【完】【R18】嫁いだ姉が死んだので、妹の私が嫁ぎ直しましたが、夫に溺愛され過ぎて困っています。

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 ローレンスは二歳になって、やっと歩くようになった。歩けるのが楽しいのか、よく走り回ってよく転んだ。
 マリアを始め乳母も心配して手を繋ぐのだが、直ぐに手を離して走っていってしまう。マリアは、はしたないのを覚悟で生まれてはじめてズボンを履いた。ローレンスに追いつくためだ。あまり走ったこともなかったので、夜にはいつもクタクタだった。

 二歳になっても、ローレンスは言葉を話さなかった。マリアは言葉を話してほしくて話しかけるが、聞いているのかいないのか、ニコニコするばかりで、何も言ってくれなかった。

 執務室へ行くと、レイフがローレンスを抱き上げて、何か仕事の書類を見せていた。ローレンスはその書類をじっと見つめている。従者のジャックが分かるんですかねぇ、と聞いていた。
 マリアに気づいて、従者は一礼した。マリアも挨拶を返して、息子の様子を伺う。母に気づいたローレンスが手を伸ばす。レイフはマリアに息子を抱かせた。
「こんな小さい頃からお仕事させてるんですか?」
「いい補佐役で助かってる」
「あー」
 ローレンスがタイミングよく返事したので二人して笑う。マリアは抱き直した。
「この子は、いつになったらお話してくれるようになるんでしょうね」
「三歳だ」
 冗談だと思ってマリアは聞き流した。
「ジャックさんは、良い人いらっしゃらないんですか?」
 マリアが気軽に聞くと、従者はあからさまに動揺してうろたえた。
「お、わ、私は!そ、その…!」
「ジャックはモニカに懸想している」
「わー!!言わないでくださいよ!」
 従者は顔を真っ赤にして手で覆った。めそめそしだしたので、マリアは追及するのを止めた。
「モニカは、その気が無いようだがな」
 レイフが容赦なく言う。ジャックは更に傷ついて座り込んでしまった。
「そうだったの…ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったんです」
 いえ、とジャックは立ち上がったが、その表情は暗かった。

 一階のホールでローレンスを遊ばせていると、モニカが通りかかった。お坊ちゃまは今日も元気ですねぇ、などと言っている。
「ねぇモニカ、良い人いますか?」
「え?いませんけど」
 当然のように返され、マリアはジャックに同情した。

 レイフに手を引かれ、寝台に座る。マリアの耳を引っ張った。
「旦那さま…どうしてそんなにいじめるんですか」
 レイフは喉元を鳴らして笑う。
「君が笑うから」
「私?」
「言わないほうが良かったな」
 マリアも手を伸ばして耳を引っ張ってみた。無邪気に彼が笑って、ローレンスそっくりだった。
「もうローレンスも二歳です」
「大きくなった。笑った顔などマリアにそっくりだ」
「貴方様に似てますよ」
「いや、君に似てる」
 レイフは先に寝転ぶ。寝台がきしむ。マリアも横になった。
「私…まだ二十二です。まだ、子供、産めます」
「…欲しいのか?」
「貴方は欲しくないのですか」
 レイフは身体を起こした。あぐらをかいて座るので、マリアも起き上がった。
「ローレンスの時は幸い安産だったが、二人目は分からない。もう必要無いとも思っている」
「一人だけでは心もとないでしょう?」
「そんなこと言わないでくれ」
「…すみません…。正直に言いますと、あの子の兄弟に会えるなら、会いたいんです。ローレンスの成長が遅いから欲しいというわけではありません。貴方は良いお方ですから…。家族が増えるのを望むのは、自然なことです」
 沈黙が降りる。マリアは言葉を待った。少し、彼の肩が揺れる。
「──細い体だ」
 レイフがちらりとマリアを見た。マリアは自分の身体に目を落とした。確かに、貧相だとは思う。子を産むとふくよかになるそうだが、マリアはそうはならなかった。
「細くとも役目は果たせます」
「子は授かりものだ。役目ではなく、そう、考えてほしい」
「はい…そう、思います」
「寒いか?」
 脈絡のない問いに、マリアは首を横に振った。レイフはマリアの服のボタンを外し始めた。服の隙間に手を入れて、腰を撫でた。
「腰のラインが好きなんだ。吸い付くような肌も、ずっと触っていたくなる」
「まぁ…私の身体だけが目当てなんですか?」
「白状すると、そうだ」
 マリアは、むくれたフリをしてレイフの頬を引っ張った。レイフは照れたように笑う。何だか可愛かった。
「…一番はじめのとき、君は嫌な思い出だろうが、とても綺麗で、申し訳ないくらいだった。夢中にならないように自制するのが大変だった」
「本当に身体が好きなんですね」
「すねるな」
「いつ私が拗ねたんですか」
 マリアは膝立ちをして、レイフの肩に腕を回した。レイフの手が腰から内ももへ移動する。
 柔らかい、とレイフが呟いた。視線が合わさる。顔を寄せて、舌を合わせる。甘い味がした。



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