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02 王女に恋は必要ない
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まぁ男と女であるが故、避けて通れない道ではあるのだが。
若さ故なのかテナークスの持って行き方(この場合誘い方?)が…
「君は私の妃になるのだぞ!‥だったら私の願いを叶えてくれたっていいだろう!?正式な結婚の前に閨を共にするぐらいいいではないか!?」
コレである。
ピウスがアッロガーンスへ来てからというもの、テナークスは交流を絶っておきながら時折ピウスを呼び出してはソレしか口にしなくなってしまったのだ。
15才で初めて要求された時、思いもよらなかった驚きと生理的嫌悪感を覚えて――
ピウスは弟の様に可愛らしかった婚約者が別人になってしまった様で悲しくなり、
次いで『いやコレがこの人なのだ』と失望した。
3ヶ月に1度のお茶会では分からなかっただけ、互いに良い所しか見せ合わなかったものと。
「15才の頃に断られたのは、まぁ、理解は出来る。だが私達は既に成人している!子供じゃないんだ!大人の関係になる事は当然の事なのに!――私の周りの者達はみんな婚約者との睦事を楽しんでいる!――全く、羨ましいよ!彼らの婚約者は優しく理解がある…彼らを心から愛している!そう、愛がある!愛が深いんだ!君には彼女達の爪の垢を煎じて飲んでもらいたいね!…大体、君は私を愛しているのか!?」
(『愛』?)
『愛』とは?
『恋』の先にあるもの?
ピウスは母からの最後の手紙を思い出す。
ピウスが14才の時に儚くなってしまった母。
その最後となる手紙を発見したのは2年半前。
ピウス15才の春。
それは必然だった。
アッロガーンス王国へやって来て
いきなり婚約者に不信感を持った。
今後どう生きたらいいか分からなくなった。
そんな時に導かれるように見つけたのだ。
修道院に母がピウスの為に預けていたドレス。
純白の生地に銀糸の刺繍が美しい…
母の色でも父の色でもない白銀のドレスの内ポケットに隠されていた手紙を。
その冒頭にはこうある。
『王女に恋は必要無いわ。
結婚に恋は必要無い。
結婚は生活で仕事だから。
ましてやあなたは王女。
結婚は国の為。
だから恋を避けなさい――』
目を伏せているピウスの眼にはテーブルに叩きつけたままのテナークスの両手が見える。
(何て大きな手…)
ピウスの眉間に僅かに皺が寄る。
(小さい頃は私と変わらない小さな手だったのに…その手でぶん殴られたらさぞ痛いでしょうね…)
「…何だ、即答出来ないとは何事だ!?
‥わ、私を愛していないのかッ!?」
「‥ハッ!」
テナークスの涙声での苛立たし気な詰問。
こうぶん殴って来たらこう避けて…と頭の中でシミュレーションしていたピウスは質問されていた事を思い出し思考を戻す。
(…お母様のお言葉通りよ。私は王女。国が決めた結婚に不満は無い。半年後には王立学校を卒業してテナークス殿下の妃になる。それが王女としての私の仕事。だから恋は必要ない。
――恋が何なのかも分からないし…だから)
「私達の結婚に愛は必要ありません」
眼も上げず答えるピウスにテナークスはわなわなと震え――
若さ故なのかテナークスの持って行き方(この場合誘い方?)が…
「君は私の妃になるのだぞ!‥だったら私の願いを叶えてくれたっていいだろう!?正式な結婚の前に閨を共にするぐらいいいではないか!?」
コレである。
ピウスがアッロガーンスへ来てからというもの、テナークスは交流を絶っておきながら時折ピウスを呼び出してはソレしか口にしなくなってしまったのだ。
15才で初めて要求された時、思いもよらなかった驚きと生理的嫌悪感を覚えて――
ピウスは弟の様に可愛らしかった婚約者が別人になってしまった様で悲しくなり、
次いで『いやコレがこの人なのだ』と失望した。
3ヶ月に1度のお茶会では分からなかっただけ、互いに良い所しか見せ合わなかったものと。
「15才の頃に断られたのは、まぁ、理解は出来る。だが私達は既に成人している!子供じゃないんだ!大人の関係になる事は当然の事なのに!――私の周りの者達はみんな婚約者との睦事を楽しんでいる!――全く、羨ましいよ!彼らの婚約者は優しく理解がある…彼らを心から愛している!そう、愛がある!愛が深いんだ!君には彼女達の爪の垢を煎じて飲んでもらいたいね!…大体、君は私を愛しているのか!?」
(『愛』?)
『愛』とは?
『恋』の先にあるもの?
ピウスは母からの最後の手紙を思い出す。
ピウスが14才の時に儚くなってしまった母。
その最後となる手紙を発見したのは2年半前。
ピウス15才の春。
それは必然だった。
アッロガーンス王国へやって来て
いきなり婚約者に不信感を持った。
今後どう生きたらいいか分からなくなった。
そんな時に導かれるように見つけたのだ。
修道院に母がピウスの為に預けていたドレス。
純白の生地に銀糸の刺繍が美しい…
母の色でも父の色でもない白銀のドレスの内ポケットに隠されていた手紙を。
その冒頭にはこうある。
『王女に恋は必要無いわ。
結婚に恋は必要無い。
結婚は生活で仕事だから。
ましてやあなたは王女。
結婚は国の為。
だから恋を避けなさい――』
目を伏せているピウスの眼にはテーブルに叩きつけたままのテナークスの両手が見える。
(何て大きな手…)
ピウスの眉間に僅かに皺が寄る。
(小さい頃は私と変わらない小さな手だったのに…その手でぶん殴られたらさぞ痛いでしょうね…)
「…何だ、即答出来ないとは何事だ!?
‥わ、私を愛していないのかッ!?」
「‥ハッ!」
テナークスの涙声での苛立たし気な詰問。
こうぶん殴って来たらこう避けて…と頭の中でシミュレーションしていたピウスは質問されていた事を思い出し思考を戻す。
(…お母様のお言葉通りよ。私は王女。国が決めた結婚に不満は無い。半年後には王立学校を卒業してテナークス殿下の妃になる。それが王女としての私の仕事。だから恋は必要ない。
――恋が何なのかも分からないし…だから)
「私達の結婚に愛は必要ありません」
眼も上げず答えるピウスにテナークスはわなわなと震え――
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