Ray of Light ~コミュ障ぼっち女子高生と恋愛スキルゼロの寡黙な天然イケメン社長~

Pink Diamond

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Ray of Light

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こうして真夏の太陽みたいに

力強い熱気で溢れた満席のカーネリアンホールは

最高に盛り上がる蓮のキャッチーな歌声と

高度な技術の素晴らしい演奏に包まれながら

この後さらにお客さんがノッてきて、

そして割れんばかりの大歓声が次から次へと沸き起こり、

オールスタンディングの熱いムードが最高潮へと達した まさにその瞬間、

万年ボッチの一条玲は、二千人の大観衆がバッチリと見ている目の前で……!

*****

まるでアドレナリンが身体中から漏れている様な

激しいギターを奏でる翔から突然いきなり、唐突に!

「じゃあこのままノンストップでーー!
まだまだ責めるぜMy Baby!お前の事だよ ぼっちのRey!」

と指をさされてボッチの玲と叫ばれたので、

なんだか微妙に納得できないヘタレの玲は、もちろん無難な心の中で

(えっと、ぼっちの玲って私の事だよね?なんで皆にバラすの~?)

と密かに文句を呟いていたけれど……

そんな事よりも何故か切ない表情で

一生懸命にエレキを弾いている翔の姿をついついジッと見ていたら……

次の瞬間、いきなり玲の耳元で


『そんなに心配しなくても大丈夫だ玲、
つまり いい男は皆、お前に惚れるって意味なのさ』

と璃音が喋ってくれたので、普通の女子ならばこの場合、

ステージの上から愛を伝えた翔の気持ちを一瞬で理解できる筈なのに……

長年のボッチ生活を極めたオタクの玲が、めっちゃ煩いエレキの爆音を聞きながら

けっこう低い璃音の言葉を全部しっかりと聞き取る事は、そりゃあ勿論ムリなので


「えっ?何何~?いい男だから惚れる?
えぇえええ~?!じゃあ璃音さんは早瀬くんに惚れちゃったんですか~?」

て感じで聞き流されて

アドレナリン全開だった翔の熱い告白も、

優しい璃音のアドバイスも全てが無駄になってしまったが……

冷静に考えてみれば きっとその方が、

皆にとっての『青春のイチページ』になって

そして綺麗な思い出として心に刻まれる訳だから、

これはこれでグッドエンディングだと言う事にしておこう。

*****

こうして二人のイケメン男子から

間接的な愛の告白をされた事に気付いていないボッチのReyは

この後も結構ノリノリな態度で、人生初のロックコンサートを楽しんでいたけれど

残念な事に いつも いつでも

楽しい時間はあっと言う間に過ぎ去ってしまうから

ふと気が付けば、これまた人生で初めての、

熱い熱いアンコールの時間を迎えてしまい、そして今まさに玲の目の前で……


「アンコール!アンコール!

「アンコール!アンコールー!」

まるで合唱団みたいに響き渡るオーディエンスの大声援が

もうかれこれ10分以上も続いていたから、

あまりにも純粋なファン達の行動に心を打たれた玲はこの後……


(ロックとかメタルとかのコンサートって、
きっと煩いだけの場所だと思っていたから、
今まで興味はなかったけど、でもシャノワールの音楽は
なんだか言葉に出来ない位に全てが素晴らしかったから、
だから私はたった今から、シャノワールのファンになりました!
だってカーネリアンホールのステージに立った貴方達は……
まるでダイヤモンドみたいにキラキラと輝いているんだもん!)

と感動しながら心の中で

彼らのファンになる事をニコニコと笑顔で宣言していたのに

このあと再びステージに登場した、黒いTシャツ姿のシャノワール達が……


「素敵なアンコールをありがとう!」

「みんな今夜は本当にありがとう!」

「みんなのおかげで今夜のライブは……
俺達にとって特別なステージになりました」

と全員揃って頭を下げたその後で、素早く皆がそれぞれの位置に付き、

そして早瀬翔が優しく奏でる、切ないエレキギターのフレーズに合わせて

リードボーカルの一条蓮が……


「なぜなら俺達の……
俺の光は玲……今も昔もお前一人だけだから……
だから俺のAngelに……この曲を捧げます…Ray of Light……」


今にも泣きそうな表情で玲を見つめながら

シャノワールで一番人気があるバラードの

Ray of Lightを紹介したので……

泣き顔の弟と目が合った玲は思わず心の中で

(えっ?どうしたの蓮……
どうして目に涙をためているの?なにか悲しい事があったの?)

と密かに蓮の事を心配していたが、そんな玲の目の前で、

しっかりとマイクを握りしめたボーカリストの蓮はこのままの勢いで

長い金色の髪をかきあげながら、力強くも優しい声で……


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


『きっとお前は知らないだろう……

無口なお前がそばに居るだけで

真っ暗だった俺の世界に唯一の光を放っていた事を……

そしてお前は きっと永遠に気付かないだろう……

お前だけが俺のAngelだった事を……

Ray of Light……もう迷わない様に今夜も俺を導いてよ……

Ray of Light……お前の切ない輝きだけが今夜も俺を狂わせるのさ』


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


きっと誰よりも優しいミックスボイスの綺麗な声を響かせて

満席のカーネリアンホールに向かってRay of Lightを歌ってくれたから……

そんな蓮を見つめる玲は、自然に涙を流しながらも小さく微笑んで

*ー*ー*ー*ー*

(蓮ってこんなに歌が上手うまかったんだ……

ねぇ蓮、この曲はじめて聞いたけど、とってもいい曲だね?

きっと英語の得意な蓮が作詞をして、早瀬君が作曲をしたんだよね?

それと もうひとつ言ってもいいかなぁ蓮、

こんなにも切なくて、最高に素晴らしい曲を作れる親友が出来て良かったね。

私もなんだか嬉しいよ蓮、だって蓮は昔から、本当は凄い寂しがり屋なんだもん。

でも今の蓮には、しっかり者の早瀬くんが隣に居てくれる事がわかったから、

これで私は安心して、桜ヶ丘の家を出ていく事が出来るよ蓮……

だから早瀬君、私の可愛い弟を、これからもどうか宜しくお願いしますね。

それとこれは秘密だけど……

私も璃音さんみたいに、いい音楽で溢れたシャノワールの皆さんに惚れました!)


……とは言えない位に心の底から感動していたので……

誰よりも眩しいダイヤモンドみたいな一筋の光を放ち続ける玲は今、


(璃音さん、そして円行寺さん、
私をカーネリアンホールのスタッフにしてくれて本当にありがとう。
夢と希望が沢山つまったこの場所で働ける私は、最高に幸せです!)

と心の中で璃音達に向かって感謝をしながらも

優しい蓮のハイトーンな歌声にずっと耳を傾けていた。
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