若返った老騎士の食道楽~英雄は銀狼と共に自由気ままな旅をする~

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ワシの所為?

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さて、儂のお節介癖が発動しそうじゃが。

それは当然、相手に押し付けるべきではない。

なので、その場では頷き、別々に冒険者ギルドに向かう。

そして儂がオルトスを連れて入ると……視線が一気に集まる。

「うむ、やはり目立つか」

「ウォン?(なんか見られてるのだ?)」

「そりゃ、お主がいるからのう」

「ウォン(ふふん、我はフェンリルなので当然なのだ)」

……実際問題、此奴をいつまでシルバーウルフと誤魔化せるか。
今日も思ったが大分重くなってきたし、ここから成獣までは意外と早いかもしれん。
そうなると、色々と面倒なことになるか。

「……ならば、儂がランクを上げればいい。フェンリルを連れていてもおかしくないように」

「ウォン?(主人?)」

「いや、何でもない。さて、まずは掲示板を見てみるとしよう」

栄えてる街のギルドだけあって、中は結構広い。
故にアリア殿は見つけられなかったが、先に依頼を見繕うことにする。
掲示板を眺めると、魔獣や妖魔退治から荷運びや護衛など多岐に渡るが……その数に驚く。

「流石は栄えてるだけあって依頼も豊富じゃな」

「ウォン?(どれにするのだ?)」

「ほとんどの有り金を渡してしまったので、依頼料が高いものかのう」

「ウォン(かっこつけるからなのだ)」

「ばかもん、大人の男からカッコつけを取ったら何が残るというのだ」

と言いつつも、お金がなくてはどうにもならない。
そして、眺めていると……とあることに気付く。
討伐系や護衛依頼などは人気なのか数が少ないが、端っこの方に雑務系の依頼が多いことに。

「これは悪意で場所を変えた訳ではなさそうじゃな」

「ウォン?(どういう意味なのだ?)」

「紙の古さから、おそらく塩漬けになっている依頼と見た。長く貼ってあるので、新規の依頼ではないのだろう」

「ウォン(なるほど……まあ、主人に任せるのだ)」

「すまんな」

長年の付き合いから、儂がすることはわかったらしい。
儂は討伐系依頼を中心に、余っている依頼票を片っ端から手に取る。
そして、そのまま受付に向かう。
並ぶかと思ったが、何やら慌てて受付の女性がやってくる。

「あ、あの!」

「何じゃろうか?」

「その依頼を受けてくれるのですか?」

「うむ、そのつもりじゃ」

「ありがとうございます! では、こちらで少々お待ちください!」

そう言い、皆が並んでいるところから少し離れた場所に案内される。
そこには人は並んでいないので、席に座って待つことに。
すると、受付の奥から慌てて男性がやってくる。

「お待たせいたしました! あの、このご依頼を受けて頂けると……?」

「うむ、そのつもりじゃ」

「ありがとうございます! では、まずは手続きをいたします!」

「それは構わないが……どういうことじゃろう?」

いきなり受付嬢から、きちんとした身なりの男性に変わるし。
おそらく年齢は二十代後半、眼鏡をかけた真面目そうな青年である。
何より、対応が良すぎる。

「……これは大変失礼いたしました。まずは私はこういうものです」

「ふむふむ……なぬっ? ギルドマスター補佐?」

その名刺にはセドリックという名前とギルドマスター補佐と書いてある。
儂は冒険者ギルドには詳しくはないが、その地位が高いことくらいはわかる。
……何やら、色々と訳ありのようじゃな。

「はい、一応そうなります。実は……このような依頼を受けてくれる人を待っていたのです」

「ふむふむ、どういうことか聞いても? 別に今更辞めたりはしないから安心してくれい」

「はは、随分と古風な感じですね。ですが有り難いです……魔王を倒した英雄シグルド様はご存知でしょうか?」

「……まあ、儂の名前の由来になったくらいじゃし」

儂が冒険者カードを見せると、セドリック殿がため息をつく。
……儂、何かしたかのう。

「そういう方がいるくらいですから……確かに彼の偉業は素晴らしいものです。ですが、そのおかげで弊害もありました。彼に憧れた冒険者達が、

「ふむ……英雄志望か」

「はい、その通りです。ダンジョン探索を求め遠くに行ったり、雑務系の仕事を嫌がったりと」

……これって、儂のせい?
いやいや、それは幾ら何でも。
じゃが、聞いてしまったからには気にしてしまうわい。

「つまり、それによって塩漬け依頼が増えてしまって困っていると?」

「はい、そういうことになります」

「……全部、儂がどうにかしよう」

「ほ、本当ですか!?」

「ランクによっては難しいが、出来る限りやるつもりじゃ」

「ありがとうございます! では、早速書類を作成いたしますね!」

そう言い、嬉しそうに奥へと走っていく。
残されたのは儂と、先程から静かにしているオルトスのみ。
その視線は……儂を哀れんでいた。

「ウォン……(主人……相変わらず難儀な性格なのだ)」

「いうな……儂だって思ったわい」

「ウォン(またユーリスに言われちゃうのだ)」

「それも思ったわい」

ため息をつくユーリスの姿がありありと浮かぶ。

じゃが、これもまた儂の責任じゃろうて。

……本当に我ながら難儀な性格じゃな。
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