同室のクールな不良に嫌われてると思っていたのに、毎晩抱きしめてくる

ななな

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デート

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※攻めが高いところを怖がる話を見たいとの声を頂いたので、書いてみました。ありがとうございます! 嬉しい!

※季節感は皆無です。











 クリスマスに近づくにつれて、景色は色づいていく。俺には縁もゆかりもない日だけど、非日常的な感覚に心が躍るような気分になる。

 イブの日がちょうど日曜日だから、津田とイルミネーションが綺麗な遊園地へとデートしに行くことにした。確実に混んでいるだろうけど、その場所を選んだのには理由がある。

 "観覧車があるから"だ。
 津田は二段ベッドの上段を怖がるほどの高所恐怖症で、前に日本一高いタワーに行った時なんてすごく可愛かった。

 窓ガラスに近寄ろうとしないし、ガラス床の近くで背中を押したら本気で怒ってくるし。見た目が不良なのに、高いところを怖がってる姿が面白すぎて、またそれを見てみたくて仕方なかった。当の本人はそんな意図があるなんて微塵も思っていないだろう。

「うわ、ゴンドラ乗らなきゃいけないのかよ……歩きじゃ行けねえのかな」
「流石に遠すぎて無理でしょ。早く乗ろうよ」
「…………はあ、嫌だ…………」

 遊園地に行くまでに駅から空中を移動するゴンドラに乗らなきゃいけなくて、既にめちゃくちゃ嫌がっていた。しぶしぶ俺の後ろをついてくる。ゴンドラの中の座席に座ったら、ずっと目を瞑っていた。

「ねえ、景色すごいよ」
「…………そっか」
「せっかく来たんだから、少しぐらい見たら?」
「それどころじゃない」

 俺の服の裾をきゅっと掴みながら、余裕がなさそうに言った。本当に可愛い。観覧車まで乗ろうって言ったら、どんな反応するんだろう。そもそも乗ってくれるのかな?

「あれ、乗りたいんだけど」

 遊園地に着いて、イルミネーションを一通り見た後に観覧車を指差した。すると、津田が露骨に嫌そうな顔をした。

「………さっき似たようなの乗っただろ」
「見える景色が全然違うよ。だから、乗りたい」
「………………」
「クリスマスなんだし、乗ろうよ」
「…………わかったよ」

 謎のクリスマスだから理論でゴリ押ししたら、津田が頷いてくれた。案外、押しに弱いらしい。

 普段そこまで盛況じゃない遊園地だけど、クリスマスシーズンなだけあって観覧車の待機列も長い。けっこう待たされてから、ようやく乗り込むことができた。

「何でそっちに座んの?」
「え?」

 津田の真向かいに座ったら、そう聞かれた。男同士で隣に座っていたら、遊園地のスタッフに変な目で見られるだろうし、こっちが自然かなと思って座っただけだ。

「隣、来いよ」
「あ、う、うん………」

 遊園地に移動するまでのゴンドラでは、背中側に別のカップルが乗っていたけど………観覧車の中は津田と二人きりだ。津田の隣に移動すると、狭い空間で距離感が近くなって、胸がドキリとする。

「ねえ、やっぱり………景色綺麗だね。こんなにイルミネーションが飾ってある所って、この辺じゃあまりないよね」

 動き出してすぐだけど、気恥ずかしさから外の景色に目を向けてそう言った。

「………………」

 返事がない。そのかわりに、座席に置いていた手の上に、津田の手が重なった。少し冷たい。

「……やっぱり、怖い?」
「………ずっとそう言ってるだろ」
「高いところが何でそんなに怖いの?」
「…………小さい頃、滑り台から落ちて。そっから何かダメになった」
「…………そうだったんだ」

 …………理由も可愛いな。
 普段わがままで、自由人な男の弱みが愛おしく感じる。世間一般から見たら、津田は完璧な男とは程遠いかもしれないけど…………それは俺だって同じだ。完璧じゃない。だから、人間的に弱い一面に俺は惹かれてしまう。

「ごめんね、無理言って乗せちゃって」
「……別にいいよ。高瀬の顔を見てたら、少しは気が紛れるし」

 津田はずっと景色にも目もくれずに俺の顔を直視している。そんなにガン見されていたら、流石に恥ずかしすぎる。

「………あんま見ないでよ。恥ずかしい」

 ふいっと景色のほうに顔を逸らしたら、重なった手が俺の肩に移動した。

「じゃあ、もっと気が紛れることしたい」
「…………なに?」
「こっち向いて」

 もう一回津田のほうに向けたら、顔が近づいてきて唇が重なった。軽く触れただけなのに、心臓がバカみたいに跳ねる。

「なっ、何でここで………! 誰かに見られるかもしれないじゃん……!」

 角度によっては、後続のゴンドラに乗ってる人たちから見えるだろう。顔を赤くしながら慌てて言ったら、津田が「ふっ」と笑った。

「別にいいだろ、見られても。知らない奴らなんだから」
「でも…………」
「高瀬のわがままは聞いたのに、俺のわがままは聞いてくんねえの?」

 そう言われてしまったら、何も言い返すことが出来ない。怖がってる津田の姿が見たかっただけなのに、こんな展開になるなんて思ってもいなかった。だけど、どこか期待してしまっている自分が居る。

「………なあ、もっとしたい」
「………………うん」

 小さく返事をしたら、津田の手が俺の頭の後ろに移動して、もう一度唇が重なった。少し離れて、何度も重なる。

「……………ん、…………っ…………」

 舌を入れてる訳でもないのに、普段よりも身体が興奮してしまう。観覧車という特殊な空間だからなのか、何なのかはわからない。心までどこかフワフワ飛んでいきそうな気分になった。

「………観覧車になんて乗りたくないって思ったけど、高瀬となら悪くないかもな」
「………っ!」

 唇が離れて、津田がそう言って頭を撫でてきた。こんなのずるい。もっと好きになってしまう。景色よりも津田から目が離せない。

「……………可愛いな。顔真っ赤だ」
「………み、見ないでってば」
「隠すなって」

 俺が手で顔を隠したら、その手を握られた。

「…………高瀬のこと、好きだよ。クリスマスに一緒に過ごせて嬉しかった」
「……………う、うん、俺も…………」

 普段あまり喋らない分、津田の言葉には破壊力がある。心臓を見事撃ち抜かれた俺は、その後も景色なんか見ている余裕はなかった。



「………じゃあ、帰ろっか」
「うん」

 観覧車を降りてから、遊園地の出入り口へと向かう。すごく楽しかったのに、もうその時間が終わってしまうのかと思うと寂しい気持ちになる。

 少し下を向きながら、津田の斜め後ろで歩いていたら、手を差し出された。

「…………? なに?」
「手、出して」

 何だろうと思って、津田の手の上に重ねたら、握られて上着のポケットの中に突っ込まれた。

「えっ、ちょ、さすがに…………!」

 隠れてるとはいえ、男同士で手を繋いでいたら変な目で見られるだろう。咄嗟に引き抜こうとしたら、ポケットの中で指を絡められた。

「高瀬の手、あったかいな」
「ねえ、聞いてる? 変な目で見られるよ」
「だから、誰も見てないって」

 周囲に目を向けたら、家族連れも、カップルもみんな視線の先は色とりどりの光に向けられていた。津田の言う通り、誰も俺たちのことなんて気にしてない。

「…………クリスマスなんだし、別にいいだろ」

 白い息を吐きながら、ぽつりと呟いた津田の横顔から目を離せない。こんなに綺麗な色がたくさんあるのに。視線も、心まで惹きつけられてしまう。

「あ、そういえば、プレゼント渡し忘れてた」
「………! 俺も津田に買ってあるんだ。ピアスなんだけど………」
「マジで? あとで見せて」

 クリスマス。
 俺には縁もゆかりもない日だけど、非日常的な感覚に心が躍るような気分になる。

 そんなクリスマスが、津田と一緒なら、もっと特別な日になると思えた。




 END



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感想 12

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みんなの感想(12件)

東雲紫苑
2023.10.05 東雲紫苑

初コメ失礼しまーす、、、
ヤバすぎる(良い意味で)!!!受けめっちゃ可愛いし攻めは可愛いとカッコいいが両方あってギャップ萌えだし、、、

あ、リクエストしても良いですか?オメガバースの世界線も見てみたいです。

2024.02.10 ななな

コメントありがとうございます🙌
ギャップ萌え意識しながら書いていたので、そこを言って頂けると嬉しいです〜〜☺️

オメガバースも良いネタ思いついたら書いてみますね!
ありがとうございます☺️

解除
あずき
2023.07.12 あずき

うわぁぁぁめっちゃすきぃぃぃ!!!
うるさくてごめんなさい。
それぐらい好きです。( ˙꒳​˙ )スン

2024.02.10 ななな

コメントありがとうございます☺️
むしろ熱量高くて嬉しいです!!

解除
2023.05.30 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

2023.05.30 ななな

こちらこそありがとうございます〜🥰🥰
超ネガティブなので、書いて欲しいとか言ってもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです🙌

解除

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