許嫁幼馴染が弟に純愛寝取られたので、俺は変わることにした。

wakaba1890

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修学旅行 二日目

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「ーー・・芝春くんにお大事にと伝えてください。」

 夕方、二日目のしおりを行き終えた彼女らと合流するも、意外にも久留米は逸れた事に何か強く言ってくるわけでもなく、短くそう言って、すぐに解散した。

「ーー・・っと、もうこんな時間か...」

「あー..そうだね。」

 そして、昨日寝落ちするまでウマブラをプレイしていたにも関わらず、ウマブラ熱の冷めていない彼らは、ついには消灯時間まで遊んでいた。

「..今日はこの辺にしておくか」

 流石に二日連続寝落ちするまで遊ぶわけにはいかないので、キッパリと切り上げた。

「うん、流石にだね。へへっ」

 白木も意外と体力があるにせよ、連日続くと堪えるようで、はにかみながら賛同した。

(...しら可愛い。)

 白木の笑顔には、何か魔力が宿っているのか、海道くんの中にまた別の熱が帯びそうになった。

(...あれ、待てよ...今夜は白木と一緒の部屋で寝るって事か?)

 今夜は、寝落ちするまでウマブラをしていたわけではなかったわけでなく、ある意味今回はシラフで、白木と一緒の部屋で、白木の隣で寝る事を変に意識してしまっていた。

(...少し、時間を空けねば)

 そう思った彼は、妙に頭が周り、その頭を少しでも冷やすために窓際の椅子で、暖色の間接照明を軽く焚いて小説を読む事にした。


「ーー・・...。」

 暖色の間接照明が、かすかに部屋の隅を照らす中、彼が静かにページを捲る音だけが程よい間隔を開けながら、静かに鳴っていた。

『ーー・・寝ないの?』

『..今日は三日月だから、少し見ていたいんだ。』

『...そっか。』

 この状態に収まるまで、白木からそう甘い誘いが囁かれたが、なんとか下らん方便を駆使して乗り切ったが、その時の白木の表情がどこか寂しげで、かなりの損害を負った。

 それはともかくとして、今はただ未だ冷めそうにない、空を掴むような熱を冷ますために、ただ草臥れた古い小説に耽った。


 一方で、実はチラチラと彼の事を見ていた白木は、月夜に照らされ、どこかミステリアスに伏せ目で小説に読み耽っている彼のスッと描かれた横顔に、ただ見惚れていた。

(...かっこいいなぁ)

 すると、オールバックにした髪の横袖から、髪が少し前に流れ落ち、名画のワンシーンの絶頂を切り取ったかのような、彼の横顔に造作もなく、しな垂れた。

「...ぁ..っ」

 おそらくこれから更に成長期が来たとしても、辿り着けるかわからない、彼の雄の色気にもろ当たってしまい、彼にまで聞こえているのか懸案するくらい、鼓動の音が鳴り響いた。

「..?」

 こちらの視線に気づいた彼は、僕にしか見せない甘く優しく、罪深く微笑んだ顔をこちらに向けていた。

(...あぁ...もぉ..かっこいいなぁ..)

「....寝ないの?」

 絶対変な顔していると思い、即座に布団で顔を隠していたが、しばらくして白木は暖色の灯に照らされ、賢者の石でも代替し得ない、赫く煌びやかに輝いている目元だけを少し出し、なんでも叶ってしまうような甘撫で声でそう言った。

「...あーもう少し」

「...そっか。」

 まだ気持ちの整理がついていない彼であったが、白木の寂しそうな表情を見て気が反転した。

「まぁ、そろそろか。」

 彼はそう言いながら、白木の隣のベッドへと赴いた。

「...へへ..寝よっか。」

(...やばい...色々耐えれるか...俺)

 白木の甘い甘い誘いに、彼の理性ポイントは底が尽きそうだった。



「ーー・・....スゥ...スゥ...」

 だが、近くに白木がいるお陰なのか、いつもより副交感神経が優位になり変な気を起こす前に眠りにつけた。

 そして、しばらくした頃、夢なのか現実なのか曖昧な認識の狭間で、天使が体の上に乗っていた。

「..ぅ...ぁ...ん?」

(なんか、下腹部らへんに何か乗って..)

 眠気を散らしながら目を見開くと、そこには浴衣が少しはだけいる白木が俺の腹あたりに跨り、真っ白な白い左肩をさらけだしていた。

「・・..ほんと、海道くんは無警戒だよね。」

「..何いって..」

 月夜の明かりで白木の透き通るような真っ白な肌が照らされており、昨日の風呂の時以上にどこか妖艶さえも感じさせられた。

「...海道くんが悪いんだよ、何気なしに優しく頭撫でたり、肩を掴んで抱き寄せたり...それに、僕にしか見せない優しい顔で、微笑んだり...」

 甘撫で声に、色っぽさが混ざったその声は、理性とか性別とか常識とか全部どうでも良くなるような悪魔が宿っていた。

 このまま、悪魔と契約して永遠を生きるのも悪くないと、醒め切っていない頭で考え、思考の制御がままならなかった。

   それでも、なんとか残りカスのような良心は機能していた。

「てか、いつから...」

 そして、白木に押し倒され、見下ろされているというそういう状況と、白木が言っている事の意味を承知の上で、なんとか顔を逸らしながらそう聞いた。

「...海道くんと出会ってからだよ...」

「あー...順位発表の時か?」

「ううん、入学式の時。」

 始めて互いに認知したのは、確か定期試験の順位発表の時だったはずだったが、どうやら違うようだった。

「...ん?」

(いや、入学式は普通に遅刻して...あ、同じような人がいたような....)

 白木のような一度見たら忘れないであろう、天使みたいな人であれば忘れるわけがないと思っていたが、その日は違っていた。

「僕、海外から久しぶりに日本に帰ってきて、初日が入学式で...なんか色々思い出しちゃって...出席したくなかったんだ...」

 白木は皆まで言わずとも、見た目が女性っぽい事で色々面倒なからかいなどに遭ってきた事が垣間見えた。

「....。」

 白木の話には続きがありそうだったので、静かに待ちつつも、彼は海馬から白木の事を掴むように探っていた。

「...それでね、校内をなんとなく回ってる時に、海道くんにあったんだ。」


『...あんたも遅刻?体育館の場所わかんなくてさ、知ってるか?』

『え、あ...うん。』

『まじか...助かったぁ...』


「....あぁ...あの時の?」

 その日は半ギレの母に叩き起こされ、急いで登校したせいでメガネを忘れており、ぼんやりとだか白木の輪郭を思い出した。

 その時は輪郭くらいしか分からず、なんとなく声で女子だとは思っていたが、今の今まで友達が一人もいなかったため、別に男だろうが女だろうが対応は変わることはなく変に畏まることもなかっただけだった。
 
「う、うん。その時、海道くんが普通に接してくれたから...考えすぎだって気づいて...それで...」

「...あぁ、とりあえずはわかった。」

「それで...海道くんの周りには...素敵な女性が多くて、はぁ..二人っきりになれる今しかないと思って..はぁ、はぁ..」

 彼が体を起こし一旦話を閉めようとするも、逆効果で、より密着する形になってしまい、これでも自重していた白木の息は途切れ途切れになっていた。

「はぁ...んっ..」

「っ...」

 彼の赫い瞳がうるうると、こちらを射抜いてくる。

「はぁ..はぁ...海道..くん..」

 とうに覚悟を決めたような声音で、白木の艶やかで発色の良い色っぽい唇に目を奪われる。

「...と、とりあえず...一旦落ち着け。」

 耐えきれず顔を逸らし、今にも襲ってきそうな悪魔か天使の肩を掴んで止めた。

「っんぅ..はぁ..」

 色々と感情が高まっている白木は、肩を掴まれただけで変な声を出していた。

「あっ..っ...悪い。」

 またもや頭が眩んだが、痛くしてしまったと思い申し訳なさが勝った。

「うん..大丈夫。ふふ..」

 自分のことを心配してくれている優しい彼に触れ、今まで感じた事のないような、何か替えようのない何かが満たされた感覚に触れた。

「..僕のことは、嫌?」

 それでも、白木はもう一歩前へと進みたかった。

「...そんなわけない。」

「っ...そっか...へへ..よかったぁ」

 また、彼の大きくて優しい手で肩を掴まれびっくりしたが、白木は今はそれだけが聞ければ、十分だった。

「..大事なんだ...だから...」

 しかし、彼はまだ終わっていなかった。

 そして、彼はどこかすがるように、白木を優しく抱擁した。

 これは白木のみに限ったことではなかった、久留米やソフィア、楢崎、青鷺、カレン、白木、虎野、もうすでに、俺にとって大事な人達である彼女らを、やろうと思えば全てを受け入れられてしまうから、だから、そう簡単に踏み込んで行けなかった。

 覚悟もそうだが、それ以上に俺なんかを考えてくれる、大事な人たちを傷つけたくなかった。

「・・うん。わかってる。海道くんは優しいからね...」

 白木は本当に彼のことを何でもお見通しかのように、いつもは大人びていて、知らず内に自分たちの事を守ってる優しくも不器用な彼の頭を優しく撫でていた。

「すまない、白木....すまない...」

 今の彼はされるがままで、そして、すぐに答えが出せない事への申し訳なさで一杯でただ白木の優しさに溺れていた。






ちょこっと一間。

ーー次の日の朝。

「本当にすまない...昨日はあんな...」

「ううん、そのまた甘えたかったら、いつでもドーンと僕の胸に来てね。」

「....いや、それは流石に...」

「でも、昨日は甘えたさんだったよね?」

「....あぁ、その...頼らせてもらう。」

「うん、よく言えました。」

(...これからも、白木には敵いそうないな。)

 彼は白木に頭を撫でられながら、心地良くも段々と慣らされていた。

 

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