田舎貴族の学園無双~普通にしてるだけなのに、次々と慕われることに~

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夕飯

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 指定された場所に行くと、カレンとセリスが待っていた。

 既に良い香りがしてくる。

「あっ、来たわね」

「テントは平気ですか?」

「うん、やってきたよ」

「ありがとう。ちょっと、二人とも……」

「えへへ、目線が合わないですね」

 俺とレオンの視線は、近くにある鍋に釘付けだ。

「はは……ごめんごめん。今日はなんだろ?」

「すまぬ、腹が減ってるのだ。ふむ、良い香りだ」

「今日は、前もって冒険者の方々が仕留めてくれたホーンラビットの肉を使ったシチューよ」

「お野菜とかもあって助かりました。明日以降は、メインだけは自分達で用意しないとですけど」

 確か事前の説明では、初日だけは用意されているとか。
 明日の昼以降は自給自足で、自分で獲物を取らないといけない。
 冒険者や兵士になった場合、サバイバル能力は必須だから理には叶ってる。

「なに、我に任せるが良い。獲物を狩るのは得意だ」

「特に聴覚や嗅覚は頼りにしてるよ」

「ああ、任せておけ」

「それじゃあ、ご飯にしましょうか」

「わたし、よそいますね。お二人は、先に席についてください」

 カレンの指示に従い、指定のテーブル席に着く。
 その周りでは同じようにテーブルに座った生徒達がいる。
 みんな腹ペコでそわそわしているのがわかる。

「しかし、貴族だろうと同じようにしているのだな」

「だって、それがメインだろうから。狙いとしては、特別扱いせずに下の者の気持ちをわかったりとか。雑用とかをすることは少ないからね」

「ふむ、そういうことか。確かに、我の一族もしてもらうことが当たり前になっていたかも知れん……それもあって、父上は俺を送り込んだのか」

「そうかもしれないね。俺自身も立場的には上だから、こういう経験は貴重だよ」

「あとは友好を深めるための処置といったところか」

「うんうん、一緒に食事したり作業するのはいいよね。明日からの連携を楽にするって意味でも」

 そんな会話をしていると、セリスとカレンが器を持ってやってくる。
 そして目の前に、湯気が出ている白いシチューが置かれた。

「おおっ……美味そう」

「うむ、これは乳のシチューか?」

「ええ、そうよ。モルズの乳を使ったみたい」

「モルズ……牛型の魔獣か」

 その突進は木を簡単に破壊し、盾を持った兵士をも吹き飛ばす。
 うちの領地でも危険視されている、手強い魔獣の一つだ。

「へぇ、こんなところにいるんだ」

「ううん、ここに来る冒険者がたまたま狩ったみたいよ」

「ほらほら、皆さん食べましょう。夜は冷えますから、熱いうちに」

「そうだね。それじゃあ、いただきます」

 まずは熱々のシチューを口に運ぶ。
 すると、トロッとした重みのあるスープが口いっぱいに広がる。
 肉の旨味が凝縮されて、濃厚な味わいだ。

「うまっ……」

「あったまるな」

「カレン、やったわね」

「えへへ、ですです。実は、ほとんどセリスさんが作ったんですよ。今回、わたしはお手伝いに回りましたし」

「いやー、あのお転婆だったセリスが……魚を庭で焼いて焦がして、一緒に怒られたセリスが」

「お、おい、その辺りにしておけ」

「へっ? なにが……」

 ふと顔を上げると、鬼の形相のセリスさんが。

「ユウマ? 貴方はもう食べなくても良いかしら?」

「いえ! 食べたいです! ごめんなさい!」

「まったく、仕方ないわね」

「いやー、セリスの作った料理は美味しいなー。これなら、毎日でも食べてみたいなー」

「なっ……」

 セリスが口を開けてパクパクしている。
 まずい、棒読みだったから怒られるのかもしれない。

「ほ、本当に美味しいって!」

「セリスさん、絶対に意味がわかってないです」

「わ、わかってるわよ!」

「「……はぁ」」

 何故か、二人がため息をつく。
 そして、レオンが俺の肩に手を置き、コソコソと耳打ちをしてくる。

「お主は、もう少し女の扱いを学んだ方がいい」

「はい? ……レオンはわかるの?」

「こう見えて、故郷には婚約者がいるからな……女とは恐ろしい生き物なのだぞ」

「うん、それはわかる……肝に命じます」

「「なにをコソコソしてるんです?」」

「「なんでもないです!」」

 二人の問いに、俺とレオンはコクコクと頷く。

 ひとまず、男の友情は芽生えたような気がするのだった。








 
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