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目覚めの時

1・街についてから

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 ***

 街へ戻ってすぐに,アクラムは隊から抜けて医者に見せに行った。
 朝日が昇り、毛布をとってやると全身に打撲痕があり,痛々しい色をしていることが分かったから。
 アクラムがアウスを見つけた時はそんなに酷くはなかった。暗くなり始めていたから見えなかっただけかもしれない。けれど,確かに次第にひどくなっていき,アクラムが思っている以上にはなっていた。

「先生,大丈夫ですか?」

 そう言ってもらいたくてアクラムは聞いてみる。

「確かに傷はひどい。けれど,ここまで息をしてきたってことは,大丈夫だと思う」

 先生は,眠っているアウスのことを見ながらそう言った。
 アウスは,布団の上に仰向けの状態で眠っている。気持ちは良さそうではないけれど,心拍も体温もしっかりと感じるくらいには落ち着いている。

「じゃあ,手当てを始めるけど,いいかな?」

 アウスの身体を撫でながら,先生はアクラムに尋ねる。

「大丈夫です。よろしくお願いします」

「なら,一旦身体をキレイにしようかな」

 アクラムが見ている中,先生は水の入っているツボに布を浸した。そうして,浸した布を絞って水気を取ると優しくアウスの身体を拭いていく。
 所々で傷に染みてしまうのかアウスの身体はたまに動いてしまう。その度に,痛そうだなとアクラムは思いながらもふと安心してしまうのだった。

「じゃあ,薬を塗っていくね」

 次に先生は薬草をすり潰して,入れてある瓶を取り出して,傷のところに塗っていく。手つきは優しく,ゆったりと時間が流れていった。

「あとは……」

 それだけ言って,包帯をとりに行き,アウスの身体に巻いていく。白い包帯は,薬が染み渡ってなのか、ほんのりと色をつけていった。
 アクラムはその様子を黙って見ているしかなかった。

「一旦はこんな感じかな。もし何かあったら教えて。そうしたら手当するから」

 先生は,不安そうに見ていたアクラムにそう言って,違う部屋へと向かう。
 アクラムのいるここは,いろんな人が来る場所で,先生にアクラム自身も何度もお世話になっている。
 そんな先生を求めてくる人は多く,いつも忙しそうにしている人だった。

(行ってしまった……)

 アクラムはそう思いながら,家へと帰路に着いた。
 いつもと同じ帰り道。なのに,気分はいつもよりも重く,街の雰囲気も暗く感じた。
 家に着いて家に入ると家具の配置や周りの景色は何一つ変わっていない。やっぱりアクラム自身の気分があまり良くないだけだと分かった。
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