田舎貴族の学園無双~普通にしてるだけなのに、次々と慕われることに~

おとら@ 書籍発売中

文字の大きさ
26 / 60

セリスとおはなし

しおりを挟む
 昼休みを終えて教室に戻ると、そこには不機嫌な顔をしたセリスがいた。

 すると、カレンが俺に耳打ちをしてくる。

「ユウマさん、セリスさんに話しかけてくださいね」

「ん? 別にいいけど。ただ、機嫌が悪そうなんだけど……」

「これを治せるのは、ユウマさんしかいません。きっと、お話を聞くだけでいいと思います」

「……わかった、行ってくるよ。もともと、そのつもりではあったしね。今朝から、少し浮かない顔をしてたし」

「えへへ、さすがはユウマさんですっ」

 ある程度覚悟をして、俺は自分の席に戻る。
 そして、恐る恐る話しかけてみることに。

「どうしたの? 何かあった?」

「べ、別になんでもないわ」

「いや、なんでもないって顔じゃないけど?」

「むぅ……だって、私だけ除け者にして……いつの間か女の子に囲まれてるし」

「ごめん、除け者の後が聞こえないや」

「き、聞こえなくていいの」

 除け者……あぁ、俺がカレンと遊んじゃってるからか。
 ふんふん、そりゃ寂しくもなるわな。

「そうだ、この後は実習見学だったね。よかったら、そのあとで剣の打ち合いでもしようか?」

「えっ? 何というか、色気のない会話ね……でも、そっちの方が楽だわ」

「よくわからないけど良いってこと?」

「ふふ、もちろん。さあ、午後の授業も頑張るわよ!」

 先ほどまでの不機嫌は何処へやら、急に元気になった。
 ふと、カレンの方を見ると……ウインクをされる。
 どうやら、これで合っていたみたいだ。




 そして、食後の休憩を挟んで……クラス全員で整備された校庭に出る。
 そこには既に、教官らしき人達が立っていた。
 俺たちが並ぶと、右から順に名前と得意科目を話していく。
 一通り説明したあと、少し自由時間となる。

「ユウマ、何か気になるのあったかしら?」

「うーん、気になったのは、やっぱり剣と風と水かなぁ。武器の扱いは繊細だから、下手に他のを覚えるとクセがついちゃうし。それに他の武器の戦い方はある程度知ってるしね」

「それじゃあ、剣を二個入れるとか?」

「うーん、それだとおもしくないから……火属性でも学ぶかな」

 ミレーユさんの魔法の腕は確かだった。
 あの人が生徒でいるってことは、それより強い人がいるってことだ。

「ふーん、そうなんだ」

「セリスは何を取るの? 魔法を多め? それとも剣一本とか?」

「私は剣と短剣かしら。あとは土魔法ね。もう一つはどうしようかなって」

「そういえば、セリスは一属性なの?」

「あのね……そもそも、魔法を二属性使えるのが珍しいわ」

「……そうなの?」

「そ、そこからなの? あまりに常識すぎて、誰も説明しないわよ。生まれつき使える属性は決まっていて、必ず一個は持っているわ。例えば私なら土とか、カレンなら光とかね。ダブルとかは、千人に一人とか言われてる」

 ……そうだったのか。
 エリスは三つ使えたし、前線にいる強者には二属性使える人もいた。
 だから特には疑問に思ってなかったけど。
 全体で見たら、珍しいってくらいかな。

「まあ、それなら別に驚くほど珍しいわけじゃないね」

「い、いや、十分に珍しいんだけど……大体が宮廷魔導師とか、賢者って呼ばれる人になるくらいだし」

「……そんな人がいるんだ」

 賢者か……きっと賢くて大人で落ち着いた人なんだろう。
 いつか、そんな人に会ってみたいね。

「はぁ……ほんと、常識知らずね」

「いや、面目無い」

「ふふ、仕方ないから私が色々と教えてあげるわ」

「いやー、助かるよ。ほんと、セリスがいてくれてよかった」

「べ、別にこれくらい……これでユウマとの時間とれるかな?」

 家を出てから、セリスには世話になってばかりだ。
 俺にできることで、何かお礼をしたいところだね。

「セリス、何か俺にできることがあったら言ってね。何処にいようと、きっと助けに行くから」

「きゅ、急にどうしたのよ?」

「いや、言ってみただけ。セリスって、昔から意地っ張りなところあったから」

「もう! 悪かったわね!」

「あひゃ……ほっぺを引っ張らないでぇ」

「ふふ、変な顔……でも、ありがとう。その時は、頼りにさせてもらうわ」

 そう言い、すっきりした笑顔を見せる。

 浮かない顔をしてたから、こっちも嬉しくなる。

 やっぱり、女の子には笑顔が一番似合うよね。




 

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

処理中です...