田舎貴族の学園無双~普通にしてるだけなのに、次々と慕われることに~

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セリスの悩み

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 次の日は、午前中だけで授業が終わり放課後となる。

 光の日と闇の日は人によっては少し遠出をしたり、部活動や鍛錬に力を入れるようだ。

 俺は予定通り、セリスと出かけることにする。

「その、カレンはいいの?」

「この間、わたしは二人で孤児院に行きましたから。それに、お父様に呼ばれているので」

「そういえば、そうだったわね。私も明日にはお父様に会わないといけないかな」

 ……二人とも、俺と二人きりの方がいいのかな?
 そういえば、三人で行こうって話もしようと思ったけどやめておこう。
 カレンの安全のためにと思ったけど、伯爵家に帰るなら安心だ。
 エリスとまでいかないけど、腕はそこまで悪くはなかったし。

「だから、今日はお留守番してますっ……頑張ってくださいね?」

「な、なにをよ?」

「えへへ、決まってるじゃないですか」

「わ、わかってるわよ……」

「なんの話?」

「「なんでもないですっ」」

 わぉ……息ぴったり。

 少し疎外感を感じるユウマ君です。

 ……あとで、レオン君の所にでも顔を出しますか。





 制服のまま、二人で並んで校門を出る。

「さてと、なにをしようかな」

「あら、殿方なのにエスコートしてくれないの?」

「いやいや、無茶言わないでよ。こちとら、田舎貴族で有名なんだから」

「ふふ、わかってるわよ。孤児院がいる地区には行ったらしいし、前にカレンと二人で商店会の方は行ったわよね。学校がある地区は、近いからいつでもいけるし……残りは冒険者ギルドとか、武器や防具があるところしかないわね」

「おおっ! 冒険者! 武器や防具ってことはドワーフさんとか!?」

 俺の憧れである職業だ! 後を継がないなら、冒険者か兵士になるって思ってるし。
 ドワーフさんは、会ったことないから話してみたい。

「ほんと……色気も何もないわね。でも、それが私達らしいのかも。確か、ドワーフがやってるお店が一軒だけあるらしいわ。変わり者で、人族の中で商売をしてるとか」

「なるほど、何処にでも変わり者はいるんだね」

「言っておくけど、それは鏡よ? 貴方も、相当変わってるから」

「そう? 俺って、割と普通じゃない?」

「普通の基準がズレてるわ……まあ、いいわ。それが、ユウマの良いところでもあるし。とりあえず、そっちに向かってみましょう」

 ひとまず、二人で並んで歩くことにする。
 乗合馬車を使っても良いけど、今回は急いでるわけじゃない。
 本来の目的は、セリスの息抜きだし。

「そういえばさ、生徒会に入るの?」

「うーん、少し迷ってるのよ。有難いお話だし、興味はあるんだけど」

「確か、部活に入れなくなるんだよね?」

 生徒会は、部費を決めたり学校の行事を行ったりもする。
 そのため、癒着などしないように部活には入れない。

「そうなの。部活もやってみたい気もするし、私なんかで良いのかなって。聞いたら、物凄いメンバーだったから。むしろ、ユウマが入った方がいいんじゃないかって思うわ」

「なるほどなるほど……自分に自信がない感じ?」

「……そうなのかも。家柄が良いだけで、私自身は何か持ってるわけじゃないから。カレンみたいに特別な才能や、ユウマみたいに自分を持ってないから」

「そうかな? 俺は、そうは思わないけどね」

 確かに、セリスには特別な才能はないかもしれない。
 でも別に、才能があるから優秀ってわけでもない。
 それに我が強すぎるのも考えものだ。

「えっ? ……別に無理に慰めてくれなくて良いのよ?」

「うーん、割と本気なんだけど。言い方は良くないけど、平民や貴族とか差別しないし」

「そうかしら? それは、むしろユウマでしょう。私は、貴方のように獣人と仲良くっていうのは難しいかもしれないわ」

「それでも差別はしないでしょ? 多分、知らないだけなんだと思う。今度、紹介するから話してみる?」

 レオンは厳ついからあれだけど、アルトなら平気かな。
 レオンだって、話せばわかってくれると思う。

「そうね、それはお願いしたいかも」

「あと、セリスは優しいよ。人の話を否定しないし、親身になって聞ける人だし。だからクラスの人達だって、セリスの周りに集まるんじゃない? それって凄いことだと思うよ……俺、ぼっちだし」

「それは私の家柄が良いからだわ。ユウマの場合は……うん、ごめんなさい」

「謝られた!? ぐすん……えっと、話を戻すと……別に家柄は関係ないよ。最初はあるかもしれないけど、人柄がよくなければすぐに離れると思うし」

 男女問わずに自然と人が集まる、それは才能の一種だと思う。
 
   あと、無意識的に『この人の言うことなら』って感じることも。

 セリス自身は、あまり気づいてないみたい。

 何か、きっかけとかあればいいけど。


 ◇

 はぁ、自分が情けないわ。

 結局、ユウマやカレンにも気を使わせてしまったし。

 カレンには、そういう時は甘えたら良いんですって言われたけど。

 あ、甘えるってどうやって良いかわからないもの……!

   そもそも、これってデートよね? ユウマはわかってて誘ったのかしら?

 ふと、隣を歩くユウマの顔をちらっと見る。

「ん? どうしたの?」

「う、ううん、なんでもないわ」

 私は別に甘えたいわけじゃなくて……女の子としてしたい気持ちもあるけど。
 でも、自立したしっかりした人になりたい。
 いざって時に、誰かを守れるような人に……ユウマみたいに。
 まあ、本人は自覚ないみたいだけど……ほんと、仕方のない人。

「なんでに睨むのかな?」

「睨んでないわ」

「はびゃびゃ……ほっぺを引っ張らないでぇ」

「ふふ、変な顔」

 貴方は知らない。
 ここに来る際に襲われた時、貴方を凄いと思うと同時に……自分が情けなくなったことを。
 戦う術はあったし、鍛錬だってしてきた……でも、私は震えて動けなかった。
 侯爵令嬢だから、護衛がいるから私は動いちゃダメって……自分に言い訳してた。
 そんな私が生徒会もそうだけど、貴方の側に居たいって思っていいのかな?
 大人しくカイル様の婚約者になって、女性らしくお人形さんみたいにしてた方がいいの?

「えぇ、酷くない? しかも、なんか元気出てるし」

「貴方を見てると、昔から元気になるのよ。私も、負けてられないって……そっか」

「なになに? 何か納得したの?」

「ふふ、そうかもね。ユウマ、ありがとう。私、ちょっと頑張ってみるわ」

「それならいいけど……何かしたっけ」

 きっと、私はユウマに嫉妬もしていた。

 そういえば、昔から稽古で負けるたびに思ってた。

 私は貴方に認められたい、そして頼ってもらいたいのかもしれない。

   自信を持って、貴方の隣に立てる私でいられるように。

  





 
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