29 / 65
29 もはやこれまで
しおりを挟む
「…身に覚えがない。そもそも王太子は弁当持参なのか?確か特別室で昼食を取っていると聞いたが…」
「しらばっくれるなぁ!!」
声が割れるほどの叫び。
目尻に光るものを浮かべた王太子は荒い呼吸の中、必死に言葉を次ぐ。
「ピウ、ピウス姫が私の為に手作りしてくれた弁当の事だッ!」
「あ?」
まさかの返答に素の『あ?』を出してしまうウィース。
王太子はビクリと大きく跳ねた後小刻みに震える。
恐かった様だ。
「ピウス姫がせっかく手作りした弁当を自分から断っておいて何を言っているのだ?」
「‥ッ‥だがッ!お前がたいらげる事はないだろう!?し、しかもピウス姫と一緒に!」
「『せっかくのお弁当、捨てるのは勿体ないから後ろにいる護衛にでも食べさせたらぁ』と言ったのは王太子が寵愛する男爵令嬢だった。文句があるならその時に言うべきで今更斬首刑を主張するのは違う」
「ぐぅッ」
いつも黙っているからまともに話すことも出来ない脳筋かと思っていたのに…
しかも200名のバリバリの騎士達に剣を突き付けられながらの落ち着いた主張…
いちいち、
何もかもが、
ムカつくんだよ!
「きっ…決めるのはこの私だ!‥ハハ、私は王太子…しかも『光り輝く王太子』だからだ!貴様が何を言おうが刑はもう決まっている!
騎士団長、執行しろ!」
「………」
「どうした!?」
動かない騎士団長の後頭部に王太子が怒鳴る。
王太子は騎士20名ほどの後ろにいるので先頭の騎士団長の表情は見えない。
騎士団長は振り返って口を開く。
「…恐れながら殿下…
今の話が本当なら…斬首刑は重すぎるのではないかと‥」
「たわけぇッ!!」
また声が割れる王太子。
「だから、それを決めるのは被害者である私だと言っているだろうが!護衛は軽い気持ちで弁当をたいらげたのかもしれないが私が受けた心の傷はあまりにも深いのだ!分かったか?分からなくてもお前は騎士!主である私に背けば反逆罪でお前の首が飛ぶ!さぁ、さっさとやれ!」
「‥ッ‥」
真っ直ぐな男なのだろう、騎士団長は顔色を悪くして大量に汗をかいている。
(だが、己の首を飛ばすわけにはいかないだろうな…)
もはやこれまで。
勝ち目が無かろうが戦わねばならない――
ウィースは剣に手を掛ける。
その気迫に騎士団長は恐怖を感じる。
「‥うッ、け、刑を執行する!‥そ、その者を跪かせろ!」
騎士団長が命を出すが今度は部下が動かない。
いや、動けない。
ウィースの発する『気』が凄過ぎて近寄れないのだ。
「何をやっている!?早くやらんか!」
ギャァギャァ騒ぐ王太子。
騎士団長が仕方なく剣を構えなおせばウィースもスラリと剣を抜く。
「お、歯向かうのだな!我が騎士に剣を向けるのは私に向けるも同然!罪状が一つ増えたな!貴様は謀反を企てた重罪人として死ぬのだ!行け、騎士団長!」
「ご、御免!」
騎士団長が一気に距離を詰めて上段に構えた剣をウィースの首目掛けて振り下ろそうとした瞬間‥
カッ
その場の全員の視界が真っ白になる――
「しらばっくれるなぁ!!」
声が割れるほどの叫び。
目尻に光るものを浮かべた王太子は荒い呼吸の中、必死に言葉を次ぐ。
「ピウ、ピウス姫が私の為に手作りしてくれた弁当の事だッ!」
「あ?」
まさかの返答に素の『あ?』を出してしまうウィース。
王太子はビクリと大きく跳ねた後小刻みに震える。
恐かった様だ。
「ピウス姫がせっかく手作りした弁当を自分から断っておいて何を言っているのだ?」
「‥ッ‥だがッ!お前がたいらげる事はないだろう!?し、しかもピウス姫と一緒に!」
「『せっかくのお弁当、捨てるのは勿体ないから後ろにいる護衛にでも食べさせたらぁ』と言ったのは王太子が寵愛する男爵令嬢だった。文句があるならその時に言うべきで今更斬首刑を主張するのは違う」
「ぐぅッ」
いつも黙っているからまともに話すことも出来ない脳筋かと思っていたのに…
しかも200名のバリバリの騎士達に剣を突き付けられながらの落ち着いた主張…
いちいち、
何もかもが、
ムカつくんだよ!
「きっ…決めるのはこの私だ!‥ハハ、私は王太子…しかも『光り輝く王太子』だからだ!貴様が何を言おうが刑はもう決まっている!
騎士団長、執行しろ!」
「………」
「どうした!?」
動かない騎士団長の後頭部に王太子が怒鳴る。
王太子は騎士20名ほどの後ろにいるので先頭の騎士団長の表情は見えない。
騎士団長は振り返って口を開く。
「…恐れながら殿下…
今の話が本当なら…斬首刑は重すぎるのではないかと‥」
「たわけぇッ!!」
また声が割れる王太子。
「だから、それを決めるのは被害者である私だと言っているだろうが!護衛は軽い気持ちで弁当をたいらげたのかもしれないが私が受けた心の傷はあまりにも深いのだ!分かったか?分からなくてもお前は騎士!主である私に背けば反逆罪でお前の首が飛ぶ!さぁ、さっさとやれ!」
「‥ッ‥」
真っ直ぐな男なのだろう、騎士団長は顔色を悪くして大量に汗をかいている。
(だが、己の首を飛ばすわけにはいかないだろうな…)
もはやこれまで。
勝ち目が無かろうが戦わねばならない――
ウィースは剣に手を掛ける。
その気迫に騎士団長は恐怖を感じる。
「‥うッ、け、刑を執行する!‥そ、その者を跪かせろ!」
騎士団長が命を出すが今度は部下が動かない。
いや、動けない。
ウィースの発する『気』が凄過ぎて近寄れないのだ。
「何をやっている!?早くやらんか!」
ギャァギャァ騒ぐ王太子。
騎士団長が仕方なく剣を構えなおせばウィースもスラリと剣を抜く。
「お、歯向かうのだな!我が騎士に剣を向けるのは私に向けるも同然!罪状が一つ増えたな!貴様は謀反を企てた重罪人として死ぬのだ!行け、騎士団長!」
「ご、御免!」
騎士団長が一気に距離を詰めて上段に構えた剣をウィースの首目掛けて振り下ろそうとした瞬間‥
カッ
その場の全員の視界が真っ白になる――
0
あなたにおすすめの小説
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
白い結婚に、猶予を。――冷徹公爵と選び続ける夫婦の話
鷹 綾
恋愛
婚約者である王子から「有能すぎる」と切り捨てられた令嬢エテルナ。
彼女が選んだ新たな居場所は、冷徹と噂される公爵セーブルとの白い結婚だった。
干渉しない。触れない。期待しない。
それは、互いを守るための合理的な選択だったはずなのに――
静かな日常の中で、二人は少しずつ「選び続けている関係」へと変わっていく。
越えない一線に名前を付け、それを“猶予”と呼ぶ二人。
壊すより、急ぐより、今日も隣にいることを選ぶ。
これは、激情ではなく、
確かな意思で育つ夫婦の物語。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
「いらない」と捨てられた令嬢、実は全属性持ちの聖女でした
ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・エヴァンス。お前との婚約は破棄する。もう用済み
そう言い放ったのは、五年間想い続けた婚約者――王太子アレクシスさま。
広間に響く冷たい声。貴族たちの視線が一斉に私へ突き刺さる。
「アレクシスさま……どういう、ことでしょうか……?」
震える声で問い返すと、彼は心底嫌そうに眉を顰めた。
「言葉の意味が理解できないのか? ――お前は“無属性”だ。魔法の才能もなければ、聖女の資質もない。王太子妃として役不足だ」
「無……属性?」
【完結】もう辛い片想いは卒業して結婚相手を探そうと思います
ユユ
恋愛
大家族で大富豪の伯爵家に産まれた令嬢には
好きな人がいた。
彼からすれば誰にでも向ける微笑みだったが
令嬢はそれで恋に落ちてしまった。
だけど彼は私を利用するだけで
振り向いてはくれない。
ある日、薬の過剰摂取をして
彼から離れようとした令嬢の話。
* 完結保証付き
* 3万文字未満
* 暇つぶしにご利用下さい
婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。
だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。
もしかして、婚約破棄⁉
婚約者の私を見捨てたあなた、もう二度と関わらないので安心して下さい
神崎 ルナ
恋愛
第三王女ロクサーヌには婚約者がいた。騎士団でも有望株のナイシス・ガラット侯爵令息。その美貌もあって人気がある彼との婚約が決められたのは幼いとき。彼には他に優先する幼なじみがいたが、政略結婚だからある程度は仕方ない、と思っていた。だが、王宮が魔導師に襲われ、魔術により天井の一部がロクサーヌへ落ちてきたとき、彼が真っ先に助けに行ったのは幼馴染だという女性だった。その後もロクサーヌのことは見えていないのか、完全にスルーして彼女を抱きかかえて去って行くナイシス。
嘘でしょう。
その後ロクサーヌは一月、目が覚めなかった。
そして目覚めたとき、おとなしやかと言われていたロクサーヌの姿はどこにもなかった。
「ガラット侯爵令息とは婚約破棄? 当然でしょう。それとね私、力が欲しいの」
もう誰かが護ってくれるなんて思わない。
ロクサーヌは力をつけてひとりで生きていこうと誓った。
だがそこへクスコ辺境伯がロクサーヌへ求婚する。
「ぜひ辺境へ来て欲しい」
※時代考証がゆるゆるですm(__)m ご注意くださいm(__)m
総合・恋愛ランキング1位(2025.8.4)hotランキング1位(2025.8.5)になりましたΣ(・ω・ノ)ノ ありがとうございます<(_ _)>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる