幼なじみギャル(偽)と異世界転移したら金髪ショタ(謎)に保護されました

定春

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歓迎と理由

新たな旅立ち

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 会食から二日後、僕と灯花とうか迎賓館げいひんかんのエントランスホールで迎えが来るのを待ちながら雑談をしていた。
「王様めっちゃデカかったな」
「最初、ゴリラの剥製はくせいに王冠とマントと鎧を着せてるのかと思ったでござる」
 昨日の謁見えっけんドラグ・コトラこの国の王様を見た感想である。
「あれで渋い声してるんだから、強者つわもの以外の何者にも見えなかったな」
 負傷者を治療した恩賞おんしょうに、僕は細身の剣と皮袋いっぱいに詰め込まれた金貨を貰った。
「それに対して王妃様はめちゃくちゃ美人でござった……」
 金色の髪に金色の瞳。
 聞けばカガリと同じ聖王国の出身だそうだ。
「そういえば、灯花は何を貰ったんだ?」
 僕と交代で御前ごぜんへ登ったから、灯花が受け取ったご褒美ほうびがなんなのか知らない。
「受け取ったのは豪華な箱でござったが、中身は……」
 ゴソゴソとかばんから取り出した箱を開けると、その中には金細工をあしらった宝石とイヤリングに、紋章が刻まれた金属の丸い……スポーツの大会で貰うメダル?が納められていた
「”勲章”だそうでござる」
「へぇ~」
 魔族を倒した功績が正式に認められたことで授与されたんだとか。
「それより、昨日の晩餐会ばんさんかいで言い寄って来ていた女の子たち……みんな断ったのでござるか?」
「当たり前だろ。いつ元の世界に帰るか分からないのにいい顔するなんて、そんな無責任なことできないよ」
 草食系男子でござるなぁ……と、灯花がやれやれのポーズをする。
「お二方、迎えの馬車が到着しました」
 初日に色々と説明をしてくれた執事っぽい人が知らせてくれた。
「またしばらく馬車生活でござるか……」
 ここに来るまでの馬車は座り心地は良かったものの、地面からの振動がそこそこ伝わってくるせいで寝付きが悪く、灯花が不満タラタラだったのを覚えている。
 しかし、宿舎を出た僕達が目にした馬車は、この世界どころか日本でも見たことが無いトンデモ馬車だった。
「馬車がリムジンでござる!?」
 まず驚いたのは車体が長い。
 御者台ぎょしゃだいの後ろから最後尾までで10メートル近くある。
 そしてタイヤが多い。
 こちらから見て8つということは全部で16……しかも何やら複雑そうな仕組みをしているというのが見ただけでわかる。 
「ユウ様、お迎えにあがりました!」
 扉が開くと中からサーラさんが出てきた。
「私が特別に作らせた最高の馬車です。どんな長旅も快適に過ごせることをお約束します!」
 グイッと手を引かれて中に連れ込まれそうになる。
「ちょちょちょっと待って!荷物とか色々あるから、まずそれを載せないと……!」
 少し興奮気味のサーラさんに落ち着いてもらって、最後尾の大きな扉から僕と灯花は荷物を積み込んだ。
「これで全部かな?」
「着替えも貴重品も全部積んだでござるよ~」
 扉を閉め、馬車に乗り込む。
「靴は横の引き戸を開けた場所にしまってください」
 まさかの土禁だった。
 中に入ると左手側はU字型にクッションタイプの椅子が配置されていて、アルネリアさんがエルさんの膝の上に座って手を振っていた。
 そして右手のカーテンを開くと布団と枕が用意されたベッドルームが広がっている。
「馬車っていうよりキャンピングカーみたいだ……」
 実際に乗ったことは無いが、まさに”動くホテル”といった感じの内装だった。
「驚くのも無理はありません!なにせこのような馬車は他のどの国にも存在しない、正真正銘!唯一無二の逸品ですから!」
 よっぽどこの馬車を見てもらうのが楽しみだったのだろう。
 出会ってから今まで見たことのないレベルでテンションが高い。
「本当に驚くのはこれからです!」
 そう言って、サーラさんはどこからか取り出した手押しラッパを鳴らす。
「パフパフラッパって、この世界にもあるのでござるな」
 馬車が進んだのか、少し後ろに引っ張られる感覚があった。
「…………」
 驚くポイントを少し考えていると。
「そう!お気付きのとおり、走行中の振動や騒音が極限まで減らされているのです!」
 言われて気付いた。
 たしかに地面と車輪が当たる音や振動をほとんど感じない。
「これには特製の車輪と、その車輪を支える軸に工夫が……」
 サーラさんの解説に熱が入り始めた。
 そしてなぜか灯花が熱心に聞いている。
「エルさん……大丈夫ですか?」
 解説が始まったあたりからエルさんの顔が青くなっていた。
「アレ……かなり長くなるのでトーカさんもほどほどで止めないと倒れちゃいますわ……」
 そう言われて灯花の方をチラッと見る。
 その目はヒーローショーを見る少年のようなキラキラした目をしていた。
「多分、あいつは大丈夫です。技術とか知識とか……そういう話を聞くのが好きな奴なんで」
 対するサーラさんもリスナーが居るせいか更に語りに力が入る。
「もうヒュペレッドに向けて進んでるんですか?」
「いえ、ちょっと寄り道をした後に正門からドラグ・ニスト首都を出て……」
 エルさんは壁に貼ってある地図を指差す。


 


「南東へと進みロンダバオに入ったあと、そこで整備と御者ぎょしゃの交代をしてまた南へ。この馬車は快適ですが速度はあまり出ないのと大きな街道しか走れません。なのでロンダバオから更に数日かけてヒュペレッドに到着する予想ですわ」
 どうやら二週間前後かかりそうな長旅らしい。
「その……真っ直ぐ南にくだってストルブリンを突っ切らないのはどうしてですか?」
「あの国は入国審査が必要で入ってくる者に対してとても厳しい国なんですの。審査に必要な日数を考慮こうりょすると、どうしてもこちらの経路になってしまいますわ」
 なるほど……。
「ユウお兄さま」
 エルさんの膝の上に座っていたアルネリアさんが僕の横にちょこんと座る。
「きのうトウカお姉さまとの芸はとてもすてきでした。ごほうびになでなでしてあげます」
 床に座る僕の頭を撫でようと、アルネリアさんが手を伸ばす。
「なでなで~」
 正直、めちゃくちゃ恥ずかしい。
 肩に柔らかいものが当たっているのもあって、褒められていることを素直に喜べない。
「そろそろですか……」
 エルさんが窓を開ける。
 それと同時になでなでが終わったので僕も窓の外を覗くと、道の向こうにある建物のバルコニーから人が手を振っているのが見えた。
 ナガルさんと王様と王妃様、その横に第二王女様もいる。
『またの訪問を!』
 バルコニーから下がっている垂れ幕にはそう書いてあった。
「みんな忙しいだろうに……」
 ただの高校生だった自分が異世界でこんな経験をしてきたなんて言ったら、母さんや華日はなびは信じるかな?
 ”名残惜しむ”って言葉を実感しながら、馬車は僕を乗せてみやこを後にした。



【第三章 完】
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