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カレンのお願い
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学校を出た俺達は、そのまま一般市民が暮らす区域に向かう。
南東地区にあり、住宅街や建物がずらりと並んでいた。
「おお~、家がいっぱいあるね」
「ここにはお店屋さんとか少ないみたいです。もちろん、小さいお店はいくつかありますけど」
「まあ、広くて商店街に行くのも一苦労だしね。俺ってば、迷子になっちゃうよ」
「本当にそうですよね。わたしも、小さい頃は大変でした」
なにせ、都市の中で馬車が走るくらいだ。
王都全体を回ろうと思ったら、一日や二日では到底足りない。
「そういえば、どこに向かってるの? というより、どこに住んでるんだっけ?」
「今は孤児院に向かってますよ。昔住んでた所で、今は貴族街の屋敷に住んでます」
「あっ、なるほど。寮とかには入らないんだ?」
「あそこは王都に屋敷を持っていない貴族や、平民の方用みたいですよ。わたしも寮に入りたかったんですけど……止められちゃいました」
ふむふむ、養子に迎えるくらいだから大事にされてるのかも。
それに、可愛いから男達が群がってきちゃうし。
「うんうん、可愛いと大変だね」
「……ふぇ!? か、可愛い……」
「ん? そういう理由じゃないの? 色々な男が寄ってくるからとか。良い家柄だし、結婚相手とか選びそうだしね」
「た、確かに、結婚相手は選ぶとか何とか……あわわっ」
うんうん、子供がいないから引き取ったって話だし。
となると、同じ家系を婿にするのかも。
いやはや、貴族ってやつは大変だね。
俺は別に独身でいいし、最悪弟が継げば良いし。
「それに……襲われることもあるからかな?」
「……はい、それもあります。寮にいる方々に迷惑をかけるわけにはいきませんから」
「まあ、そうなるよね。結局、アレって何だったの?」
「詳しくは説明してくれなかったんですけど、お父様と敵対してる人達みたいです。わたしを人質にとって、何かを要求しようとしたとか。ちなみに彼らは雇われただけで、何も知らなかったみたいです」
……エリスも暗殺がどうとか言ってたけど、王都ってめんどくさいことしてるんだなぁ。
北からは敵国が攻めてくるし、西にある大国や魔獣や魔物も活性化してるとか。
内部で争ってる場合じゃないと思うけど。
「ふむふむ、ややこしいんだね。まあ、何かあったら言ってね。俺で良ければ力になるから」
「ユウマさん……えへへ、ありがとうございますっ」
「いやいや、友達を助けるのは当然ですから」
「友達……えへへ、それでも嬉しい」
そう言い、無邪気な笑顔を見せる。
まあ、これだと色々と心配になるのは無理もない。
今だって——俺を監視する人達がいるし。
きっと、彼女の護衛だろう。
あんなことがあったし仕方ないね。
◇
そんな会話をしつつ、平民達が暮らすエリアのさらに奥地に行く。
少し寂れてきて、ひと気がなくなっていく。
これはうちでいうスラム街に近い空気感だ。
そして、一軒の大きな建物と教会が並んでいるのが目に入る。
「あのさ、こんなこと言うと失礼だけど……よく、ここに来る許可が出たね」
「いえ、言いたいことはわかります。少し危ない方がいるのも事実ですし……実は、最近は止められていたんです。ただ、お父様がユウマさんがいるなら許可するって」
「えっ? お、俺なの?」
「だからお願いしたんです。その、利用するみたいでごめんなさい! ただ、わたしはお世話になったから来たくて……」
ああ、そういうことね。
だから教室で言い辛そうにしてたってわけだ。
「別に怒ってないから平気だよ。それに頼みを聞くって言ったのは俺だしね。こんなことで良ければ付き合うさ」
「どうして、そんなに優しいのですか? あの時も、見ず知らずのわたしを助けてくれたり……しかも、何も受け取ることなく」
「俺は、そんなに大した人じゃないよ。ただ、死んだ母上がよく言ってたんだ。人は鏡みたいで、人に優しくされたかったらまずは自分が相手に優しくしなさいって。そうすれば周りに素敵な人達が集まるってね……中にはそうじゃない人もいるけど、俺はそれを実行してるって感じ」
「……素敵なお母様だったのですね」
「そう言ってくれると嬉しいよ。そして、実際にカレンみたいな素敵な女の子と知り合いになれたしね?」
「まあ、ユウマさんったら」
すると、教会の中からシスターの格好をしたお婆さんが出てきた。
少し様子を見ていたが、何かに気づき駆け寄ってくる。
「あら……もしかしてカレン!?」
「シエル様! お久しぶりです!」
「まあまあ! 少し見ない間に、こんなに綺麗になって! 今日はどうしたの? 伯爵様の許可は?」
「お父様の許可が下りたので、久々に遊びに来ちゃいました」
二人の空気感は絶妙な親しさを感じ、俺と継母との空気感に似ているかも。
きっと、孤児院での母だったのだろう。
「それなら良かったわ。あの子達も喜ぶし……ところで、その方は?」
「はじめまして、ユウマ-バルムンクと申します。本日はカレンさんにお呼ばれしてきました。身分などは気にせず、気軽に接してください」
「シエル様、ユウマさんは本当に良い方なんですっ」
「ふふ、それは目を見ればわかるわ。まっすぐとした綺麗な目……何もないですが、よろしければ中に入ってください」
こうして許可を得た俺は、カレンと共に孤児院に向かうのだった。
南東地区にあり、住宅街や建物がずらりと並んでいた。
「おお~、家がいっぱいあるね」
「ここにはお店屋さんとか少ないみたいです。もちろん、小さいお店はいくつかありますけど」
「まあ、広くて商店街に行くのも一苦労だしね。俺ってば、迷子になっちゃうよ」
「本当にそうですよね。わたしも、小さい頃は大変でした」
なにせ、都市の中で馬車が走るくらいだ。
王都全体を回ろうと思ったら、一日や二日では到底足りない。
「そういえば、どこに向かってるの? というより、どこに住んでるんだっけ?」
「今は孤児院に向かってますよ。昔住んでた所で、今は貴族街の屋敷に住んでます」
「あっ、なるほど。寮とかには入らないんだ?」
「あそこは王都に屋敷を持っていない貴族や、平民の方用みたいですよ。わたしも寮に入りたかったんですけど……止められちゃいました」
ふむふむ、養子に迎えるくらいだから大事にされてるのかも。
それに、可愛いから男達が群がってきちゃうし。
「うんうん、可愛いと大変だね」
「……ふぇ!? か、可愛い……」
「ん? そういう理由じゃないの? 色々な男が寄ってくるからとか。良い家柄だし、結婚相手とか選びそうだしね」
「た、確かに、結婚相手は選ぶとか何とか……あわわっ」
うんうん、子供がいないから引き取ったって話だし。
となると、同じ家系を婿にするのかも。
いやはや、貴族ってやつは大変だね。
俺は別に独身でいいし、最悪弟が継げば良いし。
「それに……襲われることもあるからかな?」
「……はい、それもあります。寮にいる方々に迷惑をかけるわけにはいきませんから」
「まあ、そうなるよね。結局、アレって何だったの?」
「詳しくは説明してくれなかったんですけど、お父様と敵対してる人達みたいです。わたしを人質にとって、何かを要求しようとしたとか。ちなみに彼らは雇われただけで、何も知らなかったみたいです」
……エリスも暗殺がどうとか言ってたけど、王都ってめんどくさいことしてるんだなぁ。
北からは敵国が攻めてくるし、西にある大国や魔獣や魔物も活性化してるとか。
内部で争ってる場合じゃないと思うけど。
「ふむふむ、ややこしいんだね。まあ、何かあったら言ってね。俺で良ければ力になるから」
「ユウマさん……えへへ、ありがとうございますっ」
「いやいや、友達を助けるのは当然ですから」
「友達……えへへ、それでも嬉しい」
そう言い、無邪気な笑顔を見せる。
まあ、これだと色々と心配になるのは無理もない。
今だって——俺を監視する人達がいるし。
きっと、彼女の護衛だろう。
あんなことがあったし仕方ないね。
◇
そんな会話をしつつ、平民達が暮らすエリアのさらに奥地に行く。
少し寂れてきて、ひと気がなくなっていく。
これはうちでいうスラム街に近い空気感だ。
そして、一軒の大きな建物と教会が並んでいるのが目に入る。
「あのさ、こんなこと言うと失礼だけど……よく、ここに来る許可が出たね」
「いえ、言いたいことはわかります。少し危ない方がいるのも事実ですし……実は、最近は止められていたんです。ただ、お父様がユウマさんがいるなら許可するって」
「えっ? お、俺なの?」
「だからお願いしたんです。その、利用するみたいでごめんなさい! ただ、わたしはお世話になったから来たくて……」
ああ、そういうことね。
だから教室で言い辛そうにしてたってわけだ。
「別に怒ってないから平気だよ。それに頼みを聞くって言ったのは俺だしね。こんなことで良ければ付き合うさ」
「どうして、そんなに優しいのですか? あの時も、見ず知らずのわたしを助けてくれたり……しかも、何も受け取ることなく」
「俺は、そんなに大した人じゃないよ。ただ、死んだ母上がよく言ってたんだ。人は鏡みたいで、人に優しくされたかったらまずは自分が相手に優しくしなさいって。そうすれば周りに素敵な人達が集まるってね……中にはそうじゃない人もいるけど、俺はそれを実行してるって感じ」
「……素敵なお母様だったのですね」
「そう言ってくれると嬉しいよ。そして、実際にカレンみたいな素敵な女の子と知り合いになれたしね?」
「まあ、ユウマさんったら」
すると、教会の中からシスターの格好をしたお婆さんが出てきた。
少し様子を見ていたが、何かに気づき駆け寄ってくる。
「あら……もしかしてカレン!?」
「シエル様! お久しぶりです!」
「まあまあ! 少し見ない間に、こんなに綺麗になって! 今日はどうしたの? 伯爵様の許可は?」
「お父様の許可が下りたので、久々に遊びに来ちゃいました」
二人の空気感は絶妙な親しさを感じ、俺と継母との空気感に似ているかも。
きっと、孤児院での母だったのだろう。
「それなら良かったわ。あの子達も喜ぶし……ところで、その方は?」
「はじめまして、ユウマ-バルムンクと申します。本日はカレンさんにお呼ばれしてきました。身分などは気にせず、気軽に接してください」
「シエル様、ユウマさんは本当に良い方なんですっ」
「ふふ、それは目を見ればわかるわ。まっすぐとした綺麗な目……何もないですが、よろしければ中に入ってください」
こうして許可を得た俺は、カレンと共に孤児院に向かうのだった。
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