眼ノ球

*花*

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一章 夢は現実に

五.殺意

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「お、おい……今なんて……」
「俺二ハオ前ノ兄ノ魂ガ宿ッテイルト言ッタ」
「は……!?お前……なんで俺に兄がいることが……」

俺は右手をぎゅっと握りしめた。手汗が凄い。少し下を向く。
何で。何でだ。何で知っているんだ。震えが止まらない。怖い、怖い、怖い。

「オイ、落チ着ケ。落チ着ケヨッテ」
「落ち着ける訳ないだろ!?お前、何で俺に兄がいることを知ってるんだよ!?」
「待テッテ」
「はは……やっぱりお前が兄に何かした……」

俺は一旦言葉を止めた。

いや待てよ。そうやって決めつけるのは悪い。
そう言えば、兄とはしばらく会っていない。俺が家を出てから。こっちの仕事が忙しすぎて全然会えてない。

……じゃあ、兄は今どこにいる?そして、何をしている?そもそも生きているのか?

こいつが兄の魂を持っているなら……
何か兄のことを知っているかも知れない。

俺は目玉に一つ質問をしようと口を開いた。

「……なあ、今俺の兄はどうして――」
「死ンダヨ」

たった四文字の軽々しい短い言葉で告げられた。

『死んだよ』

全身を太い針で貫いたような鋭い痛みが走ったような気がした。そして、その言葉は俺の頭の中で、重々しく、ぐるぐると渦巻き、こだまして響いていた。

俺にとって、一番大切でかけがえのない存在だった兄。互いに助け合って生きてきた。

そんな軽々しい言葉で…………人の命を何だと思ってるんだ――!!
やっぱりこいつが――!!

俺の疑問は確信へと変わった。
頭の中はさっきまでぐちゃぐちゃになっていたが、今はそれが一つの『怒り』に変わった。
そしてまた、殺意もふつふつと湧き上がっていた。
今はこんな環境に住んでいるんだ、情緒不安定にもなる。

もう訳が分からない。
泣いてるんだか、怒ってんだか。嬉しいんだか、悲しいんだか。感情が爆発して、からっぽに真っ白になった俺の中。そんな中、頭の中に浮かんでいる文字は『殺』。

俺はゆっくりと歩いて台所へと向かった。後ろからは目玉の叫ぶ声が聞こえてくる。だが、そんな声は耳に届かず、ただただ『目玉を殺す』という考えだけが俺の頭を埋め尽くしていた。

そして俺は包丁を手に、また目玉のところへ行った。足取りがゾンビみたいにふらふらとしている。ぺた、ぺたと裸足で歩く音が聞こえる。
俺が目玉の前まで来た時、ゆっくりと包丁を上に上げた。そして「死ね!!」と大声で叫び、勢いよく下げようとした瞬間、生身の人間のような声でこんな言葉をかけられた。

「俺のことは殺してもいいが、それと同時にお前の兄も殺す事になるんだぞ!!」

大声は家中に響き渡り、その声は俺の頭でびりびりと鳴り響いた。

その後「ドチラニセヨオレノコトハ殺セナイケドナ!」と付け足してきた。

俺は震える手をゆっくり下に下げた。そして包丁を床に落とした。カランと金属音がして、俺は力が抜け、その場にぺたりと座った。

「……俺……どうすればいいんだよ……この先、どうやって生きていけばいいんだよぉ……お兄ちゃん……」

ぽろりと口から出た言葉。そしてまた涙。大粒の涙。何回泣くんだ俺は。出たり引っ込んだり忙しい。

こんな状況でどうやって生きていけばいいんだ――

するとすぐ近くから「ダーカーラー」と呆れるような声がした。

「サッキモ言ッタダロ?オレガ守ッテヤルッテ。ソバ二イテヤルッテ。全テハオ前ノコノ状況ヲカエルタメダヨ」
「目玉……」

目玉はその後も何かぶつぶつと独り言を話していたが、上手く聞き取れなかった。そして目玉は「今カラ兄ノコト話シテヤル。時間ハ大丈夫カ」と聞いてきた。

俺は無言で頷いた。

「ジャア決マリナー。ドコデ話セバイイ」
「……俺の部屋で話してもらうよ。俺……包丁しまいに行ってくる」
「分カッタ。ジャ、ココデ待ッテルゾー」
「うん」

俺は台所へ行き、包丁をしまった。

あいつ……何か図々しい感じがするんだよな……
でも、俺のことを何かから守ってくれるんだろ?そばにいてくれるんだろ?本当なのか分からないけど。

だけど……だけど、周りに誰かがいてくれるってことは、何だか嬉しいな。
そして、こんなにも安心するんだな。

俺は心の底から思った。
俺は台所から出て、目玉のいるところへと歩いて行った。ちょっぴり嬉しい気持ちを抱えて。








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