49 / 64
おっさん、異世界に慣れる
おっさん、のんびりする
しおりを挟む
軽装に着替えたら、三人で宿を出る。
「しかし、良いのか? 私は、こんな格好だが……」
「ええ、いいと思います。俺が守るので安心してください」
「う、うむ」
クレアさんの格好は白のワンピースに、麦わら帽子をかぶっている。
その西洋美女の姿と相まって、まるで一枚の絵みたいに綺麗だ。
今回はハイキングだし、鎧などはつけなくて良いのではと提案した。
警戒は、俺がしておけば良いだけだし。
「えへへ! お揃いですっ!」
「そうだが……こういうのは私に似合わん」
「そんなことないですよ。ねえ、お父さん?」
「ええ、よくお似合いかと」
「そ、そうか……ありがとう」
ソラもお気に入りの青のワンピースなので、並んでる姿はとても良い。
こう、心が洗われる感じだ。
……きっと、結婚して子供でもいたらこんな感じだったのだろうか。
いやいや、クレアさんに失礼な話だな。
「ねえねえ、クレアさん」
「ん? どうした?」
「その、手をつないでも良いですか?」
「ああ、無論だ」
クレアさんがソラの手を握り、都市の中を歩いていく。
その姿を見るだけで、何故か心が温まるのだった。
馬を一頭借りて、門を出たところで三人で乗り込む。
この世界の馬に当たる魔獣は強く大きく、それくらいは平気みたいだ。
俺が馬の手綱を握って、前にソラ、後ろにクレアさんを乗せる。
「ソラ、しっかり掴まってろよ?」
「うんっ!」
「クレアさんも、平気ですか?」
「う、うむ、こうして後ろに乗ったことなどないのでな。ましてや、こんな格好で……」
クレアさんは、いわゆる横座りというやつである。
そして、俺の服の端をちょこんと掴んでいる状態だ。
「ゆっくりいきますので大丈夫ですよ。それでは……行きますか」
「ハイキング~楽しいな~」
「ふふ、そうだな」
ソラの鼻歌を聞きながら、ゆっくりと馬を走らせるのだった。
そして、三十分くらいで目的地に着く。
そこは目の前が森になっており、その前にはテントがいくつか置かれている。
さらに、その周りには石の壁が設置されていて、冒険者達らしき人達が何人かいたりする。
「ここは……?」
「ここは中堅……その手前くらいの冒険者達の狩場なのだ。故に、ギルドが無償でテントや場所を提供している。軽くだが、防波堤の役割の壁を作ったりな」
「なるほど。ここで泊まり込みで鍛錬したり、連携を深めたりするのですか?」
「ああ、迷宮に入るための訓練にもなる。一度入ったら、中々出れないこともあるのでな。ここなら、ある意味で安全だ。常時、ベテラン冒険者の方が在住しているし。それもあって、ここを選んだんだ」
そういうことか。
たしかに、ここならある程度安心して寛げそうだ。
ちょっとした、キャンプ場のような感じだし。
「わぁ……すごいです! わたし、こういうところに来たの初めて!」
「なら良かったよ。さてソーマ殿、あそこに馬小屋がある。まずは、預けるとしようか」
「ええ、そうですね」
興奮するソラをなだめつつ、まずは馬を預けたら……三人で林の中に入っていく。
すると、すぐにソラが駆け出す。
「わぁーい! 広い広い!」
「ふふ、楽しそうだな。だが、魔物もいるから気をつけないと」
「平気です。俺の気配には入っていないので」
「ん? どういうことだ?」
「いえ、あれから自分の身体の感覚を調べていたのですが……神経を集中させると、自分を中心とした一帯の音や気配をわかるようになりました」
以前、おじさんに聞いたことがある。
剣の達人とは、目を閉じていても間合いに入った瞬間にわかると。
範囲は違うが、その感覚に近いのかもしれない。
「それはすごいな……」
「というわけで、クレアさんものんびりしてくださいね」
「しかし、それではソーマ殿が……」
「平気ですよ、割と自然とやってるので。のんびりしながらでも出来ますから」
「……では、お言葉に甘えるとしよう」
「クレアさん! お父さん! 早く早く!」
その姿を見て……俺たちは顔を見合わせ、同時に微笑むのだった。
「しかし、良いのか? 私は、こんな格好だが……」
「ええ、いいと思います。俺が守るので安心してください」
「う、うむ」
クレアさんの格好は白のワンピースに、麦わら帽子をかぶっている。
その西洋美女の姿と相まって、まるで一枚の絵みたいに綺麗だ。
今回はハイキングだし、鎧などはつけなくて良いのではと提案した。
警戒は、俺がしておけば良いだけだし。
「えへへ! お揃いですっ!」
「そうだが……こういうのは私に似合わん」
「そんなことないですよ。ねえ、お父さん?」
「ええ、よくお似合いかと」
「そ、そうか……ありがとう」
ソラもお気に入りの青のワンピースなので、並んでる姿はとても良い。
こう、心が洗われる感じだ。
……きっと、結婚して子供でもいたらこんな感じだったのだろうか。
いやいや、クレアさんに失礼な話だな。
「ねえねえ、クレアさん」
「ん? どうした?」
「その、手をつないでも良いですか?」
「ああ、無論だ」
クレアさんがソラの手を握り、都市の中を歩いていく。
その姿を見るだけで、何故か心が温まるのだった。
馬を一頭借りて、門を出たところで三人で乗り込む。
この世界の馬に当たる魔獣は強く大きく、それくらいは平気みたいだ。
俺が馬の手綱を握って、前にソラ、後ろにクレアさんを乗せる。
「ソラ、しっかり掴まってろよ?」
「うんっ!」
「クレアさんも、平気ですか?」
「う、うむ、こうして後ろに乗ったことなどないのでな。ましてや、こんな格好で……」
クレアさんは、いわゆる横座りというやつである。
そして、俺の服の端をちょこんと掴んでいる状態だ。
「ゆっくりいきますので大丈夫ですよ。それでは……行きますか」
「ハイキング~楽しいな~」
「ふふ、そうだな」
ソラの鼻歌を聞きながら、ゆっくりと馬を走らせるのだった。
そして、三十分くらいで目的地に着く。
そこは目の前が森になっており、その前にはテントがいくつか置かれている。
さらに、その周りには石の壁が設置されていて、冒険者達らしき人達が何人かいたりする。
「ここは……?」
「ここは中堅……その手前くらいの冒険者達の狩場なのだ。故に、ギルドが無償でテントや場所を提供している。軽くだが、防波堤の役割の壁を作ったりな」
「なるほど。ここで泊まり込みで鍛錬したり、連携を深めたりするのですか?」
「ああ、迷宮に入るための訓練にもなる。一度入ったら、中々出れないこともあるのでな。ここなら、ある意味で安全だ。常時、ベテラン冒険者の方が在住しているし。それもあって、ここを選んだんだ」
そういうことか。
たしかに、ここならある程度安心して寛げそうだ。
ちょっとした、キャンプ場のような感じだし。
「わぁ……すごいです! わたし、こういうところに来たの初めて!」
「なら良かったよ。さてソーマ殿、あそこに馬小屋がある。まずは、預けるとしようか」
「ええ、そうですね」
興奮するソラをなだめつつ、まずは馬を預けたら……三人で林の中に入っていく。
すると、すぐにソラが駆け出す。
「わぁーい! 広い広い!」
「ふふ、楽しそうだな。だが、魔物もいるから気をつけないと」
「平気です。俺の気配には入っていないので」
「ん? どういうことだ?」
「いえ、あれから自分の身体の感覚を調べていたのですが……神経を集中させると、自分を中心とした一帯の音や気配をわかるようになりました」
以前、おじさんに聞いたことがある。
剣の達人とは、目を閉じていても間合いに入った瞬間にわかると。
範囲は違うが、その感覚に近いのかもしれない。
「それはすごいな……」
「というわけで、クレアさんものんびりしてくださいね」
「しかし、それではソーマ殿が……」
「平気ですよ、割と自然とやってるので。のんびりしながらでも出来ますから」
「……では、お言葉に甘えるとしよう」
「クレアさん! お父さん! 早く早く!」
その姿を見て……俺たちは顔を見合わせ、同時に微笑むのだった。
64
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~
御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。
十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。
剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。
十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。
紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。
十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。
自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。
その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。
※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。
そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来?
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる