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赤い情熱のCarnelian Hall 後編
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そしてこの後も
真剣な眼差しで玲を見つめる美しい彰は……
サラサラとした長い黒髪を長い指で掻き上げながら
*****
「でもね玲ちゃん、
引っ込み思案で大人しいきみを大学に行かせたら、
あっと言う間に岡田桜の様な怖い女が次々と現れて
そして必ず弱い玲ちゃんが傷付く事になってしまうから……
だから俺は璃音の親友として、きみと璃音を守る為に、
悪いけど君の進学には反対の立場を取っていたんだ。
でも璃音は最後の最後まで、たとえ強面の護衛を付けてでも
きみが願書を出そうとしていた国立の大学に、玲ちゃんを進学させようとしていたんだよ?」
と自分自身の正直な気持ちと璃音の苦労を語ってくれたので
普通はこんな雰囲気になれば、璃音と彰に向かって一言
「この度はお手数をおかけしてごめんなさい。
そして就職の件も色々とありがとうございました」
ぐらいの事は言えて当然なんだけど、長いオタクの人生を歩んできた玲は
こんな感じのまともな会話が一切出来ない、残念すぎるコミュ障なので……
どの角度から見ても とにかく美しい彰の話を黙って聞いているうちに なんとなく
(護衛~…ですか……つまり私が大学に進学していたら、
どこぞのヤクザ小説でお馴染みの幸薄系ヒロインみたいに、
毎日コワモテのSP軍団に囲まれて登下校していたって事ですよね?)
なんと、このタイミングで
最強ヤクザの意味不明なネット小説を思い出しながら
(だから去年の秋に私が大学に行きたいって言ったら、
ママもパパも先生も学食のお姉さんも、みんなで一斉にスクラムを組んで
私の進学を断固反対したんですね?私を最強ヤクザのヒロインにさせない為に……)
な~んて感じのアホな事を想像していたが、
こう見えても玲は一応、有名人の娘なので
それを口に出す程のアホではないし、
そもそも今は無難な返事をした方が無難であると判断したから
「えっと、あの~…大学って待ち時間が多いから
私みたいなボッチのコミュ障にとっては高校よりも大学の方が
よっぽどツラい場所になるって、えっとその、知恵袋に~じゃなくて、
学校の廊下の掲示板とかに~…か、か、書いてたから……」
だから全然大丈夫ですと、
自分でもサッパリ訳がわからない返事をしたのに
この後なぜか、どう言う訳か、いきなり元気に活発に!
「だから私は円行寺さんの……
じゃなくて円行寺社長の会社に就職する事が出来て、凄く幸せです!」
と最後だけは自分の意見をはっきりと言えたのは
もしかしたら真っ赤に煌めくカーネリアンホールに赤い女神が下りてきて
キラキラと輝くクリムゾンライトの奇跡を起こしてくれた『せい』なのかもしれないが……
きっとそれは、また別の『お話』なので
赤い女神の事なんて何も知らないヘタレの玲はこの後すぐに
璃音と二人で大きなソファーを立ち上がり、
そしてカーネリアンホールのオーナーである彰と握手をした後で
*****
なんだかメッチャ優しい眼差しの璃音に見つめられながら、
「そうか、無事に就職が決まって良かったな
お前が毎日笑って過ごしてくれるなら、それだけで俺も幸せだ……」
て感じの嬉しい言葉をかけてもらい、そしてこのままの勢いで
「じゃあ彰、それと桐生、4月になったら俺の玲は
事務員として、お前達の部下になる事が決定したから、
二人とも俺の妻をどうか宜しく頼む。じゃあ そろそろ食事に行こうか玲」
と早くも玲の事を妻と呼んだ璃音と一緒に、サッサと部屋を出て行こうとしたのに
この後なぜか彰はいきなり、スタスタと歩いて璃音の元に向かいながら
「おいおい璃音、この後のライブを見てから帰る約束だろ?」と何やら文句を言ったので
「んん?あぁ確かそんな事も話していたよなぁお前。
悪い悪い、最近忙しいから、すっかりその話を忘れていたよ……
それで彰がイチオシしている人気バンドのライブとやらは、一体いつ始まるんだ?」
って感じでふと気が付けば
いつの間にか璃音と彰は楽しそうにタメ語で話を始めたから
もちろん玲は黙って下を向きながら、毎日メッチャ仲が良い彼等の話を聞いていたけれど
このあと彰は何故だか急に、真面目な社長モードの雰囲気で
「あと15分で開演だから、
このまま黙ってホールに行ってくれよ璃音、
それと玲ちゃんは、4月になったらこの店のスタッフになるんだから
今夜は是非、シャノワールのステージを見てやってくれないかな?
実は彼らは今ね?巷で人気がナンバーワンの、超売れっ子ロックバンドなんだよ?」
と真剣な眼差しで玲を見つめながら
今すぐシャノワールのステージを見て欲しいと言ったので……
(本当はロックバンドのライブとか、全くぜんぜん興味がないけど、
でも私はカーネリアンホールの事務員的なスタッフなんだから
人気バンドの演奏会なら、今すぐ見学した方がいいに決まってるよね!)
と早くもヤル気マンマンで、まだ1日も働いていないのに、
もうすっかりスタッフの一員になったつもりで明るく爽やかに
「はい、さっそく勉強させて頂きます!」と笑顔で返事をした迄は良かったが
まさかこの後、金髪の弟、一条蓮と
桜ヶ丘高校で一番の人気を誇る3年A組の早瀬翔から、
トンデモナイ情熱的な愛のステージを見せられる事になるとは夢にも思っていなかった。
真剣な眼差しで玲を見つめる美しい彰は……
サラサラとした長い黒髪を長い指で掻き上げながら
*****
「でもね玲ちゃん、
引っ込み思案で大人しいきみを大学に行かせたら、
あっと言う間に岡田桜の様な怖い女が次々と現れて
そして必ず弱い玲ちゃんが傷付く事になってしまうから……
だから俺は璃音の親友として、きみと璃音を守る為に、
悪いけど君の進学には反対の立場を取っていたんだ。
でも璃音は最後の最後まで、たとえ強面の護衛を付けてでも
きみが願書を出そうとしていた国立の大学に、玲ちゃんを進学させようとしていたんだよ?」
と自分自身の正直な気持ちと璃音の苦労を語ってくれたので
普通はこんな雰囲気になれば、璃音と彰に向かって一言
「この度はお手数をおかけしてごめんなさい。
そして就職の件も色々とありがとうございました」
ぐらいの事は言えて当然なんだけど、長いオタクの人生を歩んできた玲は
こんな感じのまともな会話が一切出来ない、残念すぎるコミュ障なので……
どの角度から見ても とにかく美しい彰の話を黙って聞いているうちに なんとなく
(護衛~…ですか……つまり私が大学に進学していたら、
どこぞのヤクザ小説でお馴染みの幸薄系ヒロインみたいに、
毎日コワモテのSP軍団に囲まれて登下校していたって事ですよね?)
なんと、このタイミングで
最強ヤクザの意味不明なネット小説を思い出しながら
(だから去年の秋に私が大学に行きたいって言ったら、
ママもパパも先生も学食のお姉さんも、みんなで一斉にスクラムを組んで
私の進学を断固反対したんですね?私を最強ヤクザのヒロインにさせない為に……)
な~んて感じのアホな事を想像していたが、
こう見えても玲は一応、有名人の娘なので
それを口に出す程のアホではないし、
そもそも今は無難な返事をした方が無難であると判断したから
「えっと、あの~…大学って待ち時間が多いから
私みたいなボッチのコミュ障にとっては高校よりも大学の方が
よっぽどツラい場所になるって、えっとその、知恵袋に~じゃなくて、
学校の廊下の掲示板とかに~…か、か、書いてたから……」
だから全然大丈夫ですと、
自分でもサッパリ訳がわからない返事をしたのに
この後なぜか、どう言う訳か、いきなり元気に活発に!
「だから私は円行寺さんの……
じゃなくて円行寺社長の会社に就職する事が出来て、凄く幸せです!」
と最後だけは自分の意見をはっきりと言えたのは
もしかしたら真っ赤に煌めくカーネリアンホールに赤い女神が下りてきて
キラキラと輝くクリムゾンライトの奇跡を起こしてくれた『せい』なのかもしれないが……
きっとそれは、また別の『お話』なので
赤い女神の事なんて何も知らないヘタレの玲はこの後すぐに
璃音と二人で大きなソファーを立ち上がり、
そしてカーネリアンホールのオーナーである彰と握手をした後で
*****
なんだかメッチャ優しい眼差しの璃音に見つめられながら、
「そうか、無事に就職が決まって良かったな
お前が毎日笑って過ごしてくれるなら、それだけで俺も幸せだ……」
て感じの嬉しい言葉をかけてもらい、そしてこのままの勢いで
「じゃあ彰、それと桐生、4月になったら俺の玲は
事務員として、お前達の部下になる事が決定したから、
二人とも俺の妻をどうか宜しく頼む。じゃあ そろそろ食事に行こうか玲」
と早くも玲の事を妻と呼んだ璃音と一緒に、サッサと部屋を出て行こうとしたのに
この後なぜか彰はいきなり、スタスタと歩いて璃音の元に向かいながら
「おいおい璃音、この後のライブを見てから帰る約束だろ?」と何やら文句を言ったので
「んん?あぁ確かそんな事も話していたよなぁお前。
悪い悪い、最近忙しいから、すっかりその話を忘れていたよ……
それで彰がイチオシしている人気バンドのライブとやらは、一体いつ始まるんだ?」
って感じでふと気が付けば
いつの間にか璃音と彰は楽しそうにタメ語で話を始めたから
もちろん玲は黙って下を向きながら、毎日メッチャ仲が良い彼等の話を聞いていたけれど
このあと彰は何故だか急に、真面目な社長モードの雰囲気で
「あと15分で開演だから、
このまま黙ってホールに行ってくれよ璃音、
それと玲ちゃんは、4月になったらこの店のスタッフになるんだから
今夜は是非、シャノワールのステージを見てやってくれないかな?
実は彼らは今ね?巷で人気がナンバーワンの、超売れっ子ロックバンドなんだよ?」
と真剣な眼差しで玲を見つめながら
今すぐシャノワールのステージを見て欲しいと言ったので……
(本当はロックバンドのライブとか、全くぜんぜん興味がないけど、
でも私はカーネリアンホールの事務員的なスタッフなんだから
人気バンドの演奏会なら、今すぐ見学した方がいいに決まってるよね!)
と早くもヤル気マンマンで、まだ1日も働いていないのに、
もうすっかりスタッフの一員になったつもりで明るく爽やかに
「はい、さっそく勉強させて頂きます!」と笑顔で返事をした迄は良かったが
まさかこの後、金髪の弟、一条蓮と
桜ヶ丘高校で一番の人気を誇る3年A組の早瀬翔から、
トンデモナイ情熱的な愛のステージを見せられる事になるとは夢にも思っていなかった。
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