反逆の英雄譚~愛する幼馴染が処刑されそうだったので国を捨てることにした~

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二章

とある貴族視点

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  王都にある屋敷の中、俺は怒り狂っていた。

      あまりの腹立たしさに、家具や花瓶を部屋に投げつける。

      それでも怒りは一向に収まらない。
  
     それもこれも、あのクソ息子のせいだ。

「クソッ! 今更出てきやがってクロウめ……余計なことをしてくれる! どうする? いくら縁を切っているとはいえ、俺の息子であることに変わりはない」

「貴方!」

 そんなことを考えていると、妻であるエルラが部屋に駆け込んでくる。

「どうしたエルラ!?」

「さ、宰相様が……」

「失礼しますよ、ごきげんよう。ゼーネスト伯家当主、ロドマン殿ですね?」

 宰相……来たか……早すぎる!
    まだ、何も言い訳を考えていない。
    俺は焦りを抑えつつ、冷静を装う。

「はい、そうです。何か、私にご用でしょうか?」

「ほう?  表向きは動じていないですね?  流石は、腐っても伯爵家当主ですか」

 この……腐っているのはお前の方だろうが!
 次々と、自分の邪魔者を排除しているくせに!
 何処の馬の骨ともしれない婿養子の分際で……!

「……いくら宰相様とはいえ、言い過ぎではありませんか?」

「いえいえ、反逆者の父親にはこれで充分ですね」

「アレは息子などではない!」

 確かに前妻の子であり、血の分けた息子ではある。
 だがとうの昔に捨てたし、そもそも生きているとは思ってなかった。
 数年後に生きていると知ったが……その時には英雄と呼ばれ、逆に手出しができなくなっていた。

「絶縁はしていますが、父親であることに変わりはないでしょう。では、とりあえず死んでもらいましょうかね?」

「なっ!?  何故だ!?」

「色々と余罪も出てきましてね。そちらの奥方からも。相当悪どいことをされているようで……元妻の家の後継を殺したり……」

「ッ~! お前だってやっているだろうが!」

 あまりの言い方に怒りの沸点が超える。
 すると、宰相の空気が変わった。

「お前? これはこれは……」

「ま、待ってくれ! 謝る! ど、どうすればいいんだ!?」

「そ、そうよ!何をすればいいのよ!?」

 忘れてはいけない!
 こいつは、何十人と政敵を始末してきた。
 俺達を殺すことなど容易いだろう。
 俺とエルラは頭下げ、必死に命乞いをする。

「お二人共、死刑です……が、助かる方法がひとつだけあります」

「なっ、なんだ!?」

「カグヤを連れ出し、クロウを殺すことですよ。アレがいると、私の計画に支障が出るのでね。ただし、カグヤは殺してはいけませんよ? アレには使い道がありますから……」

「なに!? 今のあいつは強いのだろう!? 私達では、勝てるわけがない!」

 それに、あいつは俺を憎んでいるはず!
 どっちにしろ、殺されるではないか!

「わ、私も恨まれているわ!」

「それは自業自得でしょう。ですが、手は打ってあります。貴方達には、餌となってもらいます。そして、いざという時のためにを渡します。それがあれば、最悪失敗してもどうにかなるでしょう」

 その提案に俺達が逆らえるわけもなく、仕方ないので了承する。
 その後、宰相バーグ侯から、手順の説明を受けた。
 そして、俺の気が変わった。 
 これなら、確かにいけそうだ。
 あいつも人間だし、もし失敗してもコレがあれば……。

「いいでしょう。無事果たせば、無罪放免ですな?」

「ええ。それさえ果たせば、こちらでもみ消しておきましょう。その後は仲良くできそうですね」

「わかりました。それさえ聞ければ十分です」

 うむ……丁度良いかもしれん。

 アイツは邪魔だった。

 才能もあり正義感も強く、可愛げもない。

 せめてもの慈悲で、追放だけですませてやったが……その内勝手に死ぬだろうと思っていたのに、アイツは生き残っていた。

 幸い、口煩い女は死んだがな。

 だがコレで終わりだ、俺の罪も消えて邪魔者も消える。

 考えようによっては、いいこと尽くめではないか。

 クロウよ、最後に親孝行をさせてやろう——父の為に死んでくれ!
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