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 びく、びく、と、ゆっくり絶頂がやってくる。緩やかな高まりは、初めこそ快楽に身を任せきれたが、いつまでも終わりがなく、際限がないように思えた。
 咥え込んだ肉棒を締め付ける。すっかり形を覚えて、脈打ちすら感じ取れた。既に中には何度も子種を注がれて、膣は熱く重たかった。レイフは一向に止める気配がない。マリアの腰をしっかり掴んで、奥を打ち続けてくる。振動や擦れる感覚がまた快楽となって、内壁が波打つ。
「…っ…!…っひ、あ…はっ…!んあっ…!」
 まともな声はもう出せなかった。レイフのピストンに合わせて腰を逸らす。ぱんぱんと音がなって、子宮口に当たるたびに、そこから快楽が駆け巡った。苦しいのに、気持ちいい。気持ちいいのに、辛くて、マリアが気を失いかけても、凄まじい快楽で呼び戻されて、意識を手放せなかった。
「あああ!…あ、ああっ」
 内壁が痙攣する。強い締め付けにレイフは限界を迎えたらしい。奥へ打ち付けると、何回目かになる熱いものが流れた。おさまりきらず、結合部から溢れ出す。
「んんっ、あ、あついっ…」
 中は精液の熱で火傷しそうだった。レイフのモノの熱だったのかもしれない。身体中、汗が吹き出ていた。
「だ、だんなさまっ、もう、やだっ。も、もう──」
 奥へとモノが押し込まれる。マリアはまた絶頂した。身体がのけ反る。
「ああっ!…うっ…!おか、おかしくっ…なっ…ああ!」
 びくびくと内壁がうねる。足がピンと伸びる。シーツを掴むだけでは足りず、引っ張った。
 ずっと絶頂が止まらない。止めてほしいのに、レイフは責め立てを止めない。ひたすらマリアを愛して、苦しめるのに終始していた。
 また激しいピストンが始まる。どんどんと内臓を押し上げられる衝撃。腹が破れてしまいそうな恐怖の想像が、またマリアの快楽を引き出す。
「こっ、こわれ──あっ…!れいふっ…たすけ──ああ!」
 高い嬌声と共に、膣だけでなくとうとう奥、子宮まで収縮する。マリアには分かった。今まで感じたことのない更に深く激しい痙攣。ぷつんと音がして、マリアはやっと意識を手放した。白い世界が広がっていた。

 レイフが正気に戻ったときには、手遅れだった。はっとしてマリアを見下ろす。両手を投げ出して、涙で濡れた顔。意識はなく、なのに膣は締め付けてくる。生き物のような内壁のうねりに、レイフはたまらない気持ちになってやめられなくなる。彼女の声もたまらない。顔も、体も、全てが自分を喜ばせるために作られているようにしか思えなかった。
 膣の痙攣を止めようと、モノを引き抜く。溢れ出す精液をかき出して、あまり触れないようにする。今のマリアの身体は敏感で、どこを触っても感じてしまう。特に膣の中に精液が入っているといつまでも感じていて、意識のないまま身もだえて、高い嬌声をあげ続ける。レイフはその声をきくと、ぶり返して求めずにいられなくなる。それが、マリアの身体に大きな負担になることは分かりきっていた。だからその前に精液をかき出す必要があった。
 しばらく様子を見守って、膣の痙攣がおさまっただろうと判断して、マリアの身を清める。体の熱を冷ますように冷たい布で汗を拭き取る。噛んでしまった鎖骨に薬を塗り込む。腰の痣はそのままに、シーツを替えて、服を着せる。頬の赤い、熱の残る身体を、扇子で扇ぐ。ぐったりするマリアにキスをして、レイフも横になる。明日、彼女は声が出ないかもしれない。たくさん謝らなければと思いながら、レイフは眠りについた。
 
 先に目を覚ましたレイフは、マリアの様子を伺う。口もとに手を当て、小さな呼吸を確認して、首元に手を当てる。熱を持っていた。冷やした布を用意しようとして、袖を掴まれているのに気づく。マリアは眠り続けている。無意識のいじらしい行動が嬉しく、唇を重ねる。それで終われなくて、レイフは鎖骨にも舌を這わせた。苦い薬の味がした。


 レイフは二度目の人生だった。最初はマリアの姉、カリナと結婚し、ローレンスを授かった。だがカリナは二人目を出産できず、母子ともに命を落とした。
 カリナが息を引き取る前、レイフに言った。
 結婚なんてしたくなかった。他に好きな男がいたと。
 恨み言を吐いてカリナは死んでいった。
 その後、自分も死を迎え、気づいたらカリナと結婚する前に巻き戻っていた。
 だから今度はカリナの望む婚姻をさせた。
 誤算だったのは、妹マリアの存在。
 前のときは、マリアは
 代わりにやって来た新たな人物をどう扱えばいいのか分からず、だから早く跡継ぎを産ませて、後は好きにさせてやろうと思った。望むなら婚姻すらも無効に出来るようにと、一目で不正と分かる羊皮紙をわざわざ使った。
 マリアが産んだのは、紛れもなくローレンスだった。そしてマリアはローレンスを愛してくれた。
 カリナは残念ながらローレンスを愛さなかった。
 マリアがローレンスの為に心砕いているのを見るたびに、マリアを愛してもいいのだと思えるようになった。
 マリアが自分を愛してくれているのを実感すると、前の人生では感じなかった温かみに触れることが出来た。
 大事にしたい。なのに欲が抑えられなくなる。自制出来なくなる。彼女に無体しながら、彼女に支配されているとも感じる。
 この事実を打ち明けるつもりは無かった。時々不審に思われているのに気づいたが、話すつもりは無かった。
 今はマリアだけの人だから、マリアにもそう思っていて欲しかった。

 苦い薬をなめ取る。また塗るのが惜しいと思った。跡を残しておけば、自分のものだ。自分だけの。レイフはそっと鎖骨を撫でた。


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