃぁ」
見えなくなるまで離れてからナミルが深くため息を付く。
「私達は初めて体験しましたけどお、8割位はこんなもんな事だって言うじゃないですかあ。」
へぇそうなんだ。アタシ達はたまたま当たり?ばかり引いてたって事なのね。
まぁ出動するたんびに事件が起きてたらたまったもんじゃないわ。
「ナミル達の仕事がない方が世の中平和って事かにゃ。」
警察じゃないからあれだけど、だいたい合ってるかもね。
教会に戻るとちょっと前に魔女認定の通達があった所らしい。
「イプノシーが認定されたのかにゃ?」
たまたまエミリーが居たので聞いてみる。
「はい。。ですが、もう1人居て、、」
「また2人?魔女って1人見つかると20人は居るのかいにゃ。」
「ナミル、いくら魔女でもその例えは失礼過ぎですよお。」
「経緯とか理由とか分からないのですが、、」
エミリーはどうも歯切れが悪い。
「もう1人はニコラさんなんです。。」
え?
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