眼ノ球

*花*

文字の大きさ
4 / 43
一章 夢は現実に

四.俺

しおりを挟む
思い切り殴ろうとしたその瞬間、俺の拳は目玉の周りでぴたりと止まった。時が止まったかのように。

なんでだ……!?

すると、目玉は俺のことをぎろりと鋭い目付きで睨んできた。それから呆れたように問いかけてきた。

「オ前……オレ二何ヲシヨウトシタ……?」
「っ……」
「…………無駄ダゾ……?オ前ハオレ二攻撃デキナイ……」
「……は?」

じゃあ、こいつのことを殺すことが出来ない……!?

俺はだんだん殺気が消え失せていき、今度は恐怖心が強く芽生えてきた。そして、焦りも感じ始めていた。

どうすればいいんだ……!?
ずっとこいつと暮らさなければいけないのか……?こんな訳の分からないやつと。
いや、他に考えがあるはず……

あっと俺はあることを閃いた。

そうだ……出て行ってもらうのはどうだ……
これならいいだろう。

俺は、すっと拳を下ろし、今度は素直な言葉で伝えた。

「…………俺……今は一人でいたい気分なんだ。しかもお前のこと全然分かってないし、こんなやつと一緒にいても、何されるか分からなくて、とても怖いんだ。……だから、出て行ってくれないか」
「……オ前、本当二ソウナノカ?」
「え……」
「確カニ、オレハイキナリ現レタ。ソレニツイテハ本当二申シ訳ナイ」

目玉ほ少しうつむき加減で喋った。でも次の瞬間、すっと俺のことを真剣に見据えてきた。そして脳に直接話しかけてくる。それは、人間的な声で、胸に突き刺さってくるような言葉だった。

本当は心配んじゃないのか――と。

俺はその言葉に、ドクンと心臓が揺れ動いた。そして目玉はまだ言葉を続ける。

ずっと一人で孤独の中。本当は悲しいんじゃないか?辛くて、苦しいんじゃないのか?それは何故か。周りに人がいないから。頼れる人がいないから。助けてくれる人がいないから。そして、心配してくれる人なんていないから。

そんな中でお前は一人で大丈夫なのか?

そう言い切った後、目玉はもう一度俺のことを見据えてきた。どうなんだ?とでも言いそうに。鋭いけど、どこか心配そうな目で。

何だよ……辞めろよ……辞めてくれよ……
俺のこと何も分かってないくせに……分かってないくせに――
なんで……なんで――

って、あれ……?


なんで俺……泣いているんだ?
意味が分からない。泣けるポイントなんてなかったはずなのに……

俺は……何で泣いている。

目には涙が溜まっていて、景色がぼんやりと滲んで見える。目玉の形がぼやぼやしている。涙が、ぽたと床に落ちた。

俺が悪いんじゃないのか――?
全部、俺のせいじゃないのか――?
こんな人生になってしまったのも。俺が――

目玉がこっちに近づいてくる。

次は何をするつもりだ。

俺は心の中で身構えた。
けれども、目玉は俺に優しく寄り添い、こう言ってきた。

お前が全て悪んじゃない。
そして、俺はお前に悪さなんて一切しない。殺すなんて以ての外だ。俺のことなんか全然分かってなくてもいいんだ。

そして、俺がここにやって来た理由――
それは……

『お前のことを守るため』だ。そして、『そばにいるため』だ。

お前はもう独りぼっちなんかじゃない。
もう周りに『人』がいるんだから――

「人……?人なんてどこに……」

俺は涙目で辺りをキョロキョロと見回してみた。人の姿なんてどこにもない。そして、目玉に焦点を合わせた。目玉は柔らかい眼差しで俺を見つめていた。俺は問いかけた。

「お前……人じゃないよな……」
「アァ、ソウダ。完全ナル人間デハナイ」
「はぁ……?完全なる人間ではないってどういう意味……」

「だよ」と言い切る前に、目玉は口を挟んできた。言ったことを聞き、心臓がドクンと大きく飛び跳ねた。そして、呼吸も瞬きも何もかも止まったような気がした。


『俺にはお前のの魂が宿っている』と――








しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

処理中です...