【完結】これはきっと運命の赤い糸

夏目若葉

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愛しい人②

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 タクシーに二十分ほど乗り、実家へ着いてインターフォンを押した。
 するとでかい門扉がいつも通り自動で左右に開いて俺を迎え入れる。
 祖父が父母の結婚時に建てた家で、庭も含めると敷地はなかなかの広さだ。
 母の好みで植えられたイチョウの葉が、ほんの少し黄色く色づき始めていた。

「お帰りなさいませ」

 玄関扉まで歩いていくと、先に家政婦さんが中から出てきて声をかけてくれた。
 仰々しいから出迎えはいらないと言ってあるのに。
 そう言えば、小さい頃はどこの家もこういうシステムなのだと思い込んでいた。
 家政婦さんが常にいて、出迎えの挨拶や身の回りの世話をしてくれるのが当たり前なのだと。
 小学生の頃に友達と話していて、自分の家がよそと違うことにようやく気がついたと、なぜか今、そんな昔のことを思い出した。

「お食事のご用意が出来ております」

 母くらいの年齢の家政婦さんに言われ、ありがとうございますと声をかけてダイニングへと向かった。
 そこへ父と母もちょうどやってきて、お帰りと笑顔で言いながら椅子に座るように促される。

「いきなり来いだなんて、なにかあった?」

 何気なくそう言って、両親の表情をうかがい見た。すると父がとりあえず食事をしようと笑みを浮かべる。
 テーブルにはスープに始まり次々と料理が運ばれて来て、パエリアの良い香りが食欲をそそった。
 食事中は、仕事は順調か?など、たわいもない会話ばかりだ。
 だが、そんな話で呼ばれたわけではないのはわかっている。

「で、本題の話ってなに?」

 食事を終えたタイミングで、まどろっこしくて半分呆れながら俺が催促をすると、母が急にタブレットを操作し始めた。
 父はそんな様子の母をなにも言わずに笑顔で見守っていて、こういう場面を見ると本当にふたりは仲のいい夫婦だと実感する。

「桔平は今年で三十歳になったでしょ? 今までも仕事をがんばっていたけど、これからもっとがんばっていくとなると、そばで支えてくれる人も必要じゃないかと思ってね」
「……え?」
「私生活の基盤を築くっていうか……それが大人ってものだから!」

 母が天然っぽく、名言だとでも言いたげな表情で、持っていたタブレットを俺に渡してきた。

「ん?……誰?」

 タブレットには上品なワンピースを着た女性が写し出されていた。場所はどこかのパーティーだ。
 二十代後半くらいだろうか、真面目そうな感じの女性だった。
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