元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

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親友のトール

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 人数の割に広い教室に入ると、皆の視線が俺に集まる。

「……嘘?」

「アレク様が、一限目の前にきた……?」

「というか、私は久々にお目にかかりましたわ……」

 そんな無礼な言葉も聞こえてくるが、それを咎めるつもりはない。
 なにせ、全て当たってるし……いや、ほんとに。
 そんな視線の中、一番窓際の自分の席に座る。

「はぁ、我ながら酷い生活をしてたもんだ」

「よっ、アレク。遅刻しないでどうしたんだ?」

 気安く声をかけてきたのは、俺の唯一の男友達と言っていいトール-オルクスだ。
 王族ではないが、オルクス侯爵家次男坊なので、俺にもフランクに接してくる。
 お互いにスペアという身であり、昔から気が合う仲だ。

「トールか……いや、特に理由はないさ。ただ、いい加減単位もやばいし」

「あぁー、それな。お前、三日も休んでたしなぁ……そんなに婚約解消がショックだったんか?」

 今日の朝に、カエラがブツブツ言ってたのはこれだ。
 俺は婚約解消されたショックで、学校をサボっていると思われたらしい。
 しかし、単純に……めんどくさかったからだ。

「まあ、そうだね。でも、今は割とスッキリしてるよ。スペアとしての役目も終わりそうだし、そろそろ真面目に人生を考えようかなと」

「もうすぐ王太子ご夫妻のお子さんが生まれるもんなぁ。それに許嫁もいなくなったし。確かに、色々と解放はされたわな。俺の方も兄貴の結婚しそうだし……そろそろ考えるかね」

「どうするつもりだい?」

「とりあえず、家を出ることになるな。兄夫婦と一緒に暮らすとか耐えられん。いっそのこと、冒険者にでもなるかねぇ」

 魔法こそないが、この世界には古来より人を脅かす妖魔という生き物がいる。
 ゆえに、冒険者という職業も存在はしている。

「おいおい、命がいくつあっても足りないだろ」

「だから、相棒……俺と冒険者でもやらね? お前の剣の腕は知ってるし、もう隠す必要もないだろ?」

「うーん……それも悪くないかもね」

 俺の生まれから、この国の要職に就くのは難しくない。
 しかし、またいらぬ誤解を招く可能性もある……王の座を狙っているとか。
 それだけは、勘弁である。
 剣の腕はあるが、それを表立って言ってないのは面倒だからだし。

「まさか、お前から前向きな言葉が出るとは……」

「おいおい、言ってきたのは君だろうに。まあ、まだ時間はあるし。お互いに、ゆっくり考えようよ」

「それもそうだなー。うちも妊娠するまでは動けんし。まだ、二年になったばかりだしな」

 この世界の学業の仕組みは、前の世界に近い。
 平民達が学校に行くことは珍しいが、基本的に貴族はみんな学校に通う。
 六歳から初等部、十二歳から中等部、十五歳から高等部に入る。
 十六歳の成人を迎えた俺達は、高等部二年生という扱いだ。
 その後は、それぞれ専門学校に行くか、就職についたりする。

「うちも、まだ生まれたわけじゃないしね……おっと、チャイムが鳴った」

「んじゃ、真面目に授業を受けるとするかね」

「流石に卒業できないのは困るからね」

「違いない」

 そしてトールも、自分の席に着く。
   それを見送っていると、いつのまにか来ていたセレナと目が合う。

「むぅ……」

「……なんだ?」

何やら睨まれている? どうしてだ?

「……わからん」

そんな事を考えていると、ノイス先生が入ってきて教壇に立つ。
 ロマンスグレーが似合う、スタイルの良いダンディーなお爺さんだ。
 同時に、もう一つある公爵家の出身の方だ。
 我が家である西のミストルティン家、東のティルフォング家といった感じらしい。

「皆様、おはようございます。今日は……二十人全員揃っているようですね。それに、アレク君もいますね。もう、体調はよろしいのでしょうか?」

「はい、ご心配をおかけしました」

「……ほう? 何やら顔つきが変わったような」

「思うところがあり、少し真面目になろうかと思いまして」

「それはそれは……良きことです。これで、安心して呼べますね。メルルさん、入ってきてください」

すると教室の扉から、おどおどした女の子が現れる。

ただ、その頭とお尻からは……何かが生えていた。
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