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「恋とは‥‥たった1秒で落ちてしまうものなんだな‥‥」
「ブハァッ!!」
「‥‥何て失礼なヤツだ。
人が話している最中にお茶を吹くとは」
「‥ウッ、ゴホ、ケホ、ゴホホッ‥‥セ、セロシア‥‥
いや、お前の‥ゲホッ、話の‥ケホホッ、せいっ、苦し‥‥」
何だと‥‥俺は何かおかしな事を言っただろうか??
「いや、お前、イケメンの無駄遣い、無自覚ヘタレのお前が、何?
一目惚れしたあげく恥ずかしいセリフを吐くから‥‥」
「一目惚れなんてしてないぞ?
一週間前会った時は『クールな美女』って思っただけだった。
昨日だって最初の頃は『心臓に毛が生えている』と思っていた。
だけど‥‥
無表情の仮面が外れた時の彼女は‥‥女神だったんだ‥‥
俺は1秒で恋に落ちたよ‥‥」
「‥‥はぁ~~、
信じられないなぁ。
せっかくイケメンに生まれたのに恋愛にまるで興味を持てなかったお前がねぇ?
まぁ、良かったじゃないか!
『一生を研究に捧げる』なんて言っていたお前がそこまで想える人に出会えて、俺も嬉しいし‥‥ホッとしたよ!
実は密かに心配してたんだ。
実はお前はゲイで、俺に恋をしているんじゃないかって‥‥」
「天地がひっくり返ったってソレは無い」
「‥ッ、そ、そうか。
よ、良かった、うん‥‥」
「ああ、安心しろ。
ところで博士はまだか?
今日は遅い‥‥どうした?
何か顔色悪いぞ?」
コ~ン、コ~ン、ココッ、コン、コン♪
俺が同僚の顔色を心配している時に、メロディアスなノックが聞こえた。
木製ドアのノック音でこれ程のメロディを奏でられる人物は俺の知る限り一人しかいない。
「博士だ。
やっとお出ましだな」
ここは『魔法と魔術の研究室(仮)』だ。
御年86才のアスター博士を長として、その名の通り、魔法と魔術を研究している。
魔法や魔術は子供の夢物語ではない。
ほんの300年ほど前には、人間は魔法が使えたらしいのだ。
博士が過去の暗号文献を解読して分かった事だ。
なぜ人間は魔法を使えたのか、
なぜ使えなくなったのか、
祝福か、
罰か、
進化か、
退化か‥‥
俺達はそんな、答えが出そうにない研究をしている。
俺もこの研究に生涯をかけて取り組むつもりだった。
だが‥‥俺は昨日真実の愛を得てしまった‥‥だからもう‥‥
「オイッ!
さっさと合言葉を言わんかッ!
いつまでワシをドアの前で待ちぼうけさせるつもりじゃッ!
オランジュメンバー、セロシアメンバー、おらんのかッ!?」
え‥‥
俺は同僚を見る。
合言葉は意味が無いという事で廃止になったはずでは‥‥
「合言葉は復活したんじゃ!
昨日、賊が研究室に入ったからな!
セロシアメンバー、今日はおるんじゃろ!
さあ、早く合言葉を言うのじゃッ!」
パワハラだ‥‥だが、尊敬する博士を無視するわけにはいかない‥‥だが、あの合言葉を‥‥廃止になった時は重荷を下ろしたような気持になったっけ‥‥クソッ‥‥
俺は仕方なしにドアに近付き、合言葉を口にする。
(俺)「ノリが悪い人」
(博士)「イヤンイヤン」
(俺)「つれない素振りは」
(博士)「ダメンダメン」
(俺)「オカンにバレたら」
(博士)「アカンアカン」
‥‥疲れた。
何と3段階認証である。
お互いにお互いを認識しているうえでやる意味が分からない。
俺はガチャリと鍵を開けてドアを開ける。
「ここはあなたの研究室です。
鍵をお持ちなのですから、普通に開けて入って来て下さい」
「分かっておらんな、セロシアメンバー。
研究室の中に賊が侵入済みでワシを待ち構えていないとも限らんじゃろう。
こちら側からも中にいる者の確認をする意味もあるのじゃ」
「中にいる者が賊にナイフを突きつけられて合言葉を口にする可能性は考えないのですか?」
「考えんな。
君達が賊に負けるとは思えない」
はぁ、まぁ、確かに。
俺も同僚のオランジュも学校は騎士科だった。
騎士科には女子がいないから、俺はウルサイ女子から逃れる為に。
オランジュはカワイイ女子にモテる為だったっけ。
‥‥そういえばイベリスも騎士科だったな。
どこから見ても弱そうなのに、剣術の天才で講師も敵わなかったらしい。
とにかく俺は騎士になるつもりもなく騎士科に入ったけど、騎士の才能があった様で、剣術も体術もやはり講師を負かした。
オランジュも同様‥‥ちょっと待て、あの学校、講師がダメすぎなだけでは!?
「王立騎士団から派遣された優秀な現役騎士が講師を務める騎士科を飛び級した二人が、そんじょそこらの賊にやられるとは思えんからのう」
「博士、昨日のは賊じゃありませんってば!
道に迷ってウロついていただけで、俺が道を教えたら素直に帰って行きましたよ」
「聞いただろう、ワシの留守中にコヤツは賊を研究室に入れて茶まで振舞った‥」
「何も怪しい所は無かったからですってば!
俺もちょうど休憩しようと茶を淹れていたところだったから‥‥」
なるほど、同僚は研究室に関係者でない者を招き入れてしまったのか‥‥
人を疑う事を知らない彼らしいが、危機管理能力はゼロどころかマイナスだな。
博士がクレイジーな合言葉を復活させたのは、彼の教育の為だろう‥‥ん?
「この机の上の似顔絵、昨日迷い込んで来たという人か?
女性だったのか‥‥てっきり男だと思った」
「フフン、男だったら茶なんか出すわけないだろう?」
‥‥何で偉そうなんだ。
まあいい、顔色も戻った様で何よりだ。
そんな事より俺はその似顔絵の女性が気になる。
同僚はパッと見ただけで人でも物でも図面でも正確に写し取る事が出来る。
だからその似顔絵も本人そのままなんだろう‥‥
「その女性とよく似たメイドを見ました。
昨日‥‥カトレア伯爵邸で」
博士の目がキラリと光った。
「ブハァッ!!」
「‥‥何て失礼なヤツだ。
人が話している最中にお茶を吹くとは」
「‥ウッ、ゴホ、ケホ、ゴホホッ‥‥セ、セロシア‥‥
いや、お前の‥ゲホッ、話の‥ケホホッ、せいっ、苦し‥‥」
何だと‥‥俺は何かおかしな事を言っただろうか??
「いや、お前、イケメンの無駄遣い、無自覚ヘタレのお前が、何?
一目惚れしたあげく恥ずかしいセリフを吐くから‥‥」
「一目惚れなんてしてないぞ?
一週間前会った時は『クールな美女』って思っただけだった。
昨日だって最初の頃は『心臓に毛が生えている』と思っていた。
だけど‥‥
無表情の仮面が外れた時の彼女は‥‥女神だったんだ‥‥
俺は1秒で恋に落ちたよ‥‥」
「‥‥はぁ~~、
信じられないなぁ。
せっかくイケメンに生まれたのに恋愛にまるで興味を持てなかったお前がねぇ?
まぁ、良かったじゃないか!
『一生を研究に捧げる』なんて言っていたお前がそこまで想える人に出会えて、俺も嬉しいし‥‥ホッとしたよ!
実は密かに心配してたんだ。
実はお前はゲイで、俺に恋をしているんじゃないかって‥‥」
「天地がひっくり返ったってソレは無い」
「‥ッ、そ、そうか。
よ、良かった、うん‥‥」
「ああ、安心しろ。
ところで博士はまだか?
今日は遅い‥‥どうした?
何か顔色悪いぞ?」
コ~ン、コ~ン、ココッ、コン、コン♪
俺が同僚の顔色を心配している時に、メロディアスなノックが聞こえた。
木製ドアのノック音でこれ程のメロディを奏でられる人物は俺の知る限り一人しかいない。
「博士だ。
やっとお出ましだな」
ここは『魔法と魔術の研究室(仮)』だ。
御年86才のアスター博士を長として、その名の通り、魔法と魔術を研究している。
魔法や魔術は子供の夢物語ではない。
ほんの300年ほど前には、人間は魔法が使えたらしいのだ。
博士が過去の暗号文献を解読して分かった事だ。
なぜ人間は魔法を使えたのか、
なぜ使えなくなったのか、
祝福か、
罰か、
進化か、
退化か‥‥
俺達はそんな、答えが出そうにない研究をしている。
俺もこの研究に生涯をかけて取り組むつもりだった。
だが‥‥俺は昨日真実の愛を得てしまった‥‥だからもう‥‥
「オイッ!
さっさと合言葉を言わんかッ!
いつまでワシをドアの前で待ちぼうけさせるつもりじゃッ!
オランジュメンバー、セロシアメンバー、おらんのかッ!?」
え‥‥
俺は同僚を見る。
合言葉は意味が無いという事で廃止になったはずでは‥‥
「合言葉は復活したんじゃ!
昨日、賊が研究室に入ったからな!
セロシアメンバー、今日はおるんじゃろ!
さあ、早く合言葉を言うのじゃッ!」
パワハラだ‥‥だが、尊敬する博士を無視するわけにはいかない‥‥だが、あの合言葉を‥‥廃止になった時は重荷を下ろしたような気持になったっけ‥‥クソッ‥‥
俺は仕方なしにドアに近付き、合言葉を口にする。
(俺)「ノリが悪い人」
(博士)「イヤンイヤン」
(俺)「つれない素振りは」
(博士)「ダメンダメン」
(俺)「オカンにバレたら」
(博士)「アカンアカン」
‥‥疲れた。
何と3段階認証である。
お互いにお互いを認識しているうえでやる意味が分からない。
俺はガチャリと鍵を開けてドアを開ける。
「ここはあなたの研究室です。
鍵をお持ちなのですから、普通に開けて入って来て下さい」
「分かっておらんな、セロシアメンバー。
研究室の中に賊が侵入済みでワシを待ち構えていないとも限らんじゃろう。
こちら側からも中にいる者の確認をする意味もあるのじゃ」
「中にいる者が賊にナイフを突きつけられて合言葉を口にする可能性は考えないのですか?」
「考えんな。
君達が賊に負けるとは思えない」
はぁ、まぁ、確かに。
俺も同僚のオランジュも学校は騎士科だった。
騎士科には女子がいないから、俺はウルサイ女子から逃れる為に。
オランジュはカワイイ女子にモテる為だったっけ。
‥‥そういえばイベリスも騎士科だったな。
どこから見ても弱そうなのに、剣術の天才で講師も敵わなかったらしい。
とにかく俺は騎士になるつもりもなく騎士科に入ったけど、騎士の才能があった様で、剣術も体術もやはり講師を負かした。
オランジュも同様‥‥ちょっと待て、あの学校、講師がダメすぎなだけでは!?
「王立騎士団から派遣された優秀な現役騎士が講師を務める騎士科を飛び級した二人が、そんじょそこらの賊にやられるとは思えんからのう」
「博士、昨日のは賊じゃありませんってば!
道に迷ってウロついていただけで、俺が道を教えたら素直に帰って行きましたよ」
「聞いただろう、ワシの留守中にコヤツは賊を研究室に入れて茶まで振舞った‥」
「何も怪しい所は無かったからですってば!
俺もちょうど休憩しようと茶を淹れていたところだったから‥‥」
なるほど、同僚は研究室に関係者でない者を招き入れてしまったのか‥‥
人を疑う事を知らない彼らしいが、危機管理能力はゼロどころかマイナスだな。
博士がクレイジーな合言葉を復活させたのは、彼の教育の為だろう‥‥ん?
「この机の上の似顔絵、昨日迷い込んで来たという人か?
女性だったのか‥‥てっきり男だと思った」
「フフン、男だったら茶なんか出すわけないだろう?」
‥‥何で偉そうなんだ。
まあいい、顔色も戻った様で何よりだ。
そんな事より俺はその似顔絵の女性が気になる。
同僚はパッと見ただけで人でも物でも図面でも正確に写し取る事が出来る。
だからその似顔絵も本人そのままなんだろう‥‥
「その女性とよく似たメイドを見ました。
昨日‥‥カトレア伯爵邸で」
博士の目がキラリと光った。
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