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暴露と覚醒
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四ヶ月ぶりに我が家へと帰ったが、誰も掃除をしないせいで薄汚れている程度。特に変わったところは無い。
今の地位に登り詰めてからというもの、貧民出身の自分はいろんな場所へ行かされる。それも長期間の任務ばかりだ。
教団上層部の大半を占める王族や貴族出身の奴らは余程のことが無い限り国から出ない。戦争の時もそうだった。
強い力を持とうとも……いや、強い力を持ったからこそ国外の面倒事を押し付けられるようになったのだ。
だが、任務を早めに終わらせればそれだけ自由な時間が多く取れる。それは好都合だった。
誰にも知られてはいけない極秘の目的は達成まで全行程の半分を終えている。
残りは器の覚醒と合流。
それさえ成せば今の地位にも……この世界にすらも興味は無い。
所々、埃をかぶった家の中を一通り見渡し、部屋の中心にある食卓につく。
「アニモ」
その場から円状に光が広がり積もっていた埃が消えていく。
汚れが取れたことで鮮明に見えるようになった壁掛けの絵には、金色の髪をした若い女性と壮年の男性……そして一人の子供が描かれていた。
「リース師匠待っててね……。もうすぐだから」
「魔王紋を持つ混血と魔王紋を持たない純血のどちらが魔王に相応しいかで意見が分かれたのでござるな」
サーラ氏が頷く。
「勿論、私もアルも魔王になる気なんて一切ありませんでした。しかし子供の言葉など聞き入れられるはずが無く……」
その後、蜂起した純血派がクーデターを起こすもあえなく返り討ちに合い、母親は魔界の僻地へと流罪に。サーラ氏とアルネリア氏は表向きは魔界追放という形でヒュペレッドに送られたそうな。
「私達は魔界の平和の為に殺されてもおかしくない立場。しかしお兄様は私達どころかお母様すら殺せなかった……。勝手な大人に振り回されて壊れそうだった私達は、その優しさに救われたのです」
(命の恩人でもある兄を尊敬し崇拝する二人が、兄とそっくりなユウ氏に好意的だったのは当然といえば当然のことなのでござるな)
かれこれ二時間くらい話し続けた反動か、沈黙が場を包む。
「……私達もお兄様と同じお義母様の子供に産まれたかった」
ポツリと言葉を零したサーラ氏の表情は、いつもの冷静な仮面を外した歳相応の女の子に見えた。
「どんな人だったのでござるか?」
「血の繋がりの無い私達もお兄様と同じように愛してくれた……世界を照らす光のような人でした」
ガチャリ
「お姉さま……お話は終わった?」
アルネリア氏が扉からひょこっと顔だけ出す。
「ええ。お腹が空いたのでしょう?」
「うん!」
元気のいい返事と同時に扉が開くと、そこにはアルネリア氏に連れられたユウ氏の姿もあった。
「ユウ、大丈夫?」
「うん。アルネリアちゃんと話してたら大分楽になったよ」
たしかに、さっきよりずっと顔色が良くなっている。
「ユウ様もお加減が良くなったみたいですね。いい時間ですし、食事に行きましょうか」
そう言ってサーラ氏が席を立つ。
冷静な表情に戻りはしていたものの、いつもより柔らかい表情に見えるのは気のせいでござろうか?
「どうしました?」
「いや、なんでもないでござるよ」
是非ともハーレム要員に欲しい二人でござるな……とは言わない方が良さそうでござるから。
今の地位に登り詰めてからというもの、貧民出身の自分はいろんな場所へ行かされる。それも長期間の任務ばかりだ。
教団上層部の大半を占める王族や貴族出身の奴らは余程のことが無い限り国から出ない。戦争の時もそうだった。
強い力を持とうとも……いや、強い力を持ったからこそ国外の面倒事を押し付けられるようになったのだ。
だが、任務を早めに終わらせればそれだけ自由な時間が多く取れる。それは好都合だった。
誰にも知られてはいけない極秘の目的は達成まで全行程の半分を終えている。
残りは器の覚醒と合流。
それさえ成せば今の地位にも……この世界にすらも興味は無い。
所々、埃をかぶった家の中を一通り見渡し、部屋の中心にある食卓につく。
「アニモ」
その場から円状に光が広がり積もっていた埃が消えていく。
汚れが取れたことで鮮明に見えるようになった壁掛けの絵には、金色の髪をした若い女性と壮年の男性……そして一人の子供が描かれていた。
「リース師匠待っててね……。もうすぐだから」
「魔王紋を持つ混血と魔王紋を持たない純血のどちらが魔王に相応しいかで意見が分かれたのでござるな」
サーラ氏が頷く。
「勿論、私もアルも魔王になる気なんて一切ありませんでした。しかし子供の言葉など聞き入れられるはずが無く……」
その後、蜂起した純血派がクーデターを起こすもあえなく返り討ちに合い、母親は魔界の僻地へと流罪に。サーラ氏とアルネリア氏は表向きは魔界追放という形でヒュペレッドに送られたそうな。
「私達は魔界の平和の為に殺されてもおかしくない立場。しかしお兄様は私達どころかお母様すら殺せなかった……。勝手な大人に振り回されて壊れそうだった私達は、その優しさに救われたのです」
(命の恩人でもある兄を尊敬し崇拝する二人が、兄とそっくりなユウ氏に好意的だったのは当然といえば当然のことなのでござるな)
かれこれ二時間くらい話し続けた反動か、沈黙が場を包む。
「……私達もお兄様と同じお義母様の子供に産まれたかった」
ポツリと言葉を零したサーラ氏の表情は、いつもの冷静な仮面を外した歳相応の女の子に見えた。
「どんな人だったのでござるか?」
「血の繋がりの無い私達もお兄様と同じように愛してくれた……世界を照らす光のような人でした」
ガチャリ
「お姉さま……お話は終わった?」
アルネリア氏が扉からひょこっと顔だけ出す。
「ええ。お腹が空いたのでしょう?」
「うん!」
元気のいい返事と同時に扉が開くと、そこにはアルネリア氏に連れられたユウ氏の姿もあった。
「ユウ、大丈夫?」
「うん。アルネリアちゃんと話してたら大分楽になったよ」
たしかに、さっきよりずっと顔色が良くなっている。
「ユウ様もお加減が良くなったみたいですね。いい時間ですし、食事に行きましょうか」
そう言ってサーラ氏が席を立つ。
冷静な表情に戻りはしていたものの、いつもより柔らかい表情に見えるのは気のせいでござろうか?
「どうしました?」
「いや、なんでもないでござるよ」
是非ともハーレム要員に欲しい二人でござるな……とは言わない方が良さそうでござるから。
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