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本命と付き合えたのに、俺とセフレを続ける理由って何なんだろう。家に帰る途中で、ふと疑問に思った。
佐野ってそんなにヤリチンだったのか?
あまりそのイメージはなかった。出会った当初は、モテまくってるのに恋人もセフレもいらないっていうスタンスだったから。
しかも、バスケのサークルでの集まりや飲み会でも俺の隣によく居て、お開きになった後もついてくるような男だ。その人懐っこさが可愛くて、後輩の中でも一番気に入っていた。笑った顔がどことなく昔飼ってた犬に似てるし。
趣味のバスケ以外にも、やってるゲームが同じだったりして、仲良くなるのも時間が掛からなかった。酔っ払ったせいで一線を越えても、関係が希薄じゃなかったのはそのせいだろう。
だから…………正直、ショックだ。
ずっと片思いしていた相手が居たこと。
その相手と付き合えたこと。
二つも隠し事されていた挙句、俺と関係を続けるような男だったとは…………。
飼い犬に手を噛まれたような気持ちになりながら、電車へと乗る。満員ほどではないが、空席がないくらいには混んでいた。それが憂鬱さを助長させる。
ドア側に立って、気晴らしに音楽でも聴くかと思ってスマホを取り出したら、とんでもない量の通知が溜まっていた。そのどれもが佐野からだ。
着信のほかに、LINEのメッセージも鬼のように届いている。
『俺、何かしましたか?』
『急に何なんですか』
『理由をちゃんと説明してください』
『どうして怒ってるんですか』
『電話出てくれませんか』
『ねえ、無視ってひどくないですか』
『足早すぎてうざいです』
『電話出て』
『バカ』
『電話出ろ、アホ』
後半なんてほぼ悪口だ。仮にも先輩なんですけど。既読つけちゃったし、返事を返さなかったらうるさそうだから返すだけ返しておこう。
『電車』
それだけ伝えたら、すぐに既読がついた。
『降りて引き返してください』
『やだよ』
『じゃあ、俺が行きます。次で降りてください』
『俺のとこなんか来んなよ。もっと大事にするべき相手が居るだろ』
『そんなの居ません』
どういうことだ?
俺は本命より大事な存在ってこと?
どんな存在だよ。ただの先輩でセフレだろ。
『それ、ちょっとおかしいって』
『何でおかしいんです?』
『俺も佐野のことは大事だと思ってるけどさ。とりあえず、二人きりで会わないようにしよ』
『そのとりあえずって何ですか。今日の椎名さん、怖いんですけど。何かに取り憑かれてません?』
俺だって佐野の考えがよくわからなくて怖い。
『俺は至って正常だよ。おかしいのは佐野のほうだ。埒あかないから、もう連絡してくんなよ』
『は? ねえ、やだ、こんな意味不明のまま俺のこと捨てるつもりですか?』
捨てるってなんだ、捨てるって。
お前には本命が居るだろうに。まるで俺と付き合ってるみたいな言い方してくるな………。
違和感を感じつつも、俺はLINEを閉じた。
佐野の考えはさっぱりわからない。
普通は本命と付き合えたのなら、セフレという不毛な関係は続けたりはしないだろう。
特別だと思える相手が居るなら、大事にするべきじゃないか? 俺は本気で人を好きになったことがないから、余計にそう思う。
今まで誰とも付き合ったことがないわけじゃないが、人見知りしない性格のせいか、向こうから好意を寄せられてなんとなく付き合うことが多かった。
そんで、振られる。
他の人と仲良くしすぎとか、そんな理由で。
俺も別に好きという感情がないわけではないけど、別れを切り出されて焦ったり、執着するほどの相手は今まで居ない。
そう、さっきの佐野のような………。
何であそこまでセフレの俺に思い入れがあるんだろう? 確かに仲良かったし、身体の相性も良かったけどさ。
逆に、佐野の本命の相手って誰なんだ。
誰にでも愛想良いわりには、いつも俺の隣に居るようなやつだったから、見当もつかなかった。
佐野ってそんなにヤリチンだったのか?
あまりそのイメージはなかった。出会った当初は、モテまくってるのに恋人もセフレもいらないっていうスタンスだったから。
しかも、バスケのサークルでの集まりや飲み会でも俺の隣によく居て、お開きになった後もついてくるような男だ。その人懐っこさが可愛くて、後輩の中でも一番気に入っていた。笑った顔がどことなく昔飼ってた犬に似てるし。
趣味のバスケ以外にも、やってるゲームが同じだったりして、仲良くなるのも時間が掛からなかった。酔っ払ったせいで一線を越えても、関係が希薄じゃなかったのはそのせいだろう。
だから…………正直、ショックだ。
ずっと片思いしていた相手が居たこと。
その相手と付き合えたこと。
二つも隠し事されていた挙句、俺と関係を続けるような男だったとは…………。
飼い犬に手を噛まれたような気持ちになりながら、電車へと乗る。満員ほどではないが、空席がないくらいには混んでいた。それが憂鬱さを助長させる。
ドア側に立って、気晴らしに音楽でも聴くかと思ってスマホを取り出したら、とんでもない量の通知が溜まっていた。そのどれもが佐野からだ。
着信のほかに、LINEのメッセージも鬼のように届いている。
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『急に何なんですか』
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『そんなの居ません』
どういうことだ?
俺は本命より大事な存在ってこと?
どんな存在だよ。ただの先輩でセフレだろ。
『それ、ちょっとおかしいって』
『何でおかしいんです?』
『俺も佐野のことは大事だと思ってるけどさ。とりあえず、二人きりで会わないようにしよ』
『そのとりあえずって何ですか。今日の椎名さん、怖いんですけど。何かに取り憑かれてません?』
俺だって佐野の考えがよくわからなくて怖い。
『俺は至って正常だよ。おかしいのは佐野のほうだ。埒あかないから、もう連絡してくんなよ』
『は? ねえ、やだ、こんな意味不明のまま俺のこと捨てるつもりですか?』
捨てるってなんだ、捨てるって。
お前には本命が居るだろうに。まるで俺と付き合ってるみたいな言い方してくるな………。
違和感を感じつつも、俺はLINEを閉じた。
佐野の考えはさっぱりわからない。
普通は本命と付き合えたのなら、セフレという不毛な関係は続けたりはしないだろう。
特別だと思える相手が居るなら、大事にするべきじゃないか? 俺は本気で人を好きになったことがないから、余計にそう思う。
今まで誰とも付き合ったことがないわけじゃないが、人見知りしない性格のせいか、向こうから好意を寄せられてなんとなく付き合うことが多かった。
そんで、振られる。
他の人と仲良くしすぎとか、そんな理由で。
俺も別に好きという感情がないわけではないけど、別れを切り出されて焦ったり、執着するほどの相手は今まで居ない。
そう、さっきの佐野のような………。
何であそこまでセフレの俺に思い入れがあるんだろう? 確かに仲良かったし、身体の相性も良かったけどさ。
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