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歓迎と理由

秘密の露呈

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「それで、話ってなんだい?何か相談事そうだんごと?」
 ナガルさんが指定した料理を調理師さんがお皿に盛り付けて貰っている最中、会話が無かったことに気を使ってくれたのか質問が飛んできた。
 あのタイミングでの『話がある』は席を立つ為の口実だったけど、相談したいことは確かにある。
「ええっと……。僕と灯花とうかはカガリと一緒にヒュペレッドと言う国で召喚魔法を使える人を探す予定だったんですけど……」
 調書を取った時、記憶の森で保護されたところから順に話をしたからナガルさんにも話は伝わっていると思う。
「カガリが一緒に来れなくなったから代わりの道案内が欲しいって話だねぇ」
「……はい!」
 事情を全部説明しなくても分かってくれてたみたいで良かった。
「君たちの事も頼まれているし、恩人の頼みを無下むげにするほど余裕が無いわけでもない。当然、そのくらいのお願いは叶えるよ」
「ありがとうございます!」
 これで目標に一歩前進できた。
「ただねぇ……」



「灯花さん。恋仲ではない男性にあんな風に迫るなんてはしたない・・・・・のではありませんか?」
 サーラ氏の氷のように冷たい視線で身体がゾクリと震える。
「拙者とユウ氏はほぼほぼ恋仲と言っても差し支えないと言うか……」
 おかしい。
 1月の海に入った時のように、身体の芯から凍えそうな寒気がするでござる。
「お姉さま」
 アルネリア氏が真剣な声色こわいろでサーラ氏を呼び、それと同時に寒気が消えた。
「分かってるわ。お兄様そっくりの人が女の人に言い寄られていて少し面白くなかっただけ」
 ちょっと化粧を直してきます。と言い、彼女は席を立った。
「灯花さま、だいじょうぶですか?」
「大丈夫でござるよ~」
 ニコっと笑って誤魔化したものの、さっきの体験は明らかに異常だった。
「ちょっと飲み物を取ってくるでござるね」
「あ、わたしも……きゃっ!」
 拙者が席を立った直後にサーラ氏が椅子の足につまづいて転びそうになる。
「おっとっと……」
 怪我をさせないように正面から抱きしめる形で受け止めると、そこで動きが止まった。
「サーラ氏?」
 拙者の声を聞いてサーラ氏の顔がゆっくりと上がる。
 そのほほは上気していて瞳も少しうるんでいた。
(これはもしかして年端としはもいかぬお嬢様とフラグ立てちゃったでござるかぁ?)

「…………おかあさま?」

「え゛?」
 今度は拙者が固まる番でござった。


 金色の髪に複雑な想いがあるのは間違いないけれど、別に、あの人のことが嫌いというわけではない。
 お兄様そっくりなあの方。
 まるで魂まで同じかのように。
 そんな人と仲良くしている姿を見ると思い出してしまう。
 愛すべき馬鹿父親を。
 あの出来事で苦しんだお兄様を。
「お兄様……遠く離れた地で、あなたは今なにをしているのでしょう……」


「ただねぇ……魔族の残党警戒で各地に騎士団員を送っていて、君達の護衛と道案内に付けられるような人材が居ないんだ」
 ナガルさんは申し訳なさそうな顔をする。
「そう……ですか……」
 こっちは無理を言っている立場だし、しばらくの足踏みは仕方ないのかな。
 そもそもここに来るまでが順調過ぎたのかも知れない。
「いや、案が無いわけじゃないんだ」
 僕が暗い顔をしていたせいか、ナガルさんが少し慌ててフォローを入れる。
「君達さえ良ければだけど、護衛付きでヒュペレッドに行く馬車はあるにはある……」
「本当ですか?」
 うんうん、とうなづくナガルさん。
「今日の会食に第二王女様と来ている二人、アルネリア様とサーラ様が近いうちにお帰りになられる。その時に便乗する形でヒュペレッドに行けるね」
 そう言えば、たしかあの二人は自己紹介の時にヒュペレッドで暮らしていると言っていた。
「君達が二人と交流できるように同じテーブルにしてみたんだけど、席順を交互にするくらい仲がいいとは知らなかったよ。以前、どこかで会ったことがあるのかい?」
「いえ、エルさんのお屋敷で会ったのが初めてです」
 そうか……と、ナガルさんがあごに手を当てて考え込む。
「ま、なんにせよこの会食でもっと仲良くなってくれれば同じ馬車にも乗りやすくなるし、乗った後も気まずくなったりしないだろうから、ここは一つよろしく頼むよ」
 そう言ってナガルさんは僕の手を両手で握り頭を下げた。
「ナガルさん、頭を上げてください。灯花も女の子同士だし仲良くなれると思います。だからきっと大丈夫ですよ!」
 ここまで真摯しんしな姿を見せられると、本当にこの人が国のトップなのかと少し疑ってしまう。
 エルさんもそうだけど、立場が上なのに真面目で偉そうな態度を一切とらないのは、今まで僕が見てきた大人たちと違いすぎて恐い。
「そっかそっか。いやぁ、若者同士は打ち解けるのも早いだろうから任せるよ!」
 そう言って手を離したナガルさんは、盛り付けられた料理が載ったプレートを調理師さんから受け取った。
「それじゃ、冷めないうちに席に戻ろう!」
 軽快な足取りでナガルさんは僕達のテーブルへと向かう。
「……僕の分まで持って行っちゃった」
 僕もさっさと戻ろう。
「あっ」
 歩き出した僕は横から来た誰かとぶつかりそうになった。
 ギリギリのところで止まれたので転ばずに済んだものの、僕に当たらなかったことで相手は逆にバランスを崩してスローモーションで倒れていく。
「危ない!」
 咄嗟とっさに手を伸ばすと、倒れそうになっていた相手……サーラさんを腰に手を回す形で抱えてしまっていた。
「ユウ……様」
 その驚いた表情には初めて会った時からの顔とは違った、歳相応の子供らしさが見える。
「大丈夫?」
 ゆっくりとサーラさんの体勢を戻して手を離す。
「はい、ありがとうございます」
 よく見ると、さっきよりほんのりとくちびるの色が明るくなっているような気がする。
「ユウ様、少しお聞きしたいことがあります」
「え?」
「ここでは他の方に聞かれますのでこちらへ……」
 誘われるままに連れていかれたのは二階の大広間と一階を繋ぐ階段の踊り場。
 そこでサーラさんは上下の階を見渡し、近くに誰もいないことを確認する。
「どうしたんですか?」
 僕の疑問に対する反応なのか、サーラさんは手を『コソコソ話』の格好かっこうにして僕の耳に手を当てた。
「ユウ様……あなたは……」



「魔法が使えますよね?」
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