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出会い

帰り道

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 ルクマーンは,アクラムのことを心配そうに見つめた。
 なぜなら,彼は、アクラムを昔からよく知っていたから。

「本当はすごく心配だ。せっかく拾い上げた命なのに、もしかしたらこぼれ落ちるんじゃないかって」

 アクラムは自分が何を言ってもルクマーンにはもう分かってしまうのだろうそう思って,観念して正直に自分のことを話した。

「それは,みんなそうだ。助けた命がなくなってしまうのは悲しいこと。だから、大切に扱うんだ,命ってやつを。まあ,これ感じたのは俺の子どもが生まれてからだったけどな」

 励ますかのように,ルクマーンは,明るい声で言う。

「そうか。なら,今は大丈夫なことを考えるようにする」

 アクラムはそう答えて,ぎゅっとくるしくならない程度に子どものことを抱きしめた。

 それから,どのくらい歩いたであろうか。
 次第にあたりは暗くなり,寒さもひどくなってきていた。
 今アクラムたちが歩いている場所は,砂漠が広がっている地域。夜は昼と比べてとても寒くなり、アクラムたちもすっかりと着込んでいる。

「寒くなってきたな……」

 ため息混じりに,前にルクマーンが言った。

「そうだな……」

 アクラムも寒さを感じて,息を吐き出す。
 そうして,子どもに目をやる。寒くないか,辛くないか。聞くことができないので,アクラムのさじ加減で,ちょうどいい温度を保ってやる。
 けれど,アクラムは妻もいなければ,子どももいないので,今まで子どもと関わることがなかった。それで今やっていることが子どもにとって正しいのか,いいのかわからない。そう不安になりつつも,アクラムは黙って前のルクマーンについていく。
 アクラムがどう思っても,隊は前へと進んでいくのだ。すぐに,街に戻らなければならなかったから。

「アクラム,そんな心配するな。子どもも生命力はある。それに,お前がやっていることは,間違っていないと俺は思う。だから,大丈夫だ」

 いつもよりもアクラムがソワソワとしていたので,子どもが2人いる,ルクマーンは,アクラムのことを何度か見た後に口を開いた。

「だが,俺は分からないから……」

「いいんだよ。分からなくて。俺だって,分からなかった。だから,それでいい。ただ,その子のことを思ってやることが大切なんだよ」

 ルクマーンは,そうして何度もアクラムのことを励ます。
 それは,アクラムのことを知っているルクマーンだからこそしたことだった。


 それから数時間,歩いて日が登り始める頃。ようやく,アクラムたちの街が見えてくる。

(ようやく,見えてきた)

 顔に日があたり,眩しいと感じた。けれど,子どもの体温がしっかりと保たれていたことがわかり,アクラムの口角は自然と上がってしまう。

「よかったな」

 その様子を見ていた,ルクマーンも嬉しそうに,アクラムに話しかけた。

「あぁ,よかった」

 ホッとしたようにアクラムは街の中へと入っていく。
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