あと6日で王太子を振り向かせたい王女は護衛にドキドキしている場合ではない!

ハートリオ

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06 待ち伏せ(登校時)

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翌日。朝。

ピウスは王立学校の王家の馬車留めの前に立っている。
王太子が登校してくるのを待ち伏せしているのだ。

「そんなに緊張されてはお体に障りますよ」

ピウスにそう声を掛けて来たのは護衛を務めてくれるウィースさんである。

「いつもより早起きされたのでしょう?…あまり睡眠が取れていないのではありませんか?いけません、無理をされてはお体に障りますよ?」

確かにピウスは寝不足である。

昨晩、婚約者テナークス殿下の現状を知ってからベッドに入ってもアレコレと色々な考えが渦巻いて。

全く眠れないまま朝になってしまったのである。

「ご心配ありがとうございます。
ですがこの6日間が勝負で、初日ですから。
…少しぐらいの無理なら大丈夫でしてよ」
「…ですか…それなら緊張を解すのに鼻歌など歌ってはどうですか?」

思わず斜め後ろにいる護衛を振り返るピウス。

「…鼻歌…?」
「ええ。緊張していては上手く行くものも上手く行きません。
鼻歌など歌ってリラックスしてリフレッシュした方がいいかと」

なるほどそれもそうね流石人生経験豊富な人は違うわねと納得するピウスは…

「ララ、ンンッ、ン、ラララ、ララ、ララ、ララ~~‥ハッ!?」

護衛が笑っている!

「な、笑うなんて酷いわ!‥私は一生懸命‥」
「い、いや、すみません、あまりにも可愛かったので‥」
「かわ‥な、な、何を‥大体、私が緊張しているのはあなたのせいでもあるのですよ!?」
「ん…俺ですか?」
「ええ!‥だって確かに護衛はお願いしましたけどまさかお忙しいウィースさんが来るとは…」

スッと。
護衛の眼が冷気を帯びる。

「俺が一番適任だと自負して来たのですが…俺でなければ誰が来ると?」
「え?…それはアクーメンさんとか‥」
「アクーメンより俺の方が強い」
ガサッ

ピウスの言葉を遮るように護衛が断言すればどこかの草むらが揺れたようである。

「…私何か失礼なことを言ってしまった?」
「そんな事は…」
「ですが何か怒っている様よ?」
「それはあなたが‥いえ何も」
「言って?何かしら」

護衛は答えず正門の方に目をやり…

「王家の馬車です。テナークス殿下が御出での様ですよ」
「え‥でも馬車留めにはまだよ。言って?」
「大切な勝負の初日でしょう?集中してください。それと‥」
「ええ何?何で怒っているの?」
「ご自分でお考え下さい」
「ムッ」

(分からないから聞いているのに)

ピウスは釈然としないまま馬車留めで止まった王家の馬車に体を向ける。

「‥ッ、後で説明します」

斜め後ろから護衛の低い声がする。

「…結構です。『後で』は要りません」

ムッとしているピウスはそう切り捨てると王家の馬車に向かって1歩踏み出す。

いや踏み出したのだが踏み出せていない?

後ろから護衛に両肩を柔らかく掴まれている?

と、不意に。
思いのほか耳元で。

「…妬きました」
「ッ」
「俺よりアクーメンに護衛されたいのかと…すみません、馬鹿でした」

生真面目に謝る低く抑えられた声に耳を蹂躙され…

ピウスは耳から蕩けてしまいそうな心地になる…
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