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07 王太子の胸の内
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「…あれはピウス姫だな…デカい男は護衛か?‥何か揉めてないか?」
王家の馬車の中で少し上ずった声でそう言うのはアッロガーンス王国王太子であるテナークス・アッロガーンス。
想定外のピウス姫の出現に動揺する心を誤魔化そうとして逆に上ずった声だが…
「えー?遠くて分かりませんわぁ…見間違いじゃありません?」
テナークスのそんな心の機微には一切気付かず。
乱れたドレスを侍女に直させながら窓の外を見もせず答えるのはクピドゥス・ドロースス男爵令嬢。
(見間違いなどするものか)
遠目でも分かる、朝日に艶めく薄葡萄色の様なオーキッドの髪…
上品で高貴で…あんな髪色を持つ者はアッロガーンスにはいない。
「護衛など3年間付けていなかったのに卒業間近に何故…第一護衛を雇う金など…」
ピウス姫のアッロガーンスでの滞在先は修道院で滞在費用はピウス姫の母国カラクテリスティカ王国が負担することになっている。
ピウス姫の母が生前そう決めたのは多分ピウス姫が肩身の狭い思いをしない様に…アッロガーンス側にいい様にされない様にだろう。
そのせいで強行的に王宮に住まわす事が出来ないで来たのだから正しい判断だったんだろうが――こちらとしては迷惑なことだ…ピウス姫を王宮…私の傍に置き無理矢理にでも関係を深めておけば今の様な事にはなっていなかったはずだ…
テナークスはギリと奥歯を噛みしめ眉間に皺を寄せる。
ちなみに…カラクテリスティカはピウス姫の滞在費を出していない。
前正妃が亡くなった後ピウス姫は冷遇されているのだ。
一国の王女が護衛どころか侍女の1人も連れず単身でアッロガーンス王国へやって来た。本来なら傅かれるべき王女が修道院でも皆と共に働いている様だ。
その事実を知った時、当たり前にピウス姫を助けようとした。
だが母上に止められた。
『放っておきなさい。助けてほしいなら自分から頭を下げさせなさい。贅沢三昧に育った王女が貧乏に耐えられるわけ無いんだから。殿下は待っていればいいの。その内音を上げて助けを求めて来る…その時殿下は優しさを要求すればいいのよ。ちゃんと対価を払わせなさい。その身を。タダで助けるなんてつけ上がらせるだけよ』
色々疑問に思ったが女性の事は女性にしか分からない事だと母上の言う通りにした。
…結局ピウス姫が助けを求めて来る事は無く3年が過ぎようとしている…
ッ、私は婚約者に3年間も貧乏生活を送らせてしまった事になる…
母上の言う事など聞かなければ良かった…だが私は女性の事は分からないし…
馬車はどんどん進み王家専用馬車留めに到着する。
視線だけで追ったピウス姫は護衛の方を見ており顔は見えない。
高身長でイケメン体格の護衛は…だがだらしなく伸びた平民特有の茶髪が容貌を隠しておりやはり顔はほとんど見えない。
護衛の分際で他国の王女と何を揉めているんだか…
(ま、まぁ私には関係無い。冷たい女なんか助けてやる義理は無い)
王太子は口をへの字に曲げピウスから視線を外す。
「なぜそんな…」
ピウスは思いがけない護衛の言葉に頬を上気させ言葉に詰まる。
「男は馬鹿な生き物なのですよ」
「まぁ…私もとっても馬鹿よ?‥ふふっ‥
ウィースさんが護衛で頼もしいわ…心強いわ…
嬉しくてよ」
そう言って花がほころぶ様に笑うピウス。
「では、頑張るわね」
くるりと王家の馬車に向き直り歩き出すピウスに護衛は焦る。
「待っ‥そんな顔で‥」
馬車から降りてくるテナークスに集中するピウスに護衛の声は届かないし…
護衛が耳まで赤くなっている事にも気付かない…
王家の馬車の中で少し上ずった声でそう言うのはアッロガーンス王国王太子であるテナークス・アッロガーンス。
想定外のピウス姫の出現に動揺する心を誤魔化そうとして逆に上ずった声だが…
「えー?遠くて分かりませんわぁ…見間違いじゃありません?」
テナークスのそんな心の機微には一切気付かず。
乱れたドレスを侍女に直させながら窓の外を見もせず答えるのはクピドゥス・ドロースス男爵令嬢。
(見間違いなどするものか)
遠目でも分かる、朝日に艶めく薄葡萄色の様なオーキッドの髪…
上品で高貴で…あんな髪色を持つ者はアッロガーンスにはいない。
「護衛など3年間付けていなかったのに卒業間近に何故…第一護衛を雇う金など…」
ピウス姫のアッロガーンスでの滞在先は修道院で滞在費用はピウス姫の母国カラクテリスティカ王国が負担することになっている。
ピウス姫の母が生前そう決めたのは多分ピウス姫が肩身の狭い思いをしない様に…アッロガーンス側にいい様にされない様にだろう。
そのせいで強行的に王宮に住まわす事が出来ないで来たのだから正しい判断だったんだろうが――こちらとしては迷惑なことだ…ピウス姫を王宮…私の傍に置き無理矢理にでも関係を深めておけば今の様な事にはなっていなかったはずだ…
テナークスはギリと奥歯を噛みしめ眉間に皺を寄せる。
ちなみに…カラクテリスティカはピウス姫の滞在費を出していない。
前正妃が亡くなった後ピウス姫は冷遇されているのだ。
一国の王女が護衛どころか侍女の1人も連れず単身でアッロガーンス王国へやって来た。本来なら傅かれるべき王女が修道院でも皆と共に働いている様だ。
その事実を知った時、当たり前にピウス姫を助けようとした。
だが母上に止められた。
『放っておきなさい。助けてほしいなら自分から頭を下げさせなさい。贅沢三昧に育った王女が貧乏に耐えられるわけ無いんだから。殿下は待っていればいいの。その内音を上げて助けを求めて来る…その時殿下は優しさを要求すればいいのよ。ちゃんと対価を払わせなさい。その身を。タダで助けるなんてつけ上がらせるだけよ』
色々疑問に思ったが女性の事は女性にしか分からない事だと母上の言う通りにした。
…結局ピウス姫が助けを求めて来る事は無く3年が過ぎようとしている…
ッ、私は婚約者に3年間も貧乏生活を送らせてしまった事になる…
母上の言う事など聞かなければ良かった…だが私は女性の事は分からないし…
馬車はどんどん進み王家専用馬車留めに到着する。
視線だけで追ったピウス姫は護衛の方を見ており顔は見えない。
高身長でイケメン体格の護衛は…だがだらしなく伸びた平民特有の茶髪が容貌を隠しておりやはり顔はほとんど見えない。
護衛の分際で他国の王女と何を揉めているんだか…
(ま、まぁ私には関係無い。冷たい女なんか助けてやる義理は無い)
王太子は口をへの字に曲げピウスから視線を外す。
「なぜそんな…」
ピウスは思いがけない護衛の言葉に頬を上気させ言葉に詰まる。
「男は馬鹿な生き物なのですよ」
「まぁ…私もとっても馬鹿よ?‥ふふっ‥
ウィースさんが護衛で頼もしいわ…心強いわ…
嬉しくてよ」
そう言って花がほころぶ様に笑うピウス。
「では、頑張るわね」
くるりと王家の馬車に向き直り歩き出すピウスに護衛は焦る。
「待っ‥そんな顔で‥」
馬車から降りてくるテナークスに集中するピウスに護衛の声は届かないし…
護衛が耳まで赤くなっている事にも気付かない…
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