許嫁幼馴染が弟に純愛寝取られたので、俺は変わることにした。

wakaba1890

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未既成事実。

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 あれから結局、惚れ薬を使わずじまいで、惚れ薬自体は、図書館の隠し部屋の冷蔵庫に保管しておいた。

 ん、そういえば腐ったりしないのか...まぁ、いいか

 また、なるべく嫌われたくないのか案外俺の要望に答えてくれた虎野は、あれから過度なアプローチは激減しており、基本的にこちらから何か用がなければ、世間話程度の関わりで済んでいた。

 正直、聞き分けが良すぎるというか今までの温度差からして、不気味なくらい状況が良化していた。

 何はともあれ、海外逃亡せずに済んだことで取り戻された平和な日常を堪能していた。


 そうして、海道くんは相も変わらず天気の良い金曜日の朝を迎えていた。

「ーー・・9時10分...まぁいいか。」

 また、寝坊はしてはいないものの、ふと手に取った新刊の小説に呑まれ、無事遅刻確定のためゆっくりと登校していた。

「...んなぁー...にぁー」(おい、そこの...送って)

 すると、ちょうど進行方向に被さるように、黒猫さんがゴロンと寝転がっていた。

「..当たり屋かよ」

 猫に言っても仕方ないが、一度立ち止まり思わずそう呟いてしまった。

「...んにゃー」(送ってよ。)

 そして、大股で横にずれて前へ進もうとすると、またもや黒猫さんが目の前でゴロンと寝転がった。

「....。」

「ん..にゃーお..グルル。」(早よしろ)

 どうしようかと逡巡していると、今度は足に体を擦りつけてきた。

「...悪いな。」

「..んなぁーお。」(くるしゅーない)

 埒が開かなそうだったので、足元の黒猫さんを抱えると、やけに素直に応じてくれ顔をこちらに向けて鳴いていた。

「・・この辺でいいか。」

 日当たりが良さそうな近くの公園のベンチに置くと、妙に満足そうに寛いでいた。

「..にゃーお。」(ありがとねぇ)

 そして、その場から離れるとベンチの方から猫撫で声が聞こえ、それから付いてこられることもなかった。


「・・あ、あいつ...あそこまで行くのが面倒で運んでもらおうとしたのか...」

 しばらく歩いても、付いてこられるわけでもなかった事からそう思い、それだとすると肝の太い猫だと感心してしまった。





「ーー・・えー、あるからして...」

 厄介な当たり屋黒猫さんから勘弁してもらい、残り数十分くらいに差し迫った一限の授業に到着した。

ガラッ

「「「......。」」」

 扉を開けると教室内が一瞬凍りつくが、さっさと席についた。

「...ふぅ。」サッ

 席につき、早速ポケットなモンスターの厳選をするために鞄からゲーム機を出した。

「お前、来て早々ゲームかよ...」

 その様子を見ていた篠蔵は、彼の自由振りに感嘆していた。

「わけわからん言語の解読よりはマシだろ」

 一限の授業は昔の言語を解読するといった授業で、意味不明な内容を扱っていた。

「ぐぅ..確かに...」

 彼の正論を聞いた篠蔵は、ぐうの音を出していた。

 それからしばらくして、チャイムが鳴り一限の授業は終了した。


キーンコーンカーンコーン

「ーー・・えー、これにて授業は終わります。」


「...ふぅ。」

 ちょうど良いところでポケモヌの厳選が一段落して、一息ついていると揶揄う気満々の久留米さんに声をかけられた。

「おはよっ海道くん。今日は朝帰りでもしたのかな?」

「朝帰りっ?!...海道。お前ぇ、変わっちまったな...」

 あらぬことを言っている久留米に篠蔵は、まんまと載せられていた。

「はぁ...違ぇよ。」

「ふふっ、わかってますよ。」

 眉間に手を当てながら否定すると、久留米は変わらず楽しそうに微笑んでいた。


「・・あ、朝...帰り...」ポトンっ

 そして、彼女の後ろで断片的に話を聞いていた青鷺が、ショックのあまり持っていた教科書を落としていた。
 
「あっ..いや、なーちゃん。これは冗談で...」

 本気で信じていそうな青鷺に、久留米は補足しようとしていたが、 彼女はどっからか仕入れた知識で妄想を膨らませていた。

「..年上が、好みなんですね..」

「...久留米。あとは任した。」

 俺が何か言ってもややこしくなりそうだったので、後の始末は久留米に一任した。

 そろそろ始末をつける者の労を知ってもらいたいものである。

「えっ..私ですか?」

「あぁ、久留米の口から出た事だからな」

「むっ..そうですが...あっ」

 彼に言いくるめられそうになった彼女は一旦飲み込むと、その間に彼はこの場から離れていた。


「...もう。すぐどっか行っちゃうんですから...」

 彼は基本的に時間や規則にとらわれる事なく自由に行動しており、スナフキンのようだった。


 一方、スナフキンは何気なしにチラリと時間割を確認していた。

(げっ...あいつか...)

 あいつとは現国の先生のことであり、抑揚のない声音と静かで穏やかな話し方なため、毎回の授業で教室の半数が寝るというありえない現象を起こす先生である。

(...寝るか。)

 どちらにせよ寝るのは確定なので、なぜかベッド数が多い保健室のベッドで寝るために、保健室へ向かった。


ガラッ

「....。」

 保健室に入ると、保険医の机上には出張中と書かれた卓上プレートが載っており、他にベッドで休んでいるような者もいなかった。

「なんかな...」

 正直、どことなくギャルゲー世界側から、何かいかがわしい情事へ気を使われている感じがして素直に喜べなかった。

 しかし幸い、もう授業はすでに始まっており、そのような事態は起きないと踏んだ。とかいってたら、誰か来そうって...これ以上はフラグになりそうなので、この辺にしておいた。

 彼は早速、一番日当たりが良く、日向にすべからず温められている窓際のベッドに向かい、仕切りのカーテンを閉じて、金の使い所を間違っていない柔らかなベッドに身を沈めた。

「ふぅ。」

 換気のため少し窓が開いており、そこから通り抜ける気分の良い涼しい風と、心地の良い日向が良質な眠りへと誘っていた。

 やはり、このベッドが保健室内でで最もうたた寝するのに最適な場所だった。

 そして、目隠しがわりに持ってきた帽子を浅くかぶり、午前中の程よく暖かな陽の光に照らされながら、しばらく夢心地にぷかぷかと夢遊していた。

 そうしていると、仕切りのカーテンが突然開いた。

カシャッ

「わっ...っと、清澄か。びっくりした。」

 帽子の狭間から見えるのは、陽の光に照らされ、白髪がさらに輝き、頭頂には天使の輪っかが浮かんでおり、蒼く澄んだ空のような瞳の持った妖精さんだった。

「...妖精」

 少し寝ぼけた目でソフィアを視認した彼は、一瞬本当に妖精が現れたのかと錯覚した。
 
「ふふっ...何言ってるのよ。もうっ」

 彼から思わず出た言葉に微笑みながらも、割と満更でもない様子にも見えた。

「...あ、あぁ...悪い。すぐ退く。」

 まだ覚め切っていない目を抑えながらも起き上がると、ソフィアは彼の体調を気遣った。

「あっ、ごめんなさい。寝てていいのよ。」

「いや、サボってただけだ。」

「えっ、そうなの?なんだ...よかった。」

 体調とか悪くならなそうな生物的な強さを持っている彼が、保健室のベットで寝ているということは相当な事かもしれないと思ったが、杞憂に終わった。

「ソフィアもサボりか?」
 
 寝起きは頭がスッキリしており、機嫌が良い彼は口角を上げながら、穏やかに笑いかけた。

「..っ..ぅ//...ま、まぁ、そんなとこ...」

 彼のどこか誘うような色気のある言い方に、変にドキッとしてしまい整った前髪を弄りながら、顔を逸らしていた。

「そうか、じゃ..」
 
 最もサボるのに最適な場所を独占するわけにもいかないので、彼は図書館にでも行こうかと思い立ち上がった。

「あっ..」

 すると、ソフィアはそのままどこかに行ってしまいそうな彼の服の袖をちょこんと摘んだ。

「?」

「えっ...あの、少し話しましょ..その、最近そういうの少なかったから..」

 ここ数日主に虎野と駆け引きをしていたため、ソフィアとの関わりが少なくなっていた。
 
 そして、やはりソフィアの中の海道は決して小さな存在ではなかった。


「...あぁ。わかった。」

 そんな気も知らず、彼は確かにと思いながらベットに腰掛けた彼女の横に座った。

「う...うん//。」

 隣にきた彼に満足そうに、彼女は微笑みを散らした。

「..ん?」

「っ..ぁ...//」

 また同時に、彼女の隣は壁で、反対は海道。そして、目の前には仕切りのカーテン。後ろは窓、彼女は一種の壁ドンに近い、被征服感を覚え、紅く染まった小耳が絹のような美しい白髪から覗かせていた。


「...ソフィア。やっぱ..」
 
 それを察したのか、彼はソフィアの名を重厚で低い男の声で呼びながら彼女の顔に近づいた。

「ぁ...っと...はぁ..はぁ...きよ..すみぃ...」

 彼のキリッとした目が彼女の蒼く輝く綺麗な瞳を離してやまず、彼女は次第に弱々しくなり息が苦しくなる。


「...体調悪いのか?顔も赤い、やっぱ休んだ方が..」

「...え。」

 結果的によかったのか、彼にされるかもしれないと思った情事が起こらなかった安堵感と同時に、心のどこかで寂しさを滲ませていた。

「だっ..大丈夫、です..ことです..ことよっ!」

 それを散らすかのように、語調が変になりながらも彼女は気丈に応えていた。

「ほんとか?無理するなよ。」

 彼女の自己申告と、顔は赤いがフラフラしているわけでもなかったため、無理に寝かせることはしなかった。

「え、えぇ...わかったわ//」

 続けて彼の優しさに触れたソフィアは、一向に冷めそうにない火照りを持て余していた。
 
「?..ソフィアはよくここでサボるのか」

 彼女の様子を不思議に思いながら、ふと気になった事を聞いた。

「えぇ、時々ね。私は清澄と違って、真面目だから」

 彼女は胸を張って自慢げにそう言っていた。

「ふっ..そうか。」

 サボってるには違いないだろ。と思ったが、大分この学校にも慣れたように思えたので、なんとも微笑ましかった。

 そして、彼女は一転して何か思い立ったのか、なぜか訝しげにこちらを見ていた。

「...そういえば、前から気になってたんだけど...清澄っていつもどこにいるの?」

「あー...図書館。」

 隠し部屋の事を言うまいか迷ったが、とりあえず真実を話した

「ふーん。そっか...確かに図書館は結構広くて、くつろげる場所も多いからね。私はてっきり...」

「てっきり...?」

「...いや...なんでもないですぅ//..」

 何か言いかけていたため聞き直したが、一拍して、ボフッと彼女の頭から湯気が出て、気恥ずかしそうに顔を抑えていた。

「ふっ..なんだよ。変なやつだな」

「..っ..ぅ..//」

 あらかた変な想像でもした様子に見え、からかってやろうと思ったが、先から変な調子な彼女の可愛い一面に面じて勘弁してやることにした。



「ーー・・最近美味しいものばっかり食べちゃって、運動しないとだよ...」

「ジムとか通ったらどうだ、運動すると気分がいいぞ」

「うーん。清澄はどこのジムに通ってるの?」

「俺は...」

キーンコーンカーンコーン

その後も他愛もない話をしていると、授業のチャイムがなり、彼は立ちあがろうとしていた。

「...そろそろ教室戻るか。」

 というのは嘘で、小腹が空いたので何か食おうと図書館の隠し部屋へと向かおうとしていた。

「..あっ..」

 そんな彼を見たソフィアは反射的に俺の服の袖をつまんで引き留めた。

「...あの..もう一限サボろ?」

 ソフィアは妙に初々しい雰囲気で、甘い顔でそう誘ってきた。

「っ!...スゥ」

甘々モードの彼女の空気に飲まれそうになったが、一旦気を平静に取り戻した。

「...まぁ、それもそうか」

「へへ...やったぁ」

 隠さず素直に喜んでいるのを見て、何かが満たされるのを感じながら、仕切りのカーテンに触れかけた体の向きを直して、ソフィアの元へと戻った。



「ーー・・すまない、つい熱が入ってしまった。」

「いえ、俺としては本気で来てもらったお陰で、いい組み手ができました。」

 その時に、元気そうな生徒の声が聞こえ保健室の扉のまで止まり、扉が開かれた。

ガラッ

「この声って..」

「あれ、なーちゃん?むぐっ...」

 俺とソフィアは楢崎の声がはっきり聞こえ、彼女の名を呟こうとしていたが、今この状況を見られると色々と面倒になりそうだった。
 
 そのため、思った以上に声が出たソフィアの口を思わず手で抑え、その際、彼女の細い腰を掴み、後ろから抱きつくような、ちょっと誤解されそうな体勢になってしまった。

「ふぐっ..ぅ」

 何やら言いたい事がありそうな感じで抵抗していたので、彼はソフィアの耳元で囁くように諭した。

「...静かにしてろ、良い子だから。」

「..んぅ//..ふぅっ....」

(...やけに大人しくなったな。まぁ、この体勢はちとまずいが、我慢してくれ)


「..むっ、保険医の方はいらっしゃらないな。」

「楢崎先輩、これくらいなら大丈夫ですよ。」

「それはいかん。一度消毒は必要だ。」

 その声の主は、武道系の体育終わりの楢崎と虎野だった。

「しかし、いきなり上段蹴りとは虎野くんも容赦ないな。」

「すみません、久々に本気で出来そうだったので..」

「いや、それは良い。それより、消毒液が...何処に」
 
 何やら空手かなんかの授業で、結構熱が入ってしまったらしく、それの軽い手当をしに来たらしい。


「..ん?なんか、海道の匂いがするな。」

 すると虎野が攻めたことを言っていた。

(...俺の匂いって、そんなに匂うのか?)

「...スゥ..っ//..」フイッ

 第三者から見れば結構際どい体勢になりながらも、そうソフィアに目で確認すると、彼女は俺の匂いを嗅いでなぜか目を逸らしていた。

(やっぱ匂うのか...汗かいたらアンダーシャツとかすぐ着替えるんだが...)

 彼女の反応を悲観的に捉えた彼は、内心少しというか、かなり落ち込んでいた。


「...気のせい?」

「そうなのか?とりあえず、換気しないだな。」

 虎野はそう一蹴すると、楢崎は換気するために窓の方へと向かった。


(...まずい..)

 段々と楢崎の足音が近づいており、一つだけカーテンの仕切りが閉じている彼らの場所の前で立ち止まった。

「むっ...君たち、何をしている。」

ガラッ!

 なんとなく気配を感じた楢崎は、授業をサボっていかがわしいことをしている生徒だと思いカーテンを勢いよく開けた。

(やばっ..)

「....な、な、な...海道っ?!それに...ソフィアくん!!」

 勢いよくカーテンを開けられ、誤魔化す暇もなく楢崎の想像通りのいかがわしい現場を目の当たりにした。

「えっ、海道がいるのか?...え」

 そうして、楢崎の声を聞き、既に手当を終えた虎野が彼の元へ来た。

 そして、彼女らには、彼がソフィアを後ろから熱く抱きしめ、顔を耳元に寄せている姿が目に焼き付けられていた。


「...あー、これは...」

「...っぅ///」

 何を言っても焼け石に水なように思え、言葉を選んでいるとソフィアは恥ずかしさのあまり彼に顔を埋めていた。


「...し、し、失礼したっ!!」

「え?!えぇぇ?!・・ーーー」

 この空気に耐えきれず、楢崎は状況を飲み込めていない虎野を連れて、どこかへ行ってしまった。


「...やれやれ。」

「...うぅ//お嫁に行けない...」

「あぁ、そん時は俺がもらう。」

「なっ?!...ちょ...もうっ!..知らない//」

 残された彼は未だ、見られた恥ずかしさとか、彼の本気かわからない言葉を処理しきれていない様子のソフィアをあやしながら、どう説明するか考えていた。




 そうして、なんとか昼休みまでに回復したソフィアを連れて、一緒に弁明するためいつもの女子会が開かれている屋上へ向かった。

ガラッ

「ーー・・よう。」

「「「.....。」」」

 おそらく保健室での出来事は既に浸透しており、彼らの姿を見た彼女らは何か意を決していたように見えた。

「...くぅ//」

「...ソフィアさん。」

 すると、珍しく真剣そうな表情で久留米が彼の後ろに隠れているソフィアの名を呼んだ。

「...ぅ、はい。」

 気まずそうに前に出たソフィアは処刑台に上るような面持ちだったが、それはすぐに晴れた。
 

「「「おめでとうっ!!」」」

 どこからかクラッカーの音が鳴り響き、久留米や楢崎、青鷺そしていつの間にか参加している虎野がソフィアに抱きついた。

「うわっ...え?」

「ん?」

 状況が飲み込めていないソフィアと彼は、一瞬面食らっていた。

「まさか、そこまで進んでいるとは...ソフィアさんもやりますね」

「え、いや..」

 もうすっかりカップル認定されており、ソフィアが否定しようとするものの久留米たちからの剣幕で憚られてしまった。

「てっきり、女になんぞに興味ないと思っていたが、ちゃんとあったようで安心した。」

「俺は第二夫人でも構わんぞ。」

「...年上好きではなかったんですね...よしっ。」

 楢崎の抱いていた俺への印象や、既にことが進みつつある虎野、やはり勘違いしている青鷺。と屋上の雰囲気は完全に祝いの空気になっていた。

「ん?いや、だから・・ーー」

 非常に事の経緯を説明しにくかったが、これ以上この空気に呑まれる訳にもいかなかったので、一から説明するに当たった。


「ーー・・え..じゃあ、つまりまだ付き合ってないって事なの?」

「?..あぁ。」

 少々引っ掛かるところがあったが、正確に事実が伝わったようだった。

「うん。」

 なぜかソフィアはどこか寂しそうに相槌していた。

「そうだったのか...私は海道くん達は、あの時既に...///」

 何か口走りそうになった楢崎は自ら自爆しており顔を手で覆った。

「なーちゃん、何想像してたのかな?」

 そして、そんなからかい甲斐のある彼女を逃す事なく、久留米が赤くなった彼女の顔を覗き込みながら追求していた。

「これは、そのぉ...違うんだぁっ//」


「..そうなのか、なら俺が第一夫人か。」

 お祝い空気から無事に脱して、いつもの女子会のようになっていたところ、虎野の呟きで空気が一瞬ピリついた。 

「「「.....。」」」ピリッ

「む?」

 策士なのか、それとも無自覚なのか虎野は何かしたか?といった顔で、こちらに向いてきた。

「なんで俺が了承する前提なんだよ...」

 これ以上彼女が口を開くと、また拗れそうなので話をずらすことにした。

「確かにこれからの事はわからないが、可能性は残っておるだろう?」

「まぁ...」

「えぇ、とにかく..それについては後でじっくりと話しましょうね。京奈ちゃん?」

 彼女の言い分もわからなくもなく、否定も肯定もしない曖昧な相槌を打つと、久留米がにこやかな微笑みで虎野へそういった。

「..あ...は、はい。」

 久留米の覇気に気圧された虎野は、背筋を正して了承していた。

「?...あっ、そういえば修学旅行楽しみですね、京都美味しいもの沢山あるだろうなー」

 彼女らの様子を不思議そうに見ていた青鷺は、思い出したかのようにそう言いピリついた空気を一蹴してくれた。

「ん?...もうそんなだっけか...」

 カレンダーとか頻繁に確認しないため、完全に失念していた。

「え?修学旅行は明日からだよ?」

「..ん?」

 その後、青鷺から告げられた言葉が受け入れきれないながらも、彼は急いでスーツケースを携帯でポチった。










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