眼ノ球

*花*

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一章 夢は現実に

七.目

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「ソンデー、晋太探シヲ始メタンダヨ。長イコトズゥーット探シテタンダゾ!疲レタワァ……」
「お、おい、ちょっと待て……全然頭が追いつかない。パンクしてる」

寂しかった?兄は目の病気を持っていた?そんで兄はずっと孤独の中、その苦しみと戦っていたのか?そして耐えきれなくなって、自殺した――?

この状況……まるで――

俺みたいじゃないか。兄はこの状況の一歩先を行ってしまった。死ぬと言う選択肢を歩んで行った。まさに俺もその選択肢を行こうとしていた。

「…………このバカ兄……何で俺に相談しなかったんだよ……もっと俺を頼ってくれたってよかったじゃないか……何で……何で……」
「迷惑カケタクナカッタカラダロ」
「……それはそうかもしれないけど……もっと他に理由が……」
「今ノオ前ノ立場ト同ジヨウナコトダロ。生キルノガ辛クテ、苦シイ。ソレカラ自分コトヲ否定的二考エル。ソシテ最後ハ死ヌ。ソンナ流レダロ」
「……」

俺はそこで何も言い返せなかった。
流暢にぺらぺらと喋ってくる目玉。正直怖い。俺の考えていることと一致してしまうから。心の奥底で考えていることをいっきに見抜いてしまうから。
俺が少し俯いていると、アイは「ナア」と言ってきた。俺は少しの間黙り、出来る限りの範囲で頭を整理した。それから「ああ」と返した。

「ソウイエバサ、オ前ラ兄弟ソロッテ『眼』似テルヨナ」
「……」
「オレ、兄ンチノ鏡デ見テ思ッタンダヨ。ドッチモ綺麗デ、透明感ガアッテナ、宝石ミタイデサ」
「あ、ああ……そうか……」

こいつにまで言われた。目について。どいつもこいつも言ってきやがって。そこまで言うほどあれなのか?

そんな心の声を漏らさないようにするために、ふぅーと長めの息で誤魔化した。そして、時計の方に目をやり、「あ、俺そろそろ仕事の時間だわー」とわざとらしく棒読みで言った。それから、てきぱきと行く準備を始めた。アイは「オォ、ソウカソウカ」とふよふよと俺の後をついてきた。

「……なんだよ、ついてくるのか?」
「アァ、ダッテソバニイテヤルッテ言ッタダロ」
「まあ……そうは言ってたけど……」

ため息混じりで言うと、アイは生身の人間のような声で、脳に呼びかけてきた。しかもその声は兄のような声で。ゆっくりと言ってきた。

気をつけろ。今、社会は大変なことになっている――と。

俺はアイの方を振り返った。アイは「キーッ!キーッ!」と警報音が鳴るように、大きな声で鳴いてきた。その声の大きさに、ビクッと肩が震えた。

社会が大変なことに――?
どういうことだ。一体どうなっているんだ。

するとまたアイは言ってきた。

自分の目で確かめろ。と。

それから普通の声に戻った。そして俺に怒鳴ってきた。

「オイ!仕事ハイイノカ!!」
「あぁ、はいはい、今行く、今行くよ」

そう適当に返答しておいた。そして、朝ご飯も食べないで、テレビのニュースも見ないで家を出た。じりじりと俺を照りつける太陽。雲ひとつない快晴の大空。沢山の建物、乗り物。そして大勢の人々。

…………何だか、妙な胸騒ぎがする。
何なんだこれは。

よく見る風景なのに。いつも通りの日常だというのに。それに加えて、俺には一つの『眼玉』が増えただけなのに。なんでこんなにも心がざわついているんだ。気持ち悪い。
よし、いつも通りに……そして、平常心を保て。

まず俺は少し早歩きででいつも行く、近くのコンビニへと向かった。朝飯を買いに行く。大勢の人でごった返している中、俺はそそくさと早歩きで行く。

……何だか今日は、やけに、人の視線を感じるな…………

そう思いつつも、俺とアイはいつの間にか着いていたコンビニの中へと入った。
沢山の『眼』の威圧を感じて。

ふと俺は、最近よく見るあの夢のことを思い出した。

……まるで、あの夢とそっくりじゃないか。

俺はぞわぞわと寒気を感じた。

夢が現実に…………まあ、そんなわけない……よな。

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