キスが出来る距離に居て

ハートリオ

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「締めて‥‥入り口だけ‥‥そう、そうだよ、アァッ、イイッ、上手だよッ、おかしくッ‥なるッ‥‥クゥッ‥最高だよッ‥‥最高ッ‥‥」



淀んだ空気と異臭の中、夫婦の寝室の大きなベッドの上で全裸で下半身を重ねている『友人』とイベリス。

白く細い体のイベリスは、這いつくばる様にして大きな体を小さく丸めている『友人』に背後から覆いかぶさり、狂おしく、だがゆっくりと味わう様に腰を動かし最後は叩きつける様に下半身を密着させる。

その瞬間、『友人』は小さく獣の様な声を上げながらビクンと体を震わせ、その反応にイベリスは悦楽の表情を濃くし、その狂おしい動作を繰り返している。



「‥‥何てイヤラシイ体なんだい?‥‥ラバンッ‥‥可愛い、僕の淫乱ッ‥‥」

「‥イベ‥リスッ‥いつになったら‥‥約束のお金‥アッッ、アッアッ‥‥」



イベリスがラバンジュラの質問を遮る様に腰の動きを激しくさせる。

しばらくは男二人の泣き声の様な喘ぎ声が絡み合い‥‥



「‥‥フゥ‥‥焦んないでよ、もうすぐ、もうすぐ全てが手に入るんだ。
伯爵夫人ババアがもうずっと寝込んでるだろ?
(ククッ、少しずつ飲ませて来た毒薬が効いてるんだよ)
‥‥もうすぐ、幾らでもあげる。
ホラ、次は君が淹れて‥‥そう‥‥あぁ、いい、ラバンッ、アァンッ‥‥
あげるッ、全部ッ、あげるんだからァッ、ぁァッ、いいィッ、凄いィッ、アァッ、ラバンッ、ラバンッ、ラバッ‥‥ァ・アーッ、ァ・アーッ、ァ・アーッ‥‥」



空はもう随分と明るい。

そろそろメイドが動き出す時間だ。

いつもだったらとっくにアネモネとラバンジュラが入れ代わり、何事も無く朝を迎えているのだが‥‥


イベリスとラバンジュラは昨夜、始める前にイベリスが ”仲間 ”から手に入れたを吸った。

そのせいで二人は体位を変え、役割を変え夢中で攻受し続けている。

いつもならノックをして少し待てば少しやつれたラバンジュラが部屋から出て来て、入れ違いにアネモネが部屋に入る。

ところが今日は何度ノックしてもラバンジュラが出てこない。

ちゃんと入れ代わらないとイベリスが困るんだろうと思ってアネモネは施錠すら忘れられている部屋に入って行った。

そして呻き声の様な泣き声の様な声が絡まり合うのを不思議に思いベッドに近付き声を掛けようとして重なり合う二人を見てしまった。

何をしているのか分からず、かと言って声も掛けられずアネモネは硬直したまま二人をずーっと見続けてしまい、一周したところでやっと何をしているのか理解した。

理解した所で余計に動けず、ベッド上の二人はと言えば、クスリのせいなのか結構な至近距離からアネモネに見られている事に全く気付かず行為を続け、時間がどんどん過ぎて行き、メイドが叫び、執事が駆けつけ、屋敷中がイベリスの酷い裏切りを知る事となった―――






「あ、あのッ!」



堪りかねた様にセロシアが声を上げる。



「話の途中で、申し訳ございません。
ですが、若い女性に聞かせるような話ではないのではないでしょうか?」



セロシアが気遣っているのは隣に座っている心臓に毛が生えた女ではない。

セロシアの正面に座っているオレンジ色の髪に美しい青い瞳の美少女‥‥

確か名前はポーチュラカ‥‥



『こちらのお嬢さんはポーチュラカさん‥‥
一緒に話を聞いてもらいます』



とだけ超簡単に紹介された美少女だが、同性愛の話辺りから顔を赤くしたり青くしたり辛そうで。


自分達もそうだが、なぜこの少女がこんな話を聞かされなければならないんだろうかと疑問とも憤りともつかない思いで、声を上げたのだが‥‥



「あら、不快だったかしら?
お嬢さん達、別室で休憩‥‥」
「「いいえ、大丈夫です」」



と食い気味に否定され、セロシアはその端正な顔に何とも言えない笑顔を貼り付ける。


バカミタイダナニモイワナキャヨカッタ‥‥


明らかに肩が落ちているセロシアにポーチュラカが躊躇いながら口を開く。



「あの、セロシア様、お気遣いありがとうございます。
でも、私がお願いしてお話を聞かせて頂いているので‥‥
大丈夫ですので‥‥」



少し震える声でそう言ってぎこちなく笑ってみせた少女に‥‥


セロシアの頭は真っ白白になり、顔は真っ赤っ赤に染まった。
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