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料理人は異世界で生きていく

お互いを知る

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 森に抜けて走り、どうにか日が暮れた頃に帰ってきた。

 カルラが持っている時計で確認してくれたが、時刻は夜の七時を過ぎた辺りだ。

 行きと帰りで三時間、森の中に三時間いた計算になる。

「つ、着くとは思ってなかったわ。普通なら、泊りがけで依頼をする位置よ。最低でも、往復で半日が過ぎるはず。そもそも、森の中の探索にも一日はかかるのに……ほんと、貴方は規格外だわ」

「まあ、俺の足だと馬より圧倒的に速いからな。もちろん、カルラも。あと、森の中は慣れてるし」

「わ、私は風に愛されたエルフよ? 体力ならともかく、速さまで一緒くらいあるなんて……」

「あっ、それがあったな。とりあえず、ステータスを見せようか?」

「……そうね、それが手っ取り早いわ」

 都市に入ったら、すぐ近くにある以前借りた部屋に行く。
 幸い、Aランクハンターがいるので問題なく借りられた。
 誰もいないことを確認し、テーブルの上に水晶を置く。

「それじゃあ、まずは私から見せるわ」

「ん? 良いのか?」

「それはそうよ。私が知りたいって言ったんだから、私から見せるのが礼儀じゃない」

「……」

「な、なによ?」

「いや、なんでもないよ」

 どちらにしろ見せるから、細かいことかもしれない。
 ただ、そういう考え方をする人は好ましいと思った。
 そして、そういう人とは仲良くしていきたい。

「そう? ……変な人ね、とりあえず私から見せるから」

「ああ、どれどれ……」

 ◇

 カルラ-ハート   ハイエルフ

 体力 C+ 魔力  A

 筋力  C    知力  B

 速力  B   技力  B+

 ギフト  不老長寿   風の精霊の祝福  世界樹の守り人

 ◇

 これは……高いのだろうな。
 種類こそ違えど、俺に近いステータスだ。
 不老長寿は、ある意味イメージ通りか。
   風とか世界樹とかも、エルフっぽいし。 

「はい、おしまい。他の人に見られたら面倒だし。ちなみに、これは内緒だからね?」

「ああ、もちろんだ。それでは、俺の方も見せるとしよう」

 俺もステータスを見せるとカルラの顔が強張る。
 一度見たことあるので、そのまま待つことにした。
 ……数十秒後、カルラが俺に視線を向ける。

「へっ? 何、このステータス……S級ランクじゃない。道理で、コカトリスを相手に余裕を持って戦えるわけだわ。でも、それもそうね……まさか、神に呼ばれた迷い人なんて」

「アリアさんにも言われたが、やはり俺のステータスは高いのか」

「高いなんてもんじゃない、ほとんど最強クラスに近いわね。私の知る限りだと、この国では五本の指に入ると思うわ。全く、私が負けるわけよ」

「……全然実感がわかない」

 そういや、普通の冒険者の強さとか知らない。
 アリアさんですら、強い方だとは聞いてはいるが。
 そういう普通の冒険者と稽古でもすればわかるか。

「まあ、無理もないわね。大体、送られる時に生きていけるように特別な力を授かるから。むしろ、よく増長しないわね……ほんと、面白い人間」

「増長は身を滅ぼすと育ての親に教わったからな。それより、随分と詳しい気がするが?」

「そりゃそうよ、ハイエルフは長生きなんだから。私はまだ若いけど、長老クラスは五百年生きてる方もいるし。迷い人に会ったことある人が何人か生き残ってるから」

「な、なるほど……アリアさんにも聞いたが、何か目的があって呼ばれたのか?」

「うーん、そういうわけではないみたいね。あえて言うなら、世界のバランスを保つためとか聞いたことはあるけど。あちらとこちらは繋がっていて、どちらが消えても両方消えるとか。詳しいことは、長老クラスじゃないとわからないわ」

 世界のバランス……繋がってる……さっぱりわからん。
 多分、考えたらダメなやつだと思う。
 そもそも、そんなに頭は良くない。

「……聞いたところでわからなそうだから良いや。変に気になって困りそうだ」

「ふふ、それが正解ね。それより、貴方がいた世界はどんなところなの?」

「うーん、そうだなぁ……」

 俺は出来る限り分かりやすく、カルラに説明をする。
 同時に、カルラからもエルフのことなどを聞く。
 どんな種族で、どんな性質があるのとか。
 基本的に風魔法や弓を得意として、森の奥地に住む一族らしい。

「それじゃあ、結構平和な世界なのね?」

「俺の国に限って言えばだけど。他のところでは、そうでもないよ」

「それは、どこの世界も一緒よ……この国は割と平和だけど、戦争をしてる国もあるし。さて、それじゃ報告に行きましょ。いい加減、お腹が空いてるし」

「ああ、ハクも待ってるしな」

「ええ、アリアも心配してそわそわしてるわよ」

 そして、二人でハンターギルドに向かう。

 お互いの秘密を知ったので、少し距離が近くなった気がした。
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