眼ノ球

*花*

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一章 夢は現実に

三.今

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「生きる」と決心した俺だが、今は生きるという気力をだんだんと失いかけていた。

支えは、すかすかの骨のように脆くなっていて、『生きる』ことがとても辛く、苦しくなっていた。


やっぱりこれも自分の不幸体質のせいなのか――


俺はとある会社で働く会社員、三十三歳。独身。俺が働いている会社は、ブラック企業だと言ってもいいだろう。俺が勤めている会社は、労働時間がとても長く、休日もほとんど休みがない。日々、残業、残業の繰り返しだ。しかもその上、毎日俺を厳しく叱ってくる。ああだこうだとしつこく。

それで疲れている上で、俺が昼食を食べている時、ふとこんな会話が耳に入ってきた。

「晋太さんって、塩顔でイケメンだよね~!センター分けの髪型とちょー似合ってる!!」
「うんうん!それに、私、晋太さんの綺麗で、めっちゃ好み何だけど!」
「それ、分かる~!」

はい出た。

俺は褒められるのが苦手だった。しかも目のことなんて周りにどれだけ言われたことか。
俺は幼い頃から目のことはとてもよく褒められていた。「細目だけど綺麗でかっこいい」だとか「色気を感じる目」だとか色んなことを言われてきた。

そんなに俺の目がいいのか…………?

とたまに自分自身を鏡で見つめてみるが、よさがよく分からなかった。

会社では嫌なことが毎日、毎日続く。
上司からの厳しい叱り声。周りから聞こえてくる苦手な褒め言葉。
あー、うるさい、うるさい。黙ってくれよ。

でも、「うるさい」という言葉の裏腹で、その度に自分を責め続けていた。

全部、俺のせいなんだ――
俺の出来がよくないから――
と。

そして、『生きる』という気力も落ちてきていた。もううんざりだ。辛い。苦しい。死にたい。

――

頼れる人なんていないんだ――
助けてくれる人なんていないんだ――

……じゃあ、俺を心配してくれる人も?
いないのか?

『だったら、俺なんかいなくても――』


そう思っていた時に、謎の目玉が現れたんだ。本当、こんな時に何の用なんだ。

ふと背後で「大丈夫カー?」とまた、脳に直接届くような声が聞こえてきた。その声に反応し、少し顔を上げた。俺はそこで衝撃的な場面を目撃してしまった。

「え」
「ン?」

…………ドアを……すり抜けている……!?
……どうやってだ……??

俺は混乱し、青くなりながら、震えた声でこう言った。心臓がバクバクしている。

「お前……本当に何者なんだよ……」
「オレカ?オレハ……ッテ、ア!オイ!待テ!!」
「嫌だ、嫌だ、嫌だ!!ついてくるな!!」

俺は恐怖のあまり、その場から逃げたくなり、猛スピードで階段を駆け下りていった。
その時。

あっ……

俺はスピードを出しすぎて、高いところから階段を踏み外した。

やばい。落ちる。
もしかしたら、これって、死ぬんじゃ――

俺はスピードに乗り、そのままごろごろと転げ落ちていった。でも最後は、マットのような、少しふわふわとした物があり、奇跡的に頭は打たなかった。

「痛っ……っ……」
「オイ!オレ二感謝シロ!」
「…………へ?」

俺はぺたぺたとマットのような物を触ってみる。今だからこそ気づいたことがあった。

少し冷たい……しかも、ぶにゅぶにゅしてる……深紅の色…………これってもしや――

「うわっ!!目玉……」
「フン!オレガイナキャ、オ前、死ンデタゾ!」
「あ……確かに……そうだな…………ありがと。さっきはごめん。変に疑って」
「……オレモ……悪イヨナ……急二現レタラ驚クヨナ……俺ノ方コソ、ゴメンナ……」

と目玉は、俺に負担をかけないよう、ゆっくりと初めて出会った時の姿に戻った。

「……オ前、一人デ歩ケルカ?」
「…………大丈夫だ」
「オウ、分カッタ」

と目玉は少し心配そうにこっちを見てから、後ろを向き、俺の前をふよふよと浮いていた。

今だ――

俺は最初からそうだった。裏で考えていたことがあった。この目玉を殺す。こんなやつ、俺に何をしてくるか分からない。しかも、どこから来たのかも分からない。あの時は優しく声をかけたり、心配してくれたりしてくれたが、本性は根っからの悪い悪魔かもしれない。俺の人生にはそんなやついらない。邪魔だ。そして、怖い。

心臓が今までにないくらい激しく鼓動している。
得体の知れないやつを殺そうとしているからか――

俺はよろよろと立ち上がった。まだ足や腕がズキズキと痛んでくる。俺はふつふつと湧き上がる殺意と恐怖心を拳に込め、ぶんと大きく振り上げた。





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