田舎貴族の学園無双~普通にしてるだけなのに、次々と慕われることに~

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校門にて

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 入学式から一夜明けて、朝がやってくる。
 昨日は、あれから二人に連れ回されて大変だった。
 おかげで、どこに何があるとかわかって助かったけど。

「さて、今日から学校かぁ……何気に楽しみだ」

 生まれてから、俺は学校というものに通ったことがない。
 当然、同世代の人達と関わるのも初めてだ。
 流石に領主の息子だから、地元の同じ年の子達は気を使うしね。

「よし、まずは友達作りをしないと」

 今のところ、知り合いは女の子しかいないし。
 そんなことを考えつつ、食堂に向かう。
 今のところ知り合いもいないので、ささっと済ませて学校へと向かった。



 そして一度門から出て、寮のすぐ隣に併設されている校舎に入る。
 受付の案内に従いまっすぐ行き、一番大きな建物の前にいく。
 そこにはクラス分けが書いてあり、自分の名前を探す。

「おっ、あったね……Aクラスだけ、人数が少ないんだ」

 A,B,Cと三クラスがあり、Aが二十人、その他が三十人という形になっていた。
 そしてその中に、見知った名前が二つもある。

「おっ、セリスにカレンも一緒なのか。それなら、少しは安心できるね」

 すると、後ろから喧騒が聞こえてきた。

「おいおい、獣人がいるぜ」

「ここはエリートが揃う学校なのだが?」

「ご、ごめんなさいぃ……」

 綺麗な白髪をした、頭に耳とお尻に尻尾の生えた少年が蹲っていた。
 その周りには男子生徒が二人いて、前後から取り囲んでいるようだ。
 俺は咄嗟に前に出て、その少年に話しかける。

「大丈夫? どうかした?」

「ふぇ? ぼ、僕に話しかけてるんですか?」

「うん、そうだよ。何処か具合悪い? 保健室に行くかい?」

「え、えっと、そういうのじゃなくて……」

 その時、男子生徒達が俺をも取り囲む。

「おい、邪魔をするなよ」

「そいつは獣人だぞ?」

「それが何? ここは種族も身分も関係ないって聞いてたけど?」

「ははっ! そんなのは建前に決まってるだろ!」

「おいおい、そんなこと言う奴がまだいたのか。ここは選ばれし者だけが通える学園だぞ? それを魔力のないニンゲンもどきを入れるなんて……どうしてるぜ」

 周りの反応を見るに……ここではそういう扱いなのか?
 確かに獣人は以前は差別扱いを受け、奴隷だった過去もあるとか。
 でも今では廃止されているし、うちの領地では人族と同じように暮らしていた。

「獣人も、俺たちと変わりないと思うけど? そもそも、そうやって虐める方がどうかしてるかな」

「なっ!? き、貴様……」

「俺達を誰だと思ってんだ?」

 そして、俺の胸ぐらを掴んでくる。
 ……その瞬間、俺の中で意識が切り替わった。
 これは正当防衛ってことでいいと。

「そうだそうだ! 俺達は侯爵家にも顔がきくんだ!」

「だから、ここでは身分は関係ないって……少し頭を冷やすといい——アクアレイン」

 一瞬で相手と間合いを取り……二人の頭上に局地的豪雨を降らせる!

「あばばばば!?」

「つ、つめてぇ!?」

「別にダメージはないから問題ないよね。さあ、行こう」

「ふぇ? あ、あの……」

 俺はその子の手を引いたまま、校舎の中に入る。
 そして階段を上って行き、一年の教室がある三階に到着する。
 そこで手を離し、ようやくその子と向き合う。
 すると、小柄で可愛らしい顔をしていた。

「ふぅ、ここまでくれば平気かな」

「あ、あの、平気なんですか? あんなことして……」

「ん? うん、別に構わないよ。あれは、あっちが完全に悪いわけだし」

「で、でも、僕は獣人だし……」

「そんなの関係ないよ。少なくとも、俺は気にしないから」

 というより、もしも獣人差別を見過ごすようなら……師匠であるライカさんに合わす顔がない。
 あの人はほぼ無償で、俺の師匠になってくれた。
 そして、何か俺にできることはありますか?と聞いたことある。
 そしたら、もし不当な理由で獣人が虐げられていたら助けて欲しいと。

「本当に? ……変な人」

「いやいや、普通だし」

「そ、そんなことないですっ」

「助けたのにそりゃないよ」

「えへへ、そうでした」

 そう言い、ようやく笑ってくれた。
 そして、今更なことに気づく。
 これは、友達を作るチャンスなのではないかと。

「そういえば自己紹介が遅れたけど、俺はユウマ-バルムンク。一応、伯爵子息ではあるけど作法とか気にしなくて良いよ」

「は、伯爵子息様……え、えっと……僕の名前は、アルトっていいます」

「アルトか……良かったら、俺と友達になってくれない? 実は、ここにきたばかりで知り合いも少ないんだ」

 俺はアルトに向って握手を求める。
 貴重な男の子の友達だ、逃すわけにはいかない。
 じゃないと、女の子の友達しかいなくなってしまう。
 すると、観念したのか……アルトが恐る恐る握り返す。

「ぼ、僕で良かったら……えへへ、ここに来て初めての友達」

「おっ、そうなんだ。とりあえず、俺のことはユウマって呼んでね」

「ふぇ!? よ、呼び捨て!?」

「うん? 友達なら普通でしょ?  身分に関しては、少なくとも俺は気にしないから」

「……ユウマ君でも良い?」

「まあ、良しとしよう」

「それじゃあ……よろしくです」

 よしよし、これで男友達ができたぞ。

 これで、ぼっちにならずに済みそうだ。









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