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第二章 異世界を生き抜くアウトプット
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しおりを挟む「いやぁぁぁぁー!!」
草木も眠る丑三つ時…無数に光る虫の群れに追われ、私は今全力で逃げている!!
森の中を走りながらなんでこんなことになったんだー!と、数分前の自分を振り返る…あれ?これって走馬灯ってやつ??
この異世界に来てから30日くらいたった、ここでの生活にもだいぶ慣れてきてなんとかやってきているが、なんだかんだと、自分の生活環境改善に資金をつぎ込み過ぎてしまい異世界旅行の資金はまったく貯まっていない…ゴロミを見るたびに赤字?の2文字が頭をよぎる日々が続いている。
いやいや、必要経費!服もパンツも無いし日焼け止めだって必須だし、なにより風呂・トイレ無し生活は辛すぎる…無くていい。なんていう選択肢はなかったの。
特にトイレは本当に無いのが辛くて…異世界に来て生きるか死ぬか。
みたいな時はそこまで考えられなかったけど、落ち着いてきた頃、一番に不便を感じたのがトイレで、本当に水洗のありがたさを感じた。
ナビ助にこの世界のトイレ事情について相談したところ、こちらでも水洗式が一般的らしいということがわかった。と言っても日本みたいに下水道使用するわけではなく魔石による簡易転移?とかいうやつで流した物を浄化槽に飛ばしてしまうらしく…仕組みは説明されたけどよくわからなかった。
そうとわかれば!早速ヌルゾンで調べ熟考した結果、仮設タイプを月々でレンタルをする事でトイレ問題は解決した。
仮設タイプってなんだよ、って感じだけど。異世界もやっぱり工事とかある時にトイレないと不便って事らしい
ちなみに、トイレが設置された日は嬉しくて用もないのに出たり入ったりしながら、ちょっと泣いた。
トイレは購入もできたんだけど、そうすると移動や故障したら自力でなんとかしないといけなくて…
この島から出ることも視野にいれている自分としては、この先拠点を動かす時には、なるべく移動しやすい方がいい。仮設タイプは月々レンタルなので壊れた場合の交換・修理・移動の手伝いなどもアフターサービスに入っていた為、こちらに決めた。いらなくなったら返せばいいし。
ちなみに購入してもいらなくなったら中古品でリサイクル回収してくれるらしく、ヌルゾン本当に手広い。そして、ゾンビの環境配慮意識が高い…
あとは、お風呂問題なんだけど。とりあえず滝とかあるし今のところ水浴びでしのいでいる、この島は常夏だから水でもなんとかなる。
お風呂はレンタルだとドラム缶風呂しかなくて!購入品だとジャグジー風呂なんてものがあって…満天の星のもとジャグジー風呂とかロマンでしょ!と現在購入を考えている。
高いんだけど…でも、お風呂妥協したくないんだよね。
お風呂も欲しいしって、GO貯めなきゃでしょ。なんだけど…必要経費がかかり過ぎてこちらもぜんぜん!
タオルとか化粧水だって必要だし…服とか身体を洗うのには別々に石鹸的なもの必要だし…日々疲れた身体のマッサージにはボディクリームだって必要!とつぎつぎ追加購入をしてしまっている。ナビ助には
『マッサージにボディクリームとか生活必需品なの?』
と言われて…
「あたりまえでしょ!ボディクリーム使うから、いい香りとマッサージで疲れを癒し!お肌もツヤツヤなんだから!」
『その甘ったるい匂いさせてるから虫に刺されたりするんじゃないの?まぁ、ボクには関係ないけど』
くっ…確かに虫刺されがひどい、けど別にボディクリームが原因かなんてわからないし!私にとってはなくてはならない必要経費!
ちなみに、この虫刺され問題はアプリ(虫除け)を手に入れた事で解決した
ダウンロードにはGOがかかったけれど…
結果、手元に全然GOが残らないって始末…月々のタイGOに支払う手数料も滞りしかねない事態、1回目やらかしてナンシーに烈火のごとく怒られたのに2回目は許されないだろう。
そろそろ月末…時間がない!
一一一一一一一
そんなわけで、急遽資金繰りが必要となりタイGOで高値で売れる魔法薬の材料である光る虫<夜光蜂>を採取に出る事になった。
この<夜光蜂>、その名の通り夜になると光る蜂で…それだけ聞くとホタルみたい~とか思うけど、ホタルなんて…なまぬるい。
かなり早いスピードで動きが不規則かつ…針には毒があり刺されると火傷したような水ぶくれができて皮膚がただれ、溶けていくっていう厄介な虫な為、捕獲はなかなかに難しい…がその分の価値があり私にとっては今のところ一番の高額品である。
この小島にあるものは、なんでも売れるといっていいほど神島の付加価値は大きい。でも、その中でもやっぱり元々の価値があるもの更にが高い値段がつくってのがこの30日で学んだ事で
いくら神島の付加価値があっても、石は石。砂は砂…。って事。
なのでより価値のあるものを求め、今は魔法薬に必要な素材集めをメインにしていて、神島の魔素を多く含んだ薬草は100gで10.000GOくらいの値段がついたりする。ただ素材の種類や状態もあるから毎回価格は変動もしているけど。
今狙っている虫<夜光蜂>は、薬の材料としては高効果傷薬の材料になるらしい。
薬自体は別の素材でも代用できるが、その効果の差は歴然としていて、できれば欲しい!でも生息地が少ない!っていう作り手からしたら欲しくてしかたない希少素材って事でめちゃめちゃ高値で取引きされる。
失敗と成功を繰り返し、夜光蜂の生体には詳しくなり不規則ながらも動きが読めるようになってきて。
絶妙な間合いをとりながら、光の残像を目で追いつつ捕獲のタイミングを狙う…
注意一瞬怪我一生。だった?一瞬の油断が命とりって事だよね、無駄に怪我してられない!
やつの攻撃してくるタイミングを狙って…...!!
スパッ!
捕獲ネットを自分でも驚く鮮やかさで、振り抜いた。自分の虫取り技術がどんどん向上している…元の世界でなにか役に立つかな虫取名人?みたいな。
「やったー!<夜光蜂>ゲットー!」
これで、ナンシーへの手数料分払ってもGO余るからなにか美味しい肉とか取り寄せちゃおうかな~
ふんふふ~ん。上機嫌で針に気をつけて虫かごに<夜光蜂>を移していた…
数分前の私!バカー!回りを見ろ、1匹に夢中になりすぎて回りを囲まれてるんだぞ!
ブーン…ブーン…ブーン
「ん?…え?…えぇ!?」
ヤ…バイ…!囲まれてる!っと走り出しての、今!
「ムリムリムリー!!」
無数の<夜光蜂>が一斉に向かってくる!あの数に刺されたら間違いなく、あの世に旅立っちゃう!
隙を見て、大きな木の影に滑り込み<すま~ほ>を起動し(虫除け)の出力と範囲を上げる!
目の前まで迫っていた蜂たちが今にも刺す!!勢いで迫ったその瞬間!目を閉じて身体を地面に倒した。自分を中心に周囲が青白く光る。
数分?数秒?その場で、目を閉じたまま身体を丸めて小さくなっていた、痛くない…??から大丈夫かも?片目から薄く目を開けて蜂たちがいないことを確認した
「はぁ、はぁ、セ、セーフ!!」
急いで(虫除け)の出力を元に戻した。
「危なかったー!私の捕まえた<夜光蜂>は??大丈夫??」
虫かごを急いで覗き込み、ちょっと弱いけど光が失われていないことを確認した。
木に寄りかかろうとして、何かが肩にあたるのに気づいた…
「なに?」
木に<夜光蜂>が刺さっている!
針が刺さった部分は黒く変色しボロボロと崩れていた…
「ひぇぇぇー、これってさっき目の前にいて刺されそうだったやつ??身体倒してなかったら私がこの木のようになっていた……と」
背中を冷たい汗が流れたのを感じる、(虫除け)アプリありがとう!
この(虫除け)アプリ、最初ダウンロードした時はたいした威力がなくて…普通に蚊をなんとなく寄せ付けないぐらいで、無駄にダウンロードしたと思っていたんだけど、それでも蚊を寄せ付けない為、毎日使っていたら、レベルアップが早くて気づいたら…
レベルMAX!範囲や出力も自由自在。虫は近づかないどころか発動時にその効果範囲にいたらすぐ逃げないと絶命してしまうレベルになっていた。
もはや、殺虫剤アプリ…
うまく使いこなすようになるまで調整が難しく、自分の範囲何cmとかにすると虫かごに捕まえた虫が気づいたら皆絶命してるなんて時もあった…
レベルMAXまでいき、皮膚表面にだけっていう微調整までできるようになり。虫取りにも大いに役立つアプリになった、今回の夜光蜂も刺しにくるがその寸前で近づけない状態になるので多少安全に捕獲ができるようになった…が、虫がもう死ぬ気で特攻してくる場合、皮膚表面だけの威力では刺されてしまうので、なかなか使い勝手はいいとも言いきれない。
先程の襲撃で、危うく捕らえた<夜光蜂>も絶命させてしまうところだったが、ダメージはあるものの生きていたのでほっとした。
<夜光蜂>は生き死にで価格に大きく差が出るため、絶対に生かしてナンシーに渡したかったし。
残念ながら、刺さった<夜光蜂>はお亡くなりだったが、しっかり回収してかごにいれる。
「本当に…異世界命がけ。はぁぁ…」
ため息を吐きながら、暗い道を帰る足取りは重かった。
こんな風に一喜一憂しながら、異世界生活を今日も頑張っている。
一一一一一一一一一一一一一一一一一一
草木も眠る丑三つ時って、だいたい午前2時くらいをいうらしいです。
第2章もよろしくお願いいたします。
応援ありがとうございます!
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