あと6日で王太子を振り向かせたい王女は護衛にドキドキしている場合ではない!

ハートリオ

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65 ディニタース帝都にて

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ウィースさんの手紙への返事はこう。

『ウィースさん、お手紙を、貴重な情報をありがとうございます。
私からも報告が。
妖精のお告げがありました。
私とウィースさんは赤ちゃんを授かったのです。
ですから…つまり…
私は戦う決意を致しました。
方法はカクカクシカジカです。
卒業までの6日間、手を尽くして――
自由を勝ち取ります!
つきましては護衛を一人お貸し願えませんでしょうか?
私が動く事によって
或いは悪意に…暴力に晒されるかもしれません。
赤ちゃんを絶対守る為に護衛に守ってもらいたいのです。

明朝から作戦を決行致します。
出来るだけ早く護衛の手配を伏してお願い致します』

唐突な内容に引かれてしまうかしら?
だけど私達の赤ちゃんを守る為なの。
お願いね、パパ!

そしてウィースさんの商会の人に王家の愛妾に関する噂を流してもらい、私はウィースさんに護衛を務めてもらいながら何とか王太子を振り向かせようと努力した。

全く振り向かせられた気がしなかった上に王太子が別れを宣言した事を忘れている…と言うか認識していなかった事が分かって。

メロメロだと思っていた男爵令嬢に対しては男の身勝手さ全開だと分かって。

ますます男爵令嬢に頑張ってもらわなければならないと静かな怒りと共に思った。

そして波乱の卒業パーティー。

王太子の気持ちを知ったらしい男爵令嬢はバッチリ権利を主張し見事王太子妃の座をゲットしてくれた!

当然私と王太子との婚約はなくなり、更に思いもかけず風の妖精や剣の妖精が母や私の復讐をしてくれて――

そして私はカラクテリスティカ王家から除籍されカラクテリスティカとアッロガーンス双方から国外追放処分を受けて

――つまり願った通り晴れて自由の身となって!

愛するウィースさんの腕の中に飛び込めた!

ウィースさんの血筋がとんでもない事は予想外だったけど…

直ぐに結婚して、今はこうして帝国ディニタースの帝都で赤ちゃんが生まれるのを待っている――


【はぁ、自己嫌悪…】
【ウィースさん?どうしたの?】
【君がそうやって幸せそうにお腹を撫でている姿…嬉しいのに悔しくもある…】
【悔しい?】
【情けない嫉妬だよ…赤ん坊に君を取られてしまった様な気がして…
あーーーッ、俺ってこんなだったかなぁ!?自分が情けないんだけどッ…】
【まぁ、ウィースさんたら】

ピウスはくすくす笑って提案する。

【じゃあ、私はウィースさんを撫でるから、ウィースさんが赤ちゃん…お腹を撫でて?】
【!…うん!】

地面に膝をつき、ベンチに座っているピウスのお腹に頬を寄せて優しくお腹を撫でるウィース。

その頭を撫でるピウス。

大きな手で撫でられるお腹が温かい。
フワフワの白銀髪が気持ちいい。

なでなで、なでなで…

【ピウス姫…】
【ウィースさん?どうしたの?】
【幸せすぎる…】
【まぁ、ウィースさんたら】

くすくす、なでなで…


ピウスは穏やかに晴れた空を見上げる。

優しく澄んだ青はお母様の瞳の色に似ている…


お母様――
お母様の手紙がなかったら

既に別れを宣言されていようが
政治的意味の無い婚姻であろうが
私は王女としての立場に縛られて
自分を殺して恋を諦め
テナークス殿下と結婚していたかもしれません

私がブレずに恋を貫けたのは
お母様の強い言葉のお蔭

だから私も
お腹の子が生まれて
年頃になったら伝えるね

『恋を貫きなさい』って

あ!お腹の赤ちゃんがお腹を蹴った!
『分かったよ』って返事したのかもね?

そんなゴキゲンな想像にピウスは思わず鼻歌を口ずさむ。

ゴキゲンなフレーズはきっと天国の母アマータにも届くだろう…


…ラララ、ララララ~ラランラン♪
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