あと6日で王太子を振り向かせたい王女は護衛にドキドキしている場合ではない!

ハートリオ

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26 怪しい呼び出し

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放課後。

既に空っぽの王家の馬車留めで黄昏れるピウス。

「…テナークス殿下は速攻で帰られたのね…私から逃げるために…」

はあぁと溜息を吐き。

「今日はテナークス殿下と一言も話せていない…何だかやる気だけが空回りだわ」

ピウスは流石にこれはマズいと落ち込む。

が。

次の日もその次の日もピウスは王太子と一言も言葉を交わせず5日目の朝もストゥディウムに申し訳なさそうに王太子に近付くのを阻止されランチを断られ――

午前中の授業が終わり護衛とランチする為に教室を出た所で知らない生徒から手紙を渡される。

見た事のある封蝋…王太子からの手紙の様である。

「手紙?王太子が?あんなに避けてるのに?信じられない…クソ女の罠では?」

護衛ウィースが剣呑な声を出す。

「でもこの封蝋は公用じゃなくて個人的な手紙の時に使う特別なものなの。数人しか知らない秘密の封蝋なのよ…テナークス殿下で間違いないと思うわ…旧校舎のダンス室に一人で来いと書いてある…話がしたいから、ですって」
「一人で?危ない。あなたを襲う気だろう」
「彼はそんな事しないわ…何度も閨を求められたけど断れば無理矢理襲ったりしなかった…凄く怒りはしたけど…」
「だが怪しい。俺も行く。ダンス室に入らなければいいんだろう?」
「それが駄目みたい。『王家深部に関わる話もあるから一人でないのなら話は出来ない。そこは厳しく確認する』って。…テナークス殿下と話せるラストチャンスかもしれないわ…私一人で行くわ」

何も変えられないまま卒業パーティーを迎えるのだけは避けたいピウス。

自分が焦っている自覚はあるがこれがチャンスなのは間違いない。

ピウスの必死な様子にウィースは折れるしかない。

「…ならばアクーメン」
ゴトッ
「頼むぞ」
ゴトゴトッ

隠密行動はアクーメンが得意とするところ。

今も姿は見えないが陰から護衛をしている。

ウィースはアクーメンに護衛を託す事にする。

優秀な彼に任せれば間違いは無いはずだ…

「…じゃあ俺は校庭でもブラブラしていよう」
「ええ、ありがとう」
「気を付けて」
「大丈夫よ…ね、アクーメンさん」
ゴトゴトゴトッ

颯爽と歩き出すピウス。

心はもう旧校舎ダンス室…テナークスとの話し合いに飛んでいる。

(このチャンスを何とかものにしなければ…卒業パーティーでは私をエスコートしてくれる気はあるのかしら…あるわけないわね…男爵令嬢にドレスを送ったらしいもの…でも何とかエスコートだけはお願いと伝えなくちゃ‥)

意気込んで旧校舎ダンス室に入るが――

「あぁら、本当に一人で来たのねぇ、感心感心♪」

馬鹿にした調子でピウスを迎えたのは男爵令嬢クピドゥスである。
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