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4章

9話 言わなければ…

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「は,はい」
坊ちゃんの勢いにのまれて,そう答えたものの,言葉にそれ以上する気は起きなかった。どちらかというと,言葉にできなかった方が正しいのかもしれない。
(早く,言葉にしなきゃ…)
頭ではそう言っている。
「……ごめん,なさい…。何があったか…ですよね…?」
「…うぅん。何にも聞かない。これ以上。だから,安心して」
「で,でも…」
先ほど,命令コマンドを使われたせいか,申し訳ない気持ちになる。
「本当に大丈夫。それに,僕の方こそ,ごめんなさい。嫌だったよね…?」
顔を覗き込んで僕に言った。
でも,僕がいやなんて言葉言えない。坊ちゃんは,僕にとっての主人であるのだから。
「……」
say正直に話して大丈夫だから」
優しく,手を握り,命令コマンドを使われる。
「…嫌,です。坊ちゃんが子ども,だからとか,坊ちゃんを信用してないからだとかそういうことじゃなくて…今の僕は,まだ,過去のことを整理できてなくて…できてないから…まだ坊ちゃんには言えない…というか…言いたくないというか…」
思っていること全てを声に出していた。なら,一層のこと,今日も命令コマンド使えばいいのになんて考えてしまう。それでも…坊ちゃんがそうしないのはわかっている。
だから,安心している僕もいる。
「うん。わかった。じゃあ……僕からはもう聞かない。ごめんなさい。無理やり話させようとして」
「…その,坊ちゃんを信頼していないように振る舞って申し訳ないです。坊ちゃんに,いつかお話しします。それまで待っていてくれませんか?」
そんな日はきっとすぐにきてしまう。それまでに僕は自分の過去と向き合わないといけない。でも,そのいつかが来なければいいのになんて思う。
「待つことにする…でも,身体だけは拭かせて。意識失ってから,今日まで,身体を綺麗にしてないでしょ?」
言いづらそうにそう言いながら,うずうずとしていることだけはわかった。
「…では,お願いしてもいいですか?」
「うん。もちろん。でも,やっぱりレオは僕に触れられるの嫌…じゃない?」
「いえ,嫌ではないです。坊ちゃんの手は優しいですから」
握られている手を握り返す。
「本当?」
「今更,嘘はつきませんよ」
「そうだよね。なら,背中触るね…」
「はい。いいですよ」
自分で了承したのに,触られるとほんの少しびっくりしてしまう。
「痛いの?」
「違います。なんか,人に触られることなんて今までなくて…びっくりしてしまいました」
「そっか…。嫌だったらすぐに言ってね」
「もちろんです」
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