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三章
ハクドラのハク
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とりあえず、従魔契約には成功したようだが……。
こいつは、いつになったら舐めるのをやめるのだろうか?
「おい、いい加減にやめろって」
「グル?」
「グル?じゃない……舐めるのをや・め・ろ」
少し怒気を強めて言うと、渋々といった感じで離れる。
全く、身体中がベタベタになってしまった。
「グルルー」
「ハァ……まずは躾が必要か?」
「いえ、大丈夫ですよ。頭が良いですから。今は、ボスができて嬉しいのでしょう」
すると、ドルパさんが言った。
なるほど、今だけならいい。
その時、檻の外でプルプルしているカグヤと目が合う。
「だ、大丈夫……? 噛まない……?」
「ホホ、もう大丈夫なはずです……が、不安でしょうね。すぐにても、契約を結びましょう」
ドルパさんが中に入り、そこに魔法陣を描く。
「アレス殿、ここに血を一滴たらしてもらえますか?」
「わかりました……これでいいですか?」
「ええ、ありがとうございます。ハクドラ、この方と契約を結びたいなら魔法陣の上に乗ってください
すると、ハクドラが魔法陣の上に乗る。
「では……汝、この者を主人と認めるか?」
「グルル!」
「では、血の盟約を結びなさい」
そして魔法陣が光り輝き……消えていく。
次の瞬間、感覚的にわかった。
俺とハクドラの間に、魔力による繋がりができたことを。
「……成立しましたな」
「グルルー!」
「だから、舐めるなっての」
パスを繋いだからか、相手の気持ちがダイレクトに伝わってくる。
嬉しいとか、凄いとか、強いとか。
その後、ようやく落ち着いたので支払いを済ませる。
やはり安くはないので、ほほ手持ちの資金がなくなった。
「ただ、予想より安かったな。正直言って、借金も考えていたのですが」
「ほほっ、うちでも持て余していましたから。何より、これはまだ子どもなのですよ」
「この強さで子供……それは期待できますね」
稼ぐためにも、こいつの力を知るためにも依頼を受けなくては。
すると、柱の後ろに隠れていたカグヤが恐る恐る近づいてきた。
うむ、こういうカグヤも可愛い。
「グルルー!」
「わぁ!? な、なんなの~!?」
ハクドラがカグヤにのしかかるが……ただ、じゃれているだけのようだ。
現にガクヤは潰されてないし、パスからも手加減してるのが通じてくる。
「ただ、どういうことだ?」
「ホホ、クロウさん……相当、お嬢さんのことがお好きなようですな?」
「まあ、そうですね。それがどうかしましたか?」
「その気持ちが、パスを通じて伝わったのでしょう。主人の好きな人という形で。つまり、主人の好きな人に挨拶をしているのかと」
「あっ、なるほど。まあ、いいか……めちゃくちゃ可愛いし」
「クロウ~! 見てないで助けてよ~!」
「グルルー!」
好きな子が獣と戯れる……まさしく、眼福である。
ただ、相手は大きな虎だが。
これにて無事にも契約も済み、とりあえず家に帰ることにする。
しかし、カグヤは頬を膨らませてお怒りである。
これはこれで可愛い……頬をツンツンしたらダメだろうか?
……これ以上、怒らせるのは得策ではないな。
「もう! クロウのバカ! フン!」
「ごめんよ、カグヤ。ほら、お前も」
「グルルー……」
ハクドラがしょぼんとしながら、カグヤに向かって頭を下げた。
「仕方ないわ、許してあげる……ところで、名前はないの?」
「グル?」
「そうか、まずは名前か……白い虎」
「まるでクロウみたいね!」
確かに、今の俺は白髪だ。
もはや、元の黒髪に戻ることはないかもしれない。
「ああ、白き虎と呼ばれていたな。こいつは、ハクドラか」
「シロ?ドラ? ……ハク! ハクがいいわ!」
「グルルー!」
すると、ハクドラが嬉しそうに駆け回る。
「どうやら、気に入ったみたいだな。安直だが、滅多にいないし名前がかぶることもないか。よし、今日からお前の名前はハクだ……わかったか?」
「グルルー!」
「ハク、よろしくね! というわけで……うわぁ……柔らかい」
ずっと我慢してたのであろう。
カグヤがハクの毛に寄りかかり埋もれる。
「グルルー」
「ふふ、フカフカね!」
……良かった。
護衛だけでなく、癒しにもなってくれそうだ。
その後、帰り道の屋台で食事を済ませてから家に帰宅する。
俺は早速、庭に出てハクに説明をすることにした。
「ハク、よく聞け」
「グルッ!」
「俺の護衛は必要ない。俺は強い、わかるな?」
「グルルー」
ハクがこくりと頷く。
パスの効果もあるが、それなりに賢さもありそうだ。
「よし……というわけで、お前の仕事はカグヤの護衛だ。俺の最も大切な人にして、全てをかけて守りたい女性だ」
「にゃにゃ!? にゃに、にゅってんのよ!?」
すると、カグヤが激しく背中を叩く。
「……何も間違ったこと言っていないが?」
「うぅー……」
「グルル?」
ハクが理解したのか、カグヤに擦り寄る。
「そうだ、お前が優先すべきはカグヤだ。俺のことは二の次でいい。俺が死にそうでも、カグヤを守り抜け——これは命令だ」
「ちょっと!?」
「カグヤ、落ち着け。俺も死ぬつもりはない。ただ、傷を負うことはあるだろう。その時に、ハクが主人である俺を優先しないようにだ。そのためには、大袈裟なくらいがちょうどいい」
「ホッ……もう! ビックリしたじゃない!」
俺はハクに念を送る。
……ハク、俺は本気だ。
いざという時は、俺を見捨ててでもカグヤを守り抜け。
「グルル!」
「ど、どうしたのかしら? ハクが、急にシャキッとしたわ」
「さあな」
よし、伝わったか。
これで、カグヤを安心して戦場に出せる。
もちろん、そんなことはさせたくない。
だが、本人が望むのなら仕方ない。
ならば……俺に出来るのは、その手助けをすることだ。
「ふーん……とにかく、これからよろしくね!」
「ハク、よろしく頼む」
「グルルー!」
こうして我が家に、新しい家族が増えたのだった。
その日の昼間は、リハビリの時間にした。
カグヤは、久々の弓の練習。
俺は寝込んでいたので、鈍った身体を動かす。
ちなみに、ハクは庭でゴロゴロとしている。
そんな中、カグヤが、時折近づき……。
「 ハク! にゃーにゃー」
「グル?」
「違うわ! にゃーにゃー」
「……ニャー?」
「ニャー! 可愛い!」
いや、可愛いのはカグヤだろ……もう、これだけでハクの価値があるのでは?
……いやいや! 目的を見誤ってる場合か!
こいつは、いつになったら舐めるのをやめるのだろうか?
「おい、いい加減にやめろって」
「グル?」
「グル?じゃない……舐めるのをや・め・ろ」
少し怒気を強めて言うと、渋々といった感じで離れる。
全く、身体中がベタベタになってしまった。
「グルルー」
「ハァ……まずは躾が必要か?」
「いえ、大丈夫ですよ。頭が良いですから。今は、ボスができて嬉しいのでしょう」
すると、ドルパさんが言った。
なるほど、今だけならいい。
その時、檻の外でプルプルしているカグヤと目が合う。
「だ、大丈夫……? 噛まない……?」
「ホホ、もう大丈夫なはずです……が、不安でしょうね。すぐにても、契約を結びましょう」
ドルパさんが中に入り、そこに魔法陣を描く。
「アレス殿、ここに血を一滴たらしてもらえますか?」
「わかりました……これでいいですか?」
「ええ、ありがとうございます。ハクドラ、この方と契約を結びたいなら魔法陣の上に乗ってください
すると、ハクドラが魔法陣の上に乗る。
「では……汝、この者を主人と認めるか?」
「グルル!」
「では、血の盟約を結びなさい」
そして魔法陣が光り輝き……消えていく。
次の瞬間、感覚的にわかった。
俺とハクドラの間に、魔力による繋がりができたことを。
「……成立しましたな」
「グルルー!」
「だから、舐めるなっての」
パスを繋いだからか、相手の気持ちがダイレクトに伝わってくる。
嬉しいとか、凄いとか、強いとか。
その後、ようやく落ち着いたので支払いを済ませる。
やはり安くはないので、ほほ手持ちの資金がなくなった。
「ただ、予想より安かったな。正直言って、借金も考えていたのですが」
「ほほっ、うちでも持て余していましたから。何より、これはまだ子どもなのですよ」
「この強さで子供……それは期待できますね」
稼ぐためにも、こいつの力を知るためにも依頼を受けなくては。
すると、柱の後ろに隠れていたカグヤが恐る恐る近づいてきた。
うむ、こういうカグヤも可愛い。
「グルルー!」
「わぁ!? な、なんなの~!?」
ハクドラがカグヤにのしかかるが……ただ、じゃれているだけのようだ。
現にガクヤは潰されてないし、パスからも手加減してるのが通じてくる。
「ただ、どういうことだ?」
「ホホ、クロウさん……相当、お嬢さんのことがお好きなようですな?」
「まあ、そうですね。それがどうかしましたか?」
「その気持ちが、パスを通じて伝わったのでしょう。主人の好きな人という形で。つまり、主人の好きな人に挨拶をしているのかと」
「あっ、なるほど。まあ、いいか……めちゃくちゃ可愛いし」
「クロウ~! 見てないで助けてよ~!」
「グルルー!」
好きな子が獣と戯れる……まさしく、眼福である。
ただ、相手は大きな虎だが。
これにて無事にも契約も済み、とりあえず家に帰ることにする。
しかし、カグヤは頬を膨らませてお怒りである。
これはこれで可愛い……頬をツンツンしたらダメだろうか?
……これ以上、怒らせるのは得策ではないな。
「もう! クロウのバカ! フン!」
「ごめんよ、カグヤ。ほら、お前も」
「グルルー……」
ハクドラがしょぼんとしながら、カグヤに向かって頭を下げた。
「仕方ないわ、許してあげる……ところで、名前はないの?」
「グル?」
「そうか、まずは名前か……白い虎」
「まるでクロウみたいね!」
確かに、今の俺は白髪だ。
もはや、元の黒髪に戻ることはないかもしれない。
「ああ、白き虎と呼ばれていたな。こいつは、ハクドラか」
「シロ?ドラ? ……ハク! ハクがいいわ!」
「グルルー!」
すると、ハクドラが嬉しそうに駆け回る。
「どうやら、気に入ったみたいだな。安直だが、滅多にいないし名前がかぶることもないか。よし、今日からお前の名前はハクだ……わかったか?」
「グルルー!」
「ハク、よろしくね! というわけで……うわぁ……柔らかい」
ずっと我慢してたのであろう。
カグヤがハクの毛に寄りかかり埋もれる。
「グルルー」
「ふふ、フカフカね!」
……良かった。
護衛だけでなく、癒しにもなってくれそうだ。
その後、帰り道の屋台で食事を済ませてから家に帰宅する。
俺は早速、庭に出てハクに説明をすることにした。
「ハク、よく聞け」
「グルッ!」
「俺の護衛は必要ない。俺は強い、わかるな?」
「グルルー」
ハクがこくりと頷く。
パスの効果もあるが、それなりに賢さもありそうだ。
「よし……というわけで、お前の仕事はカグヤの護衛だ。俺の最も大切な人にして、全てをかけて守りたい女性だ」
「にゃにゃ!? にゃに、にゅってんのよ!?」
すると、カグヤが激しく背中を叩く。
「……何も間違ったこと言っていないが?」
「うぅー……」
「グルル?」
ハクが理解したのか、カグヤに擦り寄る。
「そうだ、お前が優先すべきはカグヤだ。俺のことは二の次でいい。俺が死にそうでも、カグヤを守り抜け——これは命令だ」
「ちょっと!?」
「カグヤ、落ち着け。俺も死ぬつもりはない。ただ、傷を負うことはあるだろう。その時に、ハクが主人である俺を優先しないようにだ。そのためには、大袈裟なくらいがちょうどいい」
「ホッ……もう! ビックリしたじゃない!」
俺はハクに念を送る。
……ハク、俺は本気だ。
いざという時は、俺を見捨ててでもカグヤを守り抜け。
「グルル!」
「ど、どうしたのかしら? ハクが、急にシャキッとしたわ」
「さあな」
よし、伝わったか。
これで、カグヤを安心して戦場に出せる。
もちろん、そんなことはさせたくない。
だが、本人が望むのなら仕方ない。
ならば……俺に出来るのは、その手助けをすることだ。
「ふーん……とにかく、これからよろしくね!」
「ハク、よろしく頼む」
「グルルー!」
こうして我が家に、新しい家族が増えたのだった。
その日の昼間は、リハビリの時間にした。
カグヤは、久々の弓の練習。
俺は寝込んでいたので、鈍った身体を動かす。
ちなみに、ハクは庭でゴロゴロとしている。
そんな中、カグヤが、時折近づき……。
「 ハク! にゃーにゃー」
「グル?」
「違うわ! にゃーにゃー」
「……ニャー?」
「ニャー! 可愛い!」
いや、可愛いのはカグヤだろ……もう、これだけでハクの価値があるのでは?
……いやいや! 目的を見誤ってる場合か!
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