あと6日で王太子を振り向かせたい王女は護衛にドキドキしている場合ではない!

ハートリオ

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「‥えッ!?」
「なッ‥何ぃ!?‥私のチキンサンドを一気食い‥」

テナークスは信じられない思いで護衛の男を見て――ハッとする。

(…!‥この護衛…今朝は髪が顔にかかっていて分からなかったが…
多分、物凄いイケメンだ!)

何故『多分』なのかと言うと、顔の上半分は超イケメンで間違いないのだが…

「そんなに頬張って…駄目よ、喉に詰まらせてしまうわ、ほら、吐き出して!」

そう、ピウスが青ざめて心配する様に。

護衛は咀嚼も出来ないほど口にチキンサンドが詰め込まれている為、顔の下半分はパンパンに膨らんでおり。

(顔の上半分と下半分の落差が酷すぎる…それに…髪は平民の茶色だが瞳は華やかな赤紫…オーキッドパープルとは…貴族の血か…突然変異?…だがオーキッドパープル…どこかで見た色の様な…)

「ふっふふふふふ」

(…何を言っているんだ!?王女に心配されているというのに首を横に振って…3才児か?その状態で何か言っても分かるわけないだろうが!)

「『絶対食べる』って…いいのよ、無理しないで?」

(わ、分かるのか~~い!?)

普通に返すピウスに一人で百面相状態の王太子。

そんな彼をよそに王女と護衛は

「もう…馬鹿な事をして…」
「ふっふふふふふ…ふふふふふふふふふふふふふ…」
「それは聞いたけど…こんなの困るわ、喉に詰まらせたら大変よ…」

(会話、成り立っちゃうのか~~い!)

自分が涙目になっている事にも気付かず王太子は半ば呆れ、半ば感心した目を婚約者に向ける。

(‥にしても…よく笑わないでいられるものだ…目元だけ超イケメンで顔の下半分がパンでパンパンになっている男と対峙して…)

王太子は『さすが王女、それでこそ私の婚約者』と頷きバスケットを見れば。

(もうチキンサンドイッチは無いか…くそっ!私の大好物…お?だがまだ卵サンドが残っているではないか!‥よし、卵サンドも大好き‥)
ガッ!
「‥ハッ!?」
バッ!
「なぁッ!?」

王太子が卵サンドに手を伸ばそうとした瞬間!

まだサンドイッチが残るバスケットが草むらに向けて放り投げられてしまった!?

口がパンパンなまま王女と見つめ合っていたはずの護衛の仕業だ!

「何て事を!」
「まぁ…」

宙を舞うバスケットを視線だけ追いかける一同の目の前で――

シュッ!

!?!

一瞬、黒い影がサッとよぎった様に見えた瞬間、バスケットが消えてしまった!

「‥な、嘘だろ?」

王太子が草むらを探してもバスケットは影も形もない…

狐に抓まれた思いで王女と護衛の方を振り返る王太子は…

(…!やっぱり超イケメン!)

諦めることなく少しずつ咀嚼しついにチキンサンドを完食した護衛は顔の下半分も物凄いイケメンで。

王太子は俯いて震えている婚約者が泣いているのか笑いを堪えているのか判断できない――
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