はぐれ猟師の異世界自炊生活~フェンリル育てながら、気ままに放浪させてもらいます~

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1巻

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 第一章 異世界に迷い込んだようだ


 ここは……どこだ?
 気がついたら、見たことがない植物や生き物に囲まれていた。
 来た道を振り返るが、まるで覚えがない場所だった。

「待て……俺は狩りをしていて……いや、まずは自分自身のことだ」

 俺の名前は真田さなだ日向ひゅうが、三十歳独身の……童貞だ。十八歳の時、両親を交通事故で亡くし、それからは田舎いなかの祖父母に育てられた。祖父から狩猟しゅりょうの技術と剣道を、祖母から料理を叩き込まれた俺は、敬愛する二人が亡くなった後、二人のあといで猟師と料理屋で生計を立てていた。
 今日もその料理屋で出す獲物を狩りに山に来て……そうだ、不思議な雰囲気ふんいきの雄鹿を発見したんだ。それを追っているうちに……ここにいた。だめだ、全然わからん。
 その時、草むらからガサガサと音がした。

「うおっ!」

 突然飛び出してきた何かに身の危険を感じ、俺は反射的にライフルを放つ。
 出てきたのは、黄金のうさぎだった。弾は見事に胴体に当たり、兎はしばらくビクビクしたあと、動かなくなった。不思議なことに、血は出ていない。

「ショック死か……? 黄金の兎なんて、初めて見るぞ」

 すると、今度は聞いたことがない鳴き声が響いた。

「ん? なんだ? いつもより、目がよく見えるような……まるでズームしたみたいだ」

 気になって、そちらを見てみると……燃えるような赤い毛皮の熊らしき生き物と、雪のように真っ白な毛皮の狼らしき生き物が対峙たいじしていた。
 狼も大きいが、熊の方は軽く三メートルを超えていて、かなりの巨体だ。

「俺は一体どこに来てしまったんだ? こんなの、どう考えたって日本の山にはいないぞ」

 ……まずは、落ち着こう。敬愛する祖父じいさんも言っていたじゃないか。

『いいか、ヒュウガ。狩りにおいて一番してはいけないこと……それはあわてることだ。どんな時も冷静であれ。慌てるのは、女性関係だけでいい』
「よし……まずは状況確認だ。俺と奴らの距離は十メートルくらいか」

 どういうわけか、やたらと目が見えることに戸惑とまどいつつ、俺は二匹を観察する。
 熊が炎の息を吐き、狼は氷の息でこれに対抗する。
 なんだ!? ブレスか!? 思わず後退あとずさるが――こんな時こそ慌ててはいけない。
 熊の体には出血こそ見られるものの、余裕がありそうだ。対する狼は所々げており、全身血塗ちまみれ。そしてよく観察すると、後ろには小さい子狼がいた。

「あいつは……子狼を守っているのか?」

 俺にはその姿が、亡き両親と重なって見えた。二人は事故の時に俺をかばって……死んでしまったんだ。
 トドメを刺すつもりなのか、熊の口の周りから炎が漏れる。
 それを見た瞬間――考えるより先に体が動いていた。
 なんだ!? 自分の身体じゃないみたいに速い!?
 俺は一瞬で熊に迫り、そのまま体当たりをかます。
 熊はうなり声を上げながら二メートルほど吹っ飛び、木に激突した。
 あいつの体重が軽かったのか、妙な手応えだが、好都合だ。俺は素早くライフルを構える。
 起き上がった熊は、口を開けて炎を放とうとしている。
 狙うべきは口だな。あせるな……タイミングが大事だ。

「――ここだっ!」

 俺が放った弾は、奴の口の中に吸い込まれ……熊の口の中で爆発が起こった。
 奴の体がぐらりと揺れ、地面に倒れ込む。
 だが、油断してはいけない。生き物は死にかけが一番危険だ。もし生きていた場合、必死で抵抗する。狩りは死んだと思ってからが、勝負なのだ。
 慎重に熊を検分し、動かなくなったことを確認した俺は、狼の様子をうかがう。
 狼は腹を見せて、尻尾を丸めている。これは確か、服従や降参のポーズだったか?
 俺はゆっくり近づいて、狼の状態を確認する。
 メスか。あの子狼の母親ってわけだな。だがマズイな、血が流れすぎている。これは、もう助からないか……

「クゥーン……」

 白い狼は何か訴えるように弱々しく鳴いた。

「ん? どうした? 安心しろ。ここにいる。ゆっくり休むといい」

 見たことのない生き物だろうと、死にゆく命を無下むげにするつもりはない。
 狼はフラフラになりながらも懸命に立ち上がり、子供のところに歩いていく。

「おい、無茶するな! そんな傷で動いたら痛いだろ?」

 狼は何か言いたげな表情で俺を見つめている。
 そして、気を失った子供を口にくわえて俺に渡してきた。

「え? どういうことだ? まさか……俺に、この子を預けると?」
「クゥーン! ククーン!」

 狼はそうだと言わんばかりに激しく首を上下させ、尻尾も振っている。
 俺は狼の子供を抱く。体は温かく、鼓動こどうを感じる。

「……良かった、どうやら生きているみたいだ」

 狼は一瞬安心したような顔をすると、フラフラと森の奥に消えていった。
 俺は、しばらく立ち尽くす。
 どうやら、俺は子供をたくされたようだ。というか……そもそも、ここはどこだ?
 見たことない生き物、場所、まさかな……
 少しすると、子狼が目を覚ました。

「クゥン? ……キャン! キャン!」
「おお!? 落ち着け、大丈夫だ。敵じゃないからな」

 最初は少しおびえていた子狼だが、そのんだ瞳で俺をじっと見つめてくる。
 俺も気持ちが伝わるように、しっかり見つめ返した。
 やがて、気を許したのか、子狼は俺の匂いをぎ、顔をめはじめた。

「うおっ! くすぐったいぞ!? 急にどうした!?」

 改めて、子狼を高く抱き上げてみる。

「大きさは三十センチくらいで……オスだな。お前のお母さんは、どこかへ行ってしまったぞ? 俺と一緒に来るか? 俺も、一人ぼっちなんだ……」

 母親はもう助からない……だから、俺に託したのかもな。
 よくわからないが、子狼は尻尾を振っている。喜んでいるのか?
 まあ、いいか。連れて行くとしよう。親がいないさびしさは、俺も身に染みているからな。
 そういえば、名前をつけてやらなくてはな……何が良いだろう。
 あの狼は氷を吐いていたな。氷……ユキだと可愛かわいすぎるな……なら、セツか。

「よし! 決めた! お前の名前は、セツだ!」
「クゥン? ……キャン!!」

 どうやら、気に入ってくれたようだ。セツはうれしそうに尻尾を振っている。
 それはともかく、俺はこのあとはどうすれば……?
 再び立ち尽くす俺に、セツが首をかしげる。

「……そうだな、このまま突っ立っていても仕方ないか」

 とりあえず、ここは俺の知る世界ではない――まずはその現実を受け入れることにする。
 両親も祖父母も亡くした天涯孤独てんがいこどくの身なので、大した感慨はなかった。
 俺は兎を腰の袋に入れ、背負っていたリュックを確認する。
 とりあえず、水はある。弾はあれで最後だ。
 さすがに熊は持っていけないと思ったが、さっきからやけに身体の調子が良い。
 試しに熊を持ち上げてみたところ……あっさり動かせてしまった。

「はあ!? なんだこの軽さは? 羽毛布団みたいだ! どういうことだ?」

 自分で言うのもなんだが、元々俺は力持ちだ。身長は百九十センチあるし、体格にも恵まれていている。だが……いくらなんでもこれはおかしい。
 戸惑う俺を、セツが不思議そうな顔で見上げてくる。

「そうだな……考えていても、仕方ないか」

 熊をおんぶのような形で背負い、前に抱えたリュックの中にセツを入れる。
 そして片手で猟銃を持ち、歩き出す。
 こんなに重そうな熊をかついでいる割に抵抗なく動けるので、調子に乗ってどんどんスピードを上げていくと――

「な、なんだ!? この速さは!? と、止まれない!」

 勢いがつきすぎてすぐに止まれそうにないので、あきらめてそのまま走り抜ける。
 あちこちに見た事のない生き物がいるが、それらもすべて置き去りだ。
 ジェットコースター感覚なのか、セツは「キャウン!」と鳴いて、ご機嫌の様子だ。
 それから熊を背負ったまま三十分くらい走り続けただろうか。

「全く疲れないのだが……」

 そんなことを考えていると、いつの間にか目の前に大木が迫っていた。

「ぶ、ぶつかる!」

 俺は咄嗟とっさに体をひねり、肩から木に体当たりする。
 直後、大きな音がして、太さ二メートルはある大木が倒れた。
 だが、全く痛くない。さっきのスピードといい、俺の身体はどうしたんだ?
 とりあえず、無事に停止できたから良しとしよう。
 辺りを見回すと、ブドウやオレンジといった果実が散乱していた。大木が倒れた際に周りの木が巻き込まれて、落ちてきたのか。
 とりあえず果実を拾って、リュックの隙間に詰めておく。

「セツ、大丈夫か?」

 そう問いかけると、セツは元気にえて応えた。

「そうか……そういえば、お腹空いてないか?」
「ククーン……」
「やっぱり空いてそうだな。狼みたいだから、この熊の肉を食べさせてみるか」

 リュックを下ろすと、セツが出てくる。

「まずは血抜きをして解体する必要があるが……時間がかかるな。少し待ってろよ」

 お預けを食らったセツは「クゥン?」と首を傾げる。
 木か何かに吊してやった方が楽なんだが、あいにくこの巨体を支えられそうなロープを持っていないから、地面で作業する。
 まずはサバイバルナイフで、クマの皮をごうとするが……なんて硬いんだ、全然刃が立たない。
 無理やり力を込めると、呆気あっけなく刃が折れてしまった。
 ナイフなしじゃ解体は無理だ。
 万事休すと思われたが、そこで俺の頭にが浮かぶ。
 先程から身体がおかしい。
 パワーもスピードも、今までの自分の身体じゃないみたいに増している。もしかしたら、素手で行けるんじゃないか?
 さすがに皮剥ぎや内臓の処理みたいな細かい作業は難しいが、力任せに腕を一本切り落とすくらいならできそうだ。
 手をピンと伸ばして、一本の刀をイメージする。

「スゥ――セァ!」


 俺の放った手刀は、クマの腕を骨ごと切断した。
 うぉ!? で、できた!
 理由はわからないけれど、俺の身体は変化しているらしい。
 強引に皮を裂いて剥がし、腕を食べやすい大きさにぶつ切りにして、セツの前に置いてやる。
 それを見たセツは、飛び跳ねて喜んだ。思い切りわしゃわしゃしてやると、とろけたような顔になる。

「そうか、嬉しいか。ふふ、可愛いやつだ。さあ、お食べ」

 しかし、セツはそれを咥えると……俺の前に置いた。

「クゥン?」
「もしかして、一緒に食べたいってことか?」
「キャン!」

 なんて優しい子! まだ、こんなに小さいのに……偉いなぁ。
 では、急いで準備しよう。
 俺は適当な木や枯葉かれはを拾うと、地面に燃えるものがない場所に移動する。
 地面に刺した二本の太い枝を支柱にして、つると枝を使って肉をぶら下げる。
 あとはマッチで火をつけて……
 パチパチとぜる心地よい音がする。焼けた肉からあぶらしたたって良い匂いだ。
 最近は一人キャンプが流行はやっているらしいが、俺には何が良いのかわからない。
 俺はそもそもぼっちだしなぁ。
 どうも顔が怖いらしく、友達は少ないし、彼女もいたことがない。道を歩けばみんなが避けて、子供には泣かれ、警察官には職質される。
 暗い考えにひたっていると……セツが顔を舐めてきた。

「もしかして……僕がいるよってことか? ありがとうな、セツ」
「キャン!」

 しばらくして、肉に火が通ったので……セツと一緒にかぶりつく。

「では、いただきます……からっ! でも美味うまい!」

 なんだ!? 香辛料も使っていないのに、ホットな辛さが口の中で爆発したぞ!?
 しかも、臭くないし……歯ごたえのある肉をんでいると、旨味うまみが出てくる!
 セツも気に入ったみたいだ。

「キャウン!」
「そうか、美味いか!」

 肉の味もさることながら、誰かと食べる飯って、こんなに美味いんだな。
 それに、一人じゃないのがこんなに嬉しいなんて……そんな当たり前のことを忘れていたよ。


 食事を終えた俺は、セツを再びリュックに入れて移動を再開する。
 しばらく走ると……ついに森を抜けた。
 俺はそのまま走りながら、あちこちを見回す。
 辺りは暗くなってきたが、遠くの方も良く見える。明らかに視力が良くなったみたいだ。
 とにかく、日が落ちる前に人里に着きたい。
 三十分ほどで、明かりが見えてきた。

「町だ! 助かった! よかった!」

 徐々にスピードを落としながら近づいていくと、門みたいなところにたどり着いた。
 中世っぽいよろいを身につけた兵士がそこを守っている。
 わずかに見える街並も日本の田舎とは明らかに違っていて、西洋風の造形だ。
 なんとなく予想していたが、やっぱり異世界に来てしまったらしい。

「すみません! お尋ねしてもいいですか!?」

 俺が声をかけた途端とたんに、門兵達があわただしく動き出す。さいわい、言葉は通じたようだが、露骨ろこつに警戒されている。

「怪しい奴め! ん、その熊は……レッドベアー!?」
「お腹には見たことのない狼まで!? おそらく、強いぞ! 出合え、出合え!」
「この町には一歩も入れん!」

 俺はあっという間に兵士らしき人達に囲まれてしまった。
 参ったなぁ……大人しく捕まった方がいいか?
 そこへ、りんとした声を響かせて、軽装の鎧をまとった騎士風の女性が歩いてきた。

「やめないか! その者は無抵抗だ! 敵意も感じない!」

 ロングの銀髪に、あおい瞳。身長は百七十ほどと背が高く、手足が長くて、スタイルも抜群に良い。
 年齢は、おそらく二十五歳前後と思われる。
 綺麗きれいだ。こんな女性がこの世にいるとは……
 俺は思わず美女に見惚みとれていたが、そこで祖父じいさんの言葉を思い出してハッとした。

『いいか? 綺麗な女性に見惚れるなとは言わん。だが、そういう視線は失礼になることもある。もし見惚れるほどの女性に出会ったなら、第一印象が大事だ。礼儀正しく、相手の目を見て正直に話すといい』

 確か、こんなことを言っていたはず……

「失礼いたしました。私はヒュウガ――真田日向と申します。信じてもらえないかもしれませんが、知らないうちにこの辺りに来てしまって、右も左もわからないのです。どうか話を聞いてもらえないでしょうか?」
「丁寧な言葉遣い……姿勢……そしてその目……とりあえず、盗賊のたぐいではなさそうですね。わかりました、話を聞きましょう」

 よし! 第一段階クリア!

「クゥン?」
「セツ、良い子だ。少し、じっとしていてくれ」

 顔を出して様子を窺うセツをなだめていると、女性が口元をほころばせた。

「ふふ……賢いし、可愛い子だな」

 いや、貴方あなたの微笑みこそ……女神のようですけど?


 ◆


 俺は町の入り口にある小屋に通され、審査(?)を受けることになった。
 いきなり牢屋に入れられずに済んで一安心ではあるが、何故か周りにいる人達は、俺を恐ろしいものを見るような目で見てくる。
 そんな中、銀髪の美人が切り出した。

「では、今から質問するので、答えてください。私の名前はユリア。普段はここに近いナイゼルという都市で騎士をしています。この町には巡回じゅんかいに来ているところです」
「ご丁寧にどうも。俺の名前は真田日向。おそらくですが……こことは別の世界から来ました。多分なんですけど……異世界人です」

 そもそも異世界人で通じるのかはともかく、嘘はついてない。

「「「ナニィィ――!?」」」

 大きな音がして、兵士さん達が椅子から転げ落ちた。
 目の前のユリアさんも固まっている。

「何かマズイですか?」
「……失礼ですが、少々お待ちください」

 そう断って一度席を立ったユリアさんは、水晶のようなものを持ってきた。
 そしてそれを俺の目の前に置く。

「これに手を置いてください」

 そう言って、ユリアさんは俺の後ろ側に回って、水晶を覗き込んでくる。
 ただよってきた香水の良い匂いに動揺どうようしつつも、それを悟られぬように大人しく手を置く。
 すると、水晶の真上に映像が浮かび上がった。
 びっくりした……なんか、アルファベットっぽい文字が書いてあるな。
 ユリアさんに説明を求めようと振り返ると、固まっていた。
 ちなみに、セツは俺の膝の上でスヤスヤ寝ている。
 時折、プープーと鼻を鳴らしながら……
 何これ、可愛いんですけど?
 改めて水晶の文字を確認すると、内容は俺にも理解できた。


 ヒュウガ・サナダ 三十歳 人族
 体力:A+ 魔力:C+
 筋力:A 知力:C+ 速力:B+ 技力:B+
 称号:アメノカムの祝福 ラッキーマン 森のぬしを倒せし者


 内容からして、ステータスみたいなものか? 見慣れない感じだが。

「あの……そろそろ説明してもらっても?」

 すると、ユリアさんは咳払せきばらいをして……

「あ、あまりの衝撃で思考停止してしまいました……ステータスを確認しました。貴方はごくまれに現れる、アメノカム神にいざなわれた異世界人のようです」
随分ずいぶん驚いたようですが、異世界人とは、そんなに珍しいのですか?」
「ええ。現れるのは五十年に一度くらいですし、この広い大陸のどこに出現するかもわかりません。なので、普通に生きていたら会う機会などありませんね」

 ということは、俺はこの世界では一人ぼっちってわけか……

「なるほど。ところで……さっきから兵士の皆さんが怯えているようですが?」
「それはですね、貴方が森の主――レッドベアーを倒したからです。そんな人物が暴れたら、彼らでは太刀打たちうちできないので」
「なるほど。理解できました。降りかかるは払いますけど、そちらが何もしなければ暴れるつもりはありません」

 俺の言葉を聞いて、周りの空気が弛緩しかんする。どうやら、少しは警戒が解けたらしい。

「ええ。そのようですね……ですが、いくつか質問してもいいですか? まずは、どうやってレッドベアーを倒したのですか?」

 俺は、兵士に渡した銃を指差す。

「あれですね。銃といって、なまりの弾を発射する武器です。この世界にはないのですか?」
「ええ、見慣れませんね」
「へぇ、そうなんですか」

 この世界の文明の発達度合は銃が発明されていないくらいなのか?

「では次に……貴方はこの世界で何をするつもりですか? 世界を滅ぼしますか? 文明を変えますか? 英雄になりたいですか? 王様になりたいですか? それとも魔王になりたいですか?」

 この世界で何をするか……俺は腕を組んで考えてみる。
 ユリアさんの言い方からして、帰るという選択肢はなさそうだ。
 やりたいことといえば……あれしかないな。
 俺はできるだけ思いが伝わるように、真剣な表情で告げる。

「えっと、俺は料理人になって、美味おいしいものを作って、自分でも食べたいです」
「「「ウオオオオオオ!!」」」

 どういうわけか、俺の答えを聞いた兵士達が歓声を上げた。


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