あと6日で王太子を振り向かせたい王女は護衛にドキドキしている場合ではない!

ハートリオ

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01 いつもの呼び出し…ではない?

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「あぁもういいッ!」
ダンッ!
ガチャガチャチャッ‥

テナークスは叩きつける様にテーブルに両手をついて立ち上がる。

茶器や花瓶が倒れテーブルの上はグチャグチャに。

テナークスのいつもより激しい怒り。

テーブルの向かいに座るピウスは突然の事に肩が跳ねる。

「‥ハッ‥プルルンッ‥」

(…ん?プルルン?)

「‥くッ、くそッ‥またそうやって蠱惑的に揺らしてッ‥なのに君はッ!」

(?‥何?何を言っているのかしら?)

――とは思ったもののピウスは訊く事はせず目を伏せ沈黙を貫く。

テナークスが何を言おうとどんな態度を取ろうと折れる気はない。

目を伏せているピウスは気付かない。

テナークスの視線がピウスの胸に釘付けになっている事に。


ここはアッロガーンス王都の隠れ家的カフェの特別室。

ピウスはテナークスに呼び出され、まだ1口もお茶を飲んでいないのにこの状況である。

(それにしてもいつもいつも同じ要求を――頭の中はソレだけなのかしら…)

抑えても湧き上がる嫌悪感に心の中で溜息をつくピウス。


ピウスとテナークスはお互い18才になったばかり。
それぞれやんごとなき御身分。

ピウスはカラクテリスティカ王国の第一王女であり、テナークスはアッロガーンス王国の王太子である。

そんな2人は3才の時からの婚約者同士。

ピウスの父であるカラクテリスティカ王が賭けカードゲームで国家予算100年分ほどもアッロガーンス王に負け、『支払えぬなら金の代わりに娘を貰おう』とアッロガーンス王に言われ――二人の王の間で勝手に成立させてしまった婚約。

つまりこの婚約に政治的な意味は無く。
アッロガーンス王のただの悪趣味な悪ふざけなのである。


「3才だぞ!‥私達は3才から婚約している!なのに君は婚約者としての務めをまるで果たしていない!」

(…お互い様ではなくて?)

俯いたままピウスは心の中で答える。

確かにお互い様である。

婚約の経緯はどうあれ3才で婚約した後は二人共良い関係を育もうと努力して来た。

陸続きの隣国だから国境付近の町で定期的にお茶会を設けて。

義務的にではなく3ヶ月に1度は一緒にお茶を楽しみ将来を語り合い…

そんなお茶会は15才でピウスがアッロガーンス王国へやって来てから途絶えた。

結婚準備の一環としての王立学校への留学。

本来2人の距離は縮まるはずだったがこの2年半、何の交流も無いまま。

誕生日のプレゼントや季節の挨拶のカードすら出し合っていない。

ピウスが国賓である事を考えれば異常な事であるがこれにはテナークスの母、アッロガーンス王妃が関わっている。

『最初が肝心。決して甘い顔を見せるな』と息子に厳命しているのだ。

元を辿れば平民出身でありながら王太子を産んだ事で絶大な権力を得て高位貴族令嬢を押しのけて王妃となった女は平民感覚で息子にアレコレ口出しするのだ。

だが2人の関係が冷えた大きな理由の一つは――
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